第十七話【ディアブロ】
お久し振りです、約三ヶ月振りの投稿なんですが読んでいただいていた方達は申し訳ありません。
実は去年ガラケーからスマホに買い換えたのですが、その時小説家になろうのパスワードを忘れてしまい、しかもメールアドレスも変えてしまっていた為パスワードの再発行申請も出来ずログイン出来ない状態になっていました。
最近パスワードをメモしていた紙を見付けたので、ログイン出来るようになったので急いで執筆しました。もしかしたら誤字脱字があるかもしれないので、見付けたら指摘して下さい。
亀よりも投稿スピードは遅いですが、よろしくお願いします。
灼熱のアルフレニヤ山の頂上ーーー時折溶岩が噴き出す火口のすぐ側で、5人と1匹が睨み合って居た。
方やタオル一丁の美丈夫を前衛に、真っ赤に燃える剣と鎧を装備した男、飾り気のない刀と黒い衣服を装備した男、禍々しい障気を放つ大剣とドス黒い色合いのローブを装備した男の3人が中衛、小さなナイフを片手に真っ白な白衣を装備した男が後衛に構えている。
方や全身に棘が生えた様な甲殻と筋肉の鎧を纏い、頭部から捻れた2対の角を生やしているミノタウロスの様な巨人が1人、拳を握り締めて構えている。
睨み会う5人と1匹に共通するのは圧倒的なまでの殺気。空気を震わせる程の殺気が撒き散らされる。そして両者の緊張が限界に達したその時、片方が動いた。
「………先手筋肉だぁ!!」
「それを言うなら先手必勝だろうがっ!?」
膠着状態に耐えられなくなったマッスルが、謎の造語を叫びながらディアブロに向かって走り出す。俺はそれに思わずツッコミを入れるが、マッスルは気にせず走り続ける。
それを合図に俺以外の全員が動き出す。走り続けるマッスルに対しディアブロが全身の甲殻の棘を避雷針として使い雷を集め、頭部の角に集めてチャージを始める。
あれは不味いな………初っぱなから必殺技とか反則じゃね?
「ガイア、いきなりレーザーだ!お前が盾になれ!」
「馬鹿者!あれを食らったら流石に再生出来ぬぞ!光や聖属性でなくとも、肉体の8割を失えば我でも死ぬのだ!」
「むん!我が筋肉の前にはレーザーなど敵ではないわぁ!!」
「いくらmuscleのstatusが凄くても、あれを受けたらinstantdeathなんじゃないかな?」
「細かい事は分からんが、発射前に止めれば良いのではないのか?」
「「「「それだ!!」」」」
ジョン、脳筋にしては的確な判断だ!ーーーつうかそれに気付いたならお前が止めろよ!
内心文句を言いながらも、レーザーを発射前に止めるべく全員がディアブロの方を向いたその時ーーー。
「ヴゥモォォオオオオ!!」
「「「「「遅かったぁぁあああ!?」」」」」
俺達がアホみたいに喋っている間にチャージし終わったディアブロは、レーザー状の《サンダーアロー》を角から放つ。
瞬時に今の体制から光速で迫るレーザーを避けるのは無理と判断し、《短距離転移》を使い射線から外れる様に転移する。
ガイアとT=Vも同様に《短距離転移》を使い回避して、ジョンは自らの肉体を構成する炎の形を崩して変形させ、レーザーをギリギリで回避する。しかしマッスルだけは正面からレーザーを受け止め、強引にレーザーの軌道を変えた。
今のは《DeadorAlive》を使用してレーザーの軌道をねじ曲げたのだろう。《DeadorAlive》は、どんな攻撃でも必ず防ぐ、もしくは反らせる事が出来る防御スキルの1つだ。しかしどんな攻撃も絶対に防げる代わりに50%の確率でHPが0になると言うデメリットはあるので、使われる事は滅多にないスキルでもある。
このスキルが凄いのは、例え使用したプレイヤーが50%の確率に当たりHPが0になっても、攻撃だけは絶対に防げる所だ。DeadorAliveーーー生死問わず絶対に攻撃を防ぐ事が出来る、それがこのスキルだ。
「マッスル!貴様死ぬ気か!?もう少し考えて行動しろ!」
あまりにも無茶苦茶なやり方だった為、ガイアがマッスルに怒鳴る。まぁガイアが怒るのも無理は無いだろう。あれは2分の1の確率で即死するデメリットがあるのだ。
