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エデンの園  作者: 北東
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第十四話【冒険者】

前回に引き続きまたも遅くなってしまい申し訳ありません。引っ越しの準備でバタバタしているので、次回も遅くなるかもしれません。まぁ不定期更新なので何とも言えませんが………。


相変わらず駄文で更新も不定期ですが、これからもよろしくお願いします。

スルト一家が家族会議を行った日から1週間、とある宿屋に1人の男が眠っていた。眠っていると言っても軽く仮眠をとっている程度で、深い眠りについている訳ではない。


彼はこの世界に来る前から仮眠をよくとっていた。周囲に対して常に気を使っていた彼にとって、睡眠とゲームをしている時だけが唯一気が抜ける時間なのだ。しかし彼は現在仕事から解放されてニート生活をしているので、本来ならば仮眠は必要ない筈だ。


しかし彼にはストレスを発散する為に寝る必要があった。何故ならここ1週間、彼は7度も刺客に襲われて居るからだ。相手は言わずともがな聖教国の者達だ、何がしたいのかは分からないがここ1週間飽きる事なく何十人もの暗殺者がけしかけられている。


刺客達は昼夜関係なく、様々な方法で暗殺をしようとしてくるのだ。その度に刺客を探し出して拘束したり、襲い掛かってきた刺客を無力化して騎士団の駐屯地に放り込んだりしている。しかも1回や2回ではない、1日に十何人もの刺客が彼を暗殺しようとするのだ、ストレスが溜まるのも仕方がない。


そんな彼は怒りが爆発しない様に仮眠をとってストレスを発散している。彼としては怒りのままに聖教国を滅ぼすと言うのも悪くはないと思うのだが、聖教国は周辺国家の中でもそれなりに大国なのだ、滅ぼせば周辺国家の経済に少なからずダメージを与えてしまう。


聖教国と交易を行っていないアスタロス帝国は一切被害が出ないだろうが、聖教国と国交のある国々には大きな被害が出る。それに聖教国は世間的に見れば聖教の信者が住まう神聖なる国と言う事になっている。


そんな国を滅ぼしたとなれば彼は確実に悪人扱いされる。クロウ自身は悪人扱いされても問題ないが、子供達に被害が及ぶのはいただけないと考えている。子供達は多くの人々から尊敬される高い地位に就いている、だから人一倍世間体を気にする必要がある。そう言う事を考えると聖教国を滅ぼすのは得策ではない。


しかし我慢する為に仮眠をとっているにも関わらず、仮眠中にまで彼を狙う者が居る。その為に彼は非常に眠りが浅くなっているのだった。






気持ち良く仮眠を取っていると何時ものアレがやって来た。静かに窓を開けて近付いてくる2人の人物、特殊な歩き方で足音を消しているのですぐにその手の者だと分かる。聖教国からの刺客だ。


足音の間隔や音の違いから判断するに、片方は身長180cmくらい体重72kg程の男、もう片方は身長160cm体重42kg程の女だ。男の方は何やら装飾品がジャラジャラと音を立てていて丸分かりだが、女の方は意識しないと気付けないレベルにまで足音を消している。


こう言う場合は足音をより小さくしている方ーーーつまりより効率的な足運びが出来ている女の方を先に片付けるのが定石だ。ただ、今まで襲撃してきた奴等の中でそれなりに技術がある刺客は、大半が壁や囮役に使われていたのを目撃しているだけに殺りにくい。


聖教国は人族(ヒューマン)至上主義の国家だ、人族(ヒューマン)のみが人類でありその他の種族は亜人類であるという考えを持つ。この考え方が国民に深く根付いている聖教国では、人族(ヒューマン)以外の種族を奴隷にする事を国が認めている。


つまり聖教国からの刺客の中に混じっている強力な刺客は他種族の者ーーーつまり奴隷として強制的に働かされている者が多いのだ。それを殺るにしても捕まえて騎士団に引き渡すにしても、後味が悪いのだ。


取り敢えず先に男を片付けてから女をどうするか考えよう。ジャラジャラ音を立てながら近付いてくるアホの頭を、素早く起き上がりながら掴み床に叩き付ける。普通の宿屋だと軽く床に叩き付けるだけで床に穴が空いたりするのだが、この宿は中々いい木材を使っているのか強めに叩き付けなければ割れたりしないのでありがたい。


床に叩き付けた男は頭部から多量に出血しており、このまま放置すれば死ぬであろう事は素人の目から見ても分かる。軽く叩き付けると言っても時速100km近い速度で地面に叩き付けたのだ、ある程度の物理防御力がある奴でもないと即死する筈だ。