仲間が動けない場合にやむなく使うとかならまだいい。使用者が死んだとしても仲間は助かるのだから、使うタイミングとしては適切だ。
しかし先程マッスルが使用した時は、動けない仲間が居た訳でも守るべきアイテムがあった訳でもない、明らかに使い所を間違えている。いくらマッスルが筋肉馬鹿の脳筋でもそれくらいは分かる筈なんだが………。
「まぁまぁガイア、マッスルも久々の戦闘でtensionが上がってるんだろう、今回はoverlookあげようよ!」
「そうだぞガイアぁ!!久方ぶりの戦闘だぁ!楽しまねば意味がなかろうがぁ!!それに死を恐れるなどと言う事をすれば我が筋肉が泣いてしまうわぁ!!がははははははっ!!」
流石は脳筋だな、死ぬ可能性がある戦闘を楽しもうとするとは………戦闘狂としてブラックリストに載っていただけはある。俺も人の事は言えんが、あれは重度の戦闘狂だろう。
まぁ戦闘狂なのは良いんだが、もう少し周りの環境に配慮した戦い方をしてほしい。先程マッスルが反らしたレーザーが火山を2つ程吹き飛ばした。
そのせいなのか吹き飛んだ火山から溶岩が噴き出して、ただでさえ暑かった気温がさらに上がった気がする。
「マッスル、戦う時は周りの環境を考えろ!ただでさえクソ暑かったのに、余計に暑くなったじゃねぇか!」
「ムゥン?この程度の暑さで音を上げるとは、クロウも随分と軟弱になりおったなぁ!!」
うるせぇこの脳筋野郎め!お前はタオル一丁だから良いけど、俺は長袖長ズボンで全身フル装備だぞ!HPが減らなくても精神的HPがガリガリ削られてるんだよ!
マッスルは1回ディアブロにぶん殴られろ、そうすればその暑苦しい性格と脳筋も少しは治るだろ。
そんな文句を言っている間にディアブロは動き、ガイアに向けてその巨体からは考えられない軽やかなフットワークで近付き強烈なパンチを放つ。
ディアブロの拳は甲殻がメリケンサックの様な役割をしていて、強力な腕力により打ち込まれた一撃は当たった箇所を抉り取る程の威力になる。
それがガイアの頭部を狙って打ち出された。しかしガイアはそれに気付いていながら避けようとはせず、マッスルに対してグチグチと小言を言い続ける。そして次の瞬間、ディアブロの拳は小言を言い続けているガイアの頭部に直撃しガイアの首から上を綺麗に吹き飛ばした。
当然頭部を失ったガイアの体は地面へ倒れーーーずに、その場で飛び上がりディアブロの顎を蹴り上げる。その蹴りによりディアブロが僅かに後退した所へ、更に回し蹴りを食らわせる。
それを食らったディアブロは堪らずガイアから距離を取る。おそらくガイアの持つ常時発動スキル《防具封じ》の効果によって、ディアブロの堅い甲殻を無視して内部にダメージを与えているんだろう。
しかしまぁ頭部を失った状態であれだけの攻撃をするとは………正直気味が悪いな。
「ガイア、そのグロい事になってるheadを早く再生したまえ、気分が悪くなる。」
俺もT=Vの意見に賛成だ、誰が好き好んで首から上が無い人間を見たいのだろうか?しかも断面から血がドバドバ出ているのだ。それでもなお平然と立っているのだからグロさは5割増しだ。
それがメリメリと音を立てて少しずつ再生していく。最初は頚椎が再生され、それに伴い頭蓋骨と首の血管や筋肉、皮膚が出来ていき頭蓋骨、脳、眼球、表情筋、歯、耳、鼻、神経、皮膚、睫毛、眉毛、髪ーーー全てが30秒と掛けずに再生され元の顔に戻った。
流石は吸血鬼の最上位種なだけはある、脳を失ってもなお体を動かせる上に、元通りに再生する事も出来るのだ。しかもそれを何の代償も無しに出来るのだから羨ましい。俺もあれぐらいの再生能力が欲しいな。
一応スキル《超速再生》を使えば腕1本くらいは生やせるのだが、流石に頭を吹っ飛ばされたら再生もクソも無い、即死だ。
腕1本再生出来るだけでも十分人外の領域なのだが、それでもやはりガイアなみの再生能力が欲しいのだ。死ぬ危険性がグッと減るからな。
そんな事を考えている内にガイアの頭部は完全に再生され、元のイケメンに戻った。
「あ゛ぁ~、首の関節が外れとるな?」