そう考えるとこの床に叩き付けられた男はそれなりのレベルなのだろう。限界まで加減してるとは言え、俺の攻撃を食らって気を失わなかったんだからな。


「まぁ、レベルが高くても無駄な装飾品のせいで隠密性が落ちてるから意味ないけど………。」


見たところlevel:85くらいだろうか?今のNPCからすれば恐るべきレベルなのだろうが、ハッキリ言って雑魚過ぎる。おそらくこいつの職業は隠者辺りだろう、暗殺者(アサシン)系職業の初歩の初歩である《隠蔽》も覚えられない様な暗殺者(アサシン)系の初心者が就く職業だ。


暗殺者(アサシン)系の職業に就いているプレイヤーにとっては、結構嫌われている職業だ。初心者プレイヤーが狩人や猟兵をメイン職業にして、サブ職業として隠者を選ぶ事があるのだが、それ以外ではこの職業に就いているプレイヤーはそうそう居なかった。


そこまで隠密性が高い訳ではないので、暗殺者(アサシン)としての活躍は無理。特定の場所ーーー暗闇や森の中、障害物が多い場所等では、探知系スキルに0.5%の確率で引っ掛からない等の申し訳程度の能力はあるが、他に目立った能力もないので就くメリットがないのだ。


まぁ例外的に初心者なら一定期間隠者に就いている場合がある。レベル1~5程度の本当にゲームを始めたばかりの初心者が、暗殺者(アサシン)系の職業に就く際にチュートリアルで最初に隠者に就くのだ。しかしチュートリアル終了後すぐに隠者から最下級暗殺者(ロー・アサシン)へとランクアップするので、本当に最初の数時間だけだ。


つまりこいつはレベルが多少高いだけの雑魚って事だ。まったく………今まできた刺客の中ではかなりレベルが高かったがやはり雑魚は雑魚、鬱陶しいだけだな。


男の処理は後回しにしようと思うので、首筋に手刀を1発叩き込んで気絶させる。因みに漫画みたいにトンッ!なんて言う軽い音が出る手刀ではない、ミシリと首の骨が軋む程強烈な手刀だ。加減を間違えると首の骨が折れる可能性があるので、これでも結構細心の注意を払って手刀を決めているのだ。


さて、こいつに関してはどうでもいいのだ、今はこいつより目の前の女だ。こいつは少々気になる、ステータス的には普通だ。現代のNPCの平均的なレベルだし、着ている服もプレイヤーが使う装備品とは違う普通の服だ。だが何か気になる。


「………既視感ってやつか?お前何処かで会った事あるか?」


どうしても気になったので聞いてみたが、当然初対面の相手なので会った事がある訳がないので女は首を横に振った。まぁ俺自身もなんとなく何処かで見た事があるなと言う程度の既視感なので何とも言えない。ただ何かモヤモヤする。なんだろうか?初対面の筈の女が誰かに似ている気がする、ゲームの時だろうか?目の前の女に似ている人間を見た事がある様な気がする。


「………あぁ!リジットか!リジット=フレアデル、誰かに似てると思ったらあいつか。」


じっくり観察した結果、結構簡単に答えに辿り着いた。昔ゲームの時に会った女性プレイヤーのリジット=フレアデル、彼女に目の前の女はそっくりなのだ。まぁリジットは目の前の女の様に妖精族(フェアリー)ではなくて精霊族(スピリット)だったけどな。まぁ精霊族(スピリット)妖精族(フェアリー)の上位種族なので、一概にまったく違うとは言えないがな。


しかしまぁそっくりだ。まるで生き写しかと思うくらいそっくりだ。リジットと最後に会ったのが数ヵ月前だったせいで記憶が曖昧なのを差し引いてもそっくりだと思えるくらい似ている。


リジットと言えば【エデン】において高い狙撃能力を持つプレイヤーとして有名だ。運営側から【狙撃者(スナイパー)】の称号を貰った高レベルプレイヤーの1人で、神弓アルテミスによる攻撃力と彼女自身の狙撃能力が合わさればは恐ろしい程の強さになる。


おそらく現実であの狙撃能力が発揮されれば、100km程離れた位置からプチトマトを撃ち抜けるだけの精密度があるだろう。それにリジットは最上級狩人(マスター・ハンター)をメイン職業にしているので暗殺者(アサシン)には及ばないが、隠密性がかなり高い。