ガイアは首に違和感があったのか首を幾度か捻って調子を確かめる。その結果関節が外れているのに気付き、首に手を沿えて外れていた頚椎を強引に頭蓋骨に嵌める。
関節って外れたら痛いけどそれを嵌める時の方が数倍は痛いんだよな………それを知っているだけにあのやり方は見ているだけでこっちが痛くなる。
ガイアが首をメキメキとならして調子を確かめているその横で、T=Vとジョンの2人がディアブロ相手に格闘戦を繰り広げていた。
マッスルがプロボクサーも対応出来ない程の速度で繰り出されるディアブロの拳をかわし、完全に延びきった腕と胸ぐらの甲殻を掴み背負い投げの要領でディアブロを投げ地面に叩き付け、追撃でジョンが踵落としを食らわせる。
勿論ディアブロもそう簡単にはやられず、背負い投げで地面に叩き付けられた時には受け身を取りダメージを軽減し、踵落としは両腕を交差させて受け止めた。
しかし両腕が塞がっているなんて隙だらけな状態をガイアが見逃す筈がなく、手に持つどす黒い障気を放つ大剣ーーー魔剣ダーインスレイヴをディアブロの腹辺り目掛けて振り下ろす。
しかしダーインスレイヴの切れ味よりもディアブロの甲殻の硬さが勝っていたのか、刃が甲殻に阻まれて少し食い込む程度で止まってしまった。
ダーインスレイヴも神級と言う高い等級を誇っているのだが、切れ味はそこまで高くない。しかしまぁゲームではどうやっても貫けない防御力も、現実の今ならばやりようによっては貫ける。
俺はその場から一気に跳び《重力上昇》を自分に掛けて落下速度を上げる。その状態で甲殻の半ばで止まっているダーインスレイヴの峰に向けて《斬脚圧殺》を使う。
《斬脚圧殺》は空中から脚を伸ばした状態で強力な踵落としをする言う武術スキルだ。威力は非常に高いので使うプレイヤーは多いのだが、見た目が地味だし1度発動すると何かに当たるまで止まれないのでカウンターを食らい易い点が不評だった。
まぁ今回はディアブロに当てるのではなく、ガイアが持っているダーインスレイヴの峰に当てるだけなので問題はない。
素早く落ちていき狙い通りダーインスレイヴの峰に踵落としが決まる。ズカンッ!!とおおよそ人体から鳴る様な音ではない、鉄塊同士をぶつけた様な音がなり、甲殻に食い込んでいたダーインスレイヴが甲殻を砕きディアブロの肉体を斬り裂く。
「ヴゥモォォオオオオ!?」
斬り裂かれた痛みによりディアブロが暴れだしたので、全員がディアブロから距離を取り遠距離攻撃に切り替える。
まずガイアが火魔法の《ファイアストーム》を放ち、そこにT=Vが風魔法の《エアストーム》を加えさらにジョンが天魔法の《気体変換》で酸素を可燃性の高いガスに換えて威力を底上げする。そこにダメ押しで俺とマッスルが同時に炎魔法の《業火滅却》を放ち更に火力を上げる。
この時点で既に大規模戦術魔法ーーー戦争イベント等の大規模かつ大多数が参加するイベント向けに考えられた高火力魔法スキルーーーに匹敵する威力になっているのだが、これでも俺達は全プレイヤー内最強の15人の内の5人なのだ、これくらいはまだまだ序の口。
ディアブロが転げ回っている地面にT=Vが《錬金術》を使用して土を火薬に錬成して、ガイアがアイテムボックスからガス茸とボムキノコとニトロしめじと言う引火すると大爆発を起こす素材を取り出し、ディアブロの近くへ放り投げる。最後にディアブロが逃げない様に俺が《短気絶》で気絶させて動けなくさせ、ジョンが《砂紐》で縛る。
そこに火力が上げられた《ファイアストーム》が迫り《錬金術》により火薬に変えられた地面が爆発して、そこから更にガス茸とボムキノコ、ニトロしめじが周囲数百mを巻き込む大爆発を起こす。
爆発で舞い上がった土煙が《ファイアストーム》に巻き込まれて晴れていき、数秒後の効果が切れただの火に戻り巻き込んでいた土煙が周囲に広がりまた視界が遮られる。その為瞬間的に《熱探知》を使用して視界を切り替える。
《熱探知》は温度が高い場所を赤、もしくは白で写すのだが、考えてもみて欲しい可燃性の高いガスや火薬、さらには爆弾と炎の竜巻が先程まですぐそこにあったのだ。《熱探知》により視界が切り替わっている今、目の前は真っ白。
まるで閃光弾を食らった様な状態だ。急いで《熱探知》を解除するが、視界は真っ白なままで何も見えない。なんとか視界を確保する為に《ヒール》を使ってみるが、真っ白だったのが多少マシになった程度で大した効果はなかった。
どうやら回復魔法でも治すには限界がある様だ。そんな事を確認していると、すぐ側からガイアの叫び声が聞こえてきた。
「目がぁ~~目がぁ~~~!!」
「ム〇カ大佐!?」
T=Vがツッコミを入れているのも聞こえてきたが、おそらくガイアが叫び声を上げているのは俺と同じ様に《熱探知》を使って目をやられたのだろう。馬鹿にしてやろうと思ったが、自分も同じ状態になっているのを思い出して止めておいた。
しかし少し時間が経つと霞んでいるが何処に何があるかくらいは分かる程度に視界が回復してきた。もう1度を使って完全に回復させようとしたその時、舞い上がる土煙の中からディアブロが巨体を揺らしながら此方に向かって突っ込んできた。
俺は視界を確保する為に《ヒール》を使おうとしていたので、それに対応出来ずに正面から食らってしまった。しかしそれにより発動寸前だった《ヒール》がキャンセルされた為、別のスキル《衝撃吸収》を使用して衝撃を吸収してダメージを軽減する。
しかしぶつかったのはミノタウルスの姿をしているが種族的には巨人だ。言ってしまえばダンプカーと正面衝突した様なものだ。いくら俺の体が丈夫とは言え1t近い体重を持つディアブロの全力のタックルを食らえば骨にヒビくらいは入る。
《衝撃吸収》により多少のダメージは軽減されたが、やはり肋骨にヒビが入ってしまった。しかしまぁ超速再生の効果で2~3分程で元に戻るので気にはしない。しかしディアブロはさらなるダメージを負わせようと此方に迫ってくる為呑気に回復は出来ない。
もう一度ディアブロが突進して来たが、横からマッスル腕を出してラリアットを食らわせた為ディアブロの追撃は止まった。走っている所に正面からラリアットを食らえば当然地面に倒れる、それはディアブロとて例外ではない。
そこにジョンによって上空に投げられたT=Vが、手に持つキッチンナイフ改の能力《無限増殖》を使用して大量のキッチンナイフを増やし、両手に抱えた状態で《投擲術》を使いながらばら撒く。
《投擲術》は手で持ち上げられる物ならばどんな物でも超高速で投擲出来るというスキルで、ターゲットをロックオンさえしていれば例え手から落としただけでもそれは投擲されたと見なされ、超高速でターゲットに向かって飛んで行く。使い方によってはかなり便利なスキルだ。
T=Vの持つキッチンナイフ改は《無限増殖》によりいくらでも増やす事が出来る、その能力と《投擲術》が合わさればまさに鬼に金棒だ。ただしキッチンナイフ改は所詮はキッチンナイフなのだ、攻撃力や切れ味は全くと言っていいほど無い。
しかしそれを補う方法がある、それは武器に闘気を纏わせると言うものだ。闘気はMPと同じ様にスキルを使用した際に消費される物なのだが、実は武器や防具に纏わせる事により攻撃力や防御力、武器の切れ味を上げる等の効果があるのだ。
纏わせる量により上昇率が変わる為、例え攻撃力と切れ味が皆無のキッチンナイフ改であっても多量の闘気を纏わせれば究極級の武器と同程度の威力を発揮する様になるのだ。
T=Vがばら撒いた全てのキッチンナイフ改には闘気が纏わされている。上空からばら撒かれたキッチンナイフは攻撃力、切れ味共に強化された状態で、ディアブロに向かって飛んで行き甲殻をバターか何かの様に斬り裂きディアブロの肉体に刺さっていく。
しかしディアブロはその痛みを無視して雷を集め始めた。落雷の衝撃により投擲されていたナイフは吹き飛ばされ、既にディアブロに刺さっていたナイフも弾き飛ばされ抜けてしまった。落雷による物理的衝撃で飛んでくるナイフを弾き、その雷のエネルギー源に筋力の強化をして刺さっていたナイフを抜いたのだろう。
なんか反則的な能力だよなぁ、あの雷………。遠距離からチマチマ攻撃するタイプのT=Vからすれば雷による衝撃波でナイフを弾く事が出来るディアブロは苦手な相手だろう。
「ーーーって言うか、T=V今ので闘気全部使いきったんじゃないか?」
500近い数のナイフに闘気を込めたのだ。いくらナイフ1本が小さいとは言え、500本にディアブロの堅い甲殻を貫けるだけの切れ味と威力を持たせるには、T=Vの様な魔法主体のプレイヤーでは全て使わないと無理だろう。
これがマッスルやジョンの様な武道派のプレイヤーならばまた別だが、T=Vの様な体術をあまり使わないタイプのステータスではギリギリだろう。
闘気と言うのは体術による接近戦闘回数によって上昇する特殊なステータスだ。一般的にはMPと同様にスキルを使用する際に消費されるのだが、希に自身の肉体や武器、防具等に纏わせて使用するプレイヤーもいる。
闘気を纏わせるのはかなり感覚的な部分が多く、一般的には使われるどころか存在すら知られていない。しかし中には独自の感覚で闘気の操作方法に気付く者も何人か居るので、極限られたプレイヤー間でのみ知られる特殊技術だ。
T=Vは闘気の総量こそ少ないが、闘気を操る感覚が優れているのだ、これに関してはオリジナル称号持ちの中でも飛び抜けている。しかし先にも述べた通りT=Vは闘気の総量が少ない、さっきのナイフに纏わせた分だけでT=Vの闘気は既にすっからかんだろう。
この状態のT=Vは役に立たない。何故ならあいつは元々生産職ーーー錬金術師をしていたプレイヤーであって、レベル10,000を越えた後魔術師に転職した。T=Vが取得しているスキルの大半は生産系のスキルで、戦闘に関しては多少攻撃魔法が使える程度でハッキリ言って役立たずだ。
「T=Vは一旦下がるのだ!ジョンはT=Vのサポートを!クロウはマッスルと我と一緒にディアブロの相手だ!」
ガイアの指示に従いジョンが自らの炎の体を一部変形させてT=Vとディアブロとの間に壁の様に展開し盾を作り、何時攻撃されても良い様にして撤退のサポートをして、残りの3人でディアブロの相手をする。
まずはマッスルが走り一気にディアブロとの距離を詰めて殴り合う。しかし単純に筋力による殴り合いでは巨人のディアブロに軍配が上がる。そもそもディアブロは筋力値が高いのだ、そこに今は雷による強化が上乗せされているのだから、いくらマッスルの筋力値が高くても勝つ事は出来ない。
そこで俺とガイアの出番だ、俺がガイアを持ち上げ《投擲術》で殴り合いを繰り広げているディアブロちとマッスルの間を通り抜ける様に投げる。《投擲術》は持ち上げられる物なら何でも超高速で投げる事が出来るので、俺に投げられたガイアは物凄い速度で飛んでいきディアブロとマッスルの間を通り抜ける。
その瞬間ガイアがディアブロに向けて《ファイアボール》《ウォータースライス》《ウインドアロー》等の連射性の高い魔法の弾幕を張る。威力こそ弱いが連射により量の増えた魔法の弾幕は殴り合いに集中していたディアブロの不意を突き視界を奪う。
この《投擲術》によりプレイヤーを投げて、投げられたプレイヤーが魔法の弾幕を張る方法はギルド間抗争等で考えられた戦法で、通称“人間散弾”と呼ばれ大規模なプレイヤー間での戦闘では多用されていた。
空中を飛んで行く為足音等が立たず、さらには飛行系スキルの様に常時MPを消費しない為奇襲でも役に立ち、戦闘中でも敵の不意を突くのに使い安い低コスト戦法の1つだ。
そしてこれを使った理由は単純だ。魔法による弾幕で視界を塞ぎ、さらには弾幕を張ったガイアに注意を反らせる事が出来るからだ。現にディアブロはガイアの方に注意を反らし、マッスルから目を離してしまった。そしてそれが命取りになる。
ディアブロがガイアに反撃しようとするが、ガイアは《投擲術》で飛んで行っている途中の為、ディアブロが反撃する前にディアブロの攻撃が届かない所まで飛んでいってしまった。そしてそれを追い掛け様としたディアブロの腹に、マッスルが《パワーブロー》お見舞いする。
《パワーブロー》、武術スキルでも屈指の攻撃力を誇る素手専用の技で、数秒間の溜めを行った後強烈なボディブローを食らわせる事が出来ると言うスキルだ。これをマッスルはディアブロが自身から目を離した隙に溜めを行い食らわせたのだ。
しかしディアブロは全身を甲殻で覆われているのだ。いくら強力なパンチを放てるヘビー級プロボクサーでも、戦車相手には勝てない。
それなら無意味じゃないかと思うかもしれないが、勝てないまでもダメージは与えられるのだ、一概に無意味とは言えない。
それに《パワーブロー》をモロに食らったディアブロは、その衝撃で仰け反り今にも仰向けで倒れそうになっている。そしてその隙を逃す馬鹿などこの場に居ない。俺はいつの間にか地面に着地していたガイアに顎で指示を出してから、倒れそうになっているディアブロ背後に走り寄りその背中を蹴り上げて体勢を元に戻させる。
そこにマッスルが強烈なタックルを食らわしてガイアが待ち構える場所に吹き飛ばす。背後から蹴り上げられて勢いがついている状態でタックルをかまされただけでもかなりのダメージなのだが、そこにガイアが追い撃ちを掛ける。
ガイアはマッスル渾身のタックルで飛んで来たディアブロの脇を通り抜ける瞬間、ディアブロの首筋に噛み付いた。
通常ならばディアブロの首を覆う鋼鉄並み堅さの甲殻で歯が砕ける筈なのだが、腐ってもガイアは吸血鬼皇帝なのだ、顎の力はアダマンタイトやヒヒイロカネすら噛み砕ける程強靭で、歯はオリハルコン並みに堅いのだ。
ディアブロの首筋に噛み付き、表面の甲殻や筋肉に歯を食い込ませ勢いよく飛んで行くディアブロの力を利用して首を肉や骨ごと食い千切る。
最早あれでは吸血鬼でも何でもないと思うのは俺だけだろうか?歯で傷を付けて血を吸いとるなら分かるのだが、あれでは傷を付けてどころか致命傷だ。首の3分の2近くを抉り取っているのだから吸血どころではない、あれでは捕食だ。
吸血とは血を吸う事を指す、捕食とは生物が他の生物を捕らえ殺し食す事を指す。ガイアはディアブロを捕らえた訳ではないが、ほぼ生物としての生存が不可能なレベルの致命傷を与え尚且つその肉を食しているのだから、あれは捕食に分類されるだろう。
まぁ食したと言っても次の瞬間ガイアの口からは赤黒い光線の様な物が吐き出された。あれは《吐血》と言う吸血鬼専用のスキルで、敵から吸血した血に魔力を纏わせレーザー状にして放つ事でダメージを与える攻撃だ。纏わせる魔力の量と吸った血の量で威力が変わるが、攻撃力はかなり高い。
それをただでさえ少なくないダメージを負っていたディアブロに向かって放ったのだから、やはりガイアは鬼畜なのだろう。あれでは明らかにオーバーキルだ。
事実ディアブロの体は爆散して粉々に砕け散った。
あれでは例え復活系のスキルを使っていても復活は出来ないだろう。死体の7割が残っていなければ復活は出来ないとガイアも言っていたしな。
ディアブロの体は粉々に砕かれて欠片も残っていないので、例え復活系スキルを持っていても意味ないだろう。
それを見てディアブロとの戦闘は終了だと判断して、さっさと移動の準備をする。元々俺はヒノモトに向かっていた筈なのに、いつの間にかガイア達と一緒になって戦って居た。そのせいで本来ヒノモトに着いていた筈の予定が大分遅れてしまっている、このまま何時までもここに居たら今日中温泉に入れなくなってしまう。
「んじゃあ取り敢えず俺はヒノモトの温泉まで行ってくるけど、お前等はどうするんだ?」
勝利の祝盃に酒を飲もうとしている馬鹿共にこれからの事を聞いてみる。
「む?我等もヒノモトへ行くぞ?魔王復活イベントが終わったらヒノモトで1度集合する事になっているからのぉ。」
「むぅん!!我が筋肉も温泉に入りたいと言っておるわぁ!早速ヒノモトまで走ろうではないかぁ!!」
「待ちたまえマッスル!僕はrunは苦手なんだ!」
「“runは苦手”って翻訳すると“走るは苦手”にならないか?」
「気にするなジョン、T=Vは頻繁におかしな文法を使うから気にするだけ無駄だ。」
ガイア曰く、他のオリジナル称号持ち達とヒノモトで合流するらしい。まぁそれは別にいいのだが、マッスルが言う様にヒノモトまで走るのは勘弁願いたい。このクソ暑い中走るなんてありえないからな。そんな事を考えながら、5人で雑談しながらヒノモトへ向かった。