俺も狙われたら矢が知覚範囲内(周囲半径約5km程)に入ってこないと気付く事が出来ないと思う。それぐらい遠くからの狙撃が可能なのだ。リジットが持っていたアルテミスは個人的に手に入れたかった武器の1つだったので、回収出来ないかな?エクスカリバーは聖教国の大聖堂に保管されてるから諦めるとして、アルテミスくらいはリジットの墓に入ってると思うから回収しときたいな。


「リジットの拠点は何処だったっけな?………まぁそれはいいか、取り敢えず捕まえよう。」


リジットの事を思い出させてくれたので優しく気絶させる事にする、いくら此方の命を狙っているとは言え一応女だしな。男なら女に優しくしろと親父によく言われていたので出来るだけ優しくする。一気に懐に入り込み鳩尾に掌底を打ち込む。まぁ滅茶苦茶軽くだけど………本気で掌底なんて打ち込んだら相手の体に穴が空くかもしれないからやらないけどな。


衝撃により吹き飛ばされそうになった女の服を掴み、飛んで行かない様に支える。その後は優しく床に下ろしてあげて近くの棚にしまってあったロープで縛る。因みにロープはギッチギチに肌に食い込むまでキツく巻いて縛る、暗殺者なら縄抜けくらい出来るだろうからガッチリと縛らないとな。


ただあんまりキツ過ぎると血が止まって死んでしまうので、ギリギリを見極めて縛る。ついでに男もふん縛って窓から騎士団の駐屯所の敷地内までぶん投げる、女の方は勢いを付けずに軽く投げるだけに止めておく。まぁ結局はどっちも投げるんだけどな………。


多分男は頭から地面に突き刺さっているだろう。そんな状態を想像して思わず笑ってしまう。暫く笑った後で、笑ってても意味がない事に気付き、これからの方針について考えようと頭を切り替える。


まぁやりたい事をするのが良いだろう。例えば強い奴と戦いたいとか、他のプレイヤーに会いたいとか、昔仲が良かった奴等の墓参りに行きたいとか、温泉に浸かりたいとか、過激な物から簡単な物までやりたい事はいくつかある。


何から始めようか?今の所一番やりたいのは墓参りと温泉に浸かる事だ。どうせなら2つ共一気にやろうと思う、墓参りはまずリジットから始めようかな?リジットが拠点を作ったのは大陸の左端に位置する小さな国、ヒノモトだったと思う。


ヒノモトは世界最高の剣士と呼ばれる集団“侍”の住む極東の小国だ。他国と繋がる陸路は大陸最大の活火山であるアルフレニヤ山により遮られており、海路も特殊な海流や天候により使えない、陸の孤島とまで呼ばれるは程孤立した国だ。故に他国には存在しない文化が多い、アルフレニヤ山周辺の地下を流れる溶岩から発生する地熱を利用した温泉もその1つだ。


ゲームの中とは言え温泉に入れるのはヒノモトだけだ、なので多くのプレイヤーがヒノモトに拠点を作りたがっていた。まぁ実際にヒノモトに拠点を作れたのは一部のプレイヤーだけだがな。何故ならヒノモトの周囲は高難易度のフィールドなので、入国にはある程度の強さを求められる。


つまりかなりのレベルでなければ近付く事さえ出来ない国なのだ。俺も1度温泉に浸かる為に訪れた事があるが、あの国は中々いい場所だ。多少交通の便が不便だがそれ以上にいい点が多い、景色が美しく飯も旨い、温泉や賭博場等の娯楽施設も多く、旅行先には最高だ。


リジットは1度ヒノモトに訪れて気に入ったらしく、ヒノモトの首都に小規模な湯治場の様な拠点を作りそこを基本に活動していた。きっと墓もヒノモト内にある可能性が高い。もしもリジットの墓が無くても温泉に浸かれるから十分行く価値があると思う。


早速ヒノモトまで旅をしようと思うのだが、現在はゲームの時とは違い身分証もなしに国境を越える事が出来ない。今居るニブン王国からヒノモトまでは国を2つ越える必要がある、ニブン王国から聖教国を経由してアスタロス帝国に入り東部の荒野を進めばアルフレニヤ山に行き着く、それを越えればヒノモトへと入る事が出来る。


普通の人間ならアルフレニヤ山に行くだけで2~3ヵ月程度掛かるし、アルフレニヤ山の登頂成功率は約0.4%と低い。つまり2~3ヵ月掛けてアルフレニヤ山の麓まで辿り着けても、それを越えるどころか登る事すら難しい。


これがヒノモトが鎖国状態になっている理由だ。越えるどころか登る事すら出来ない火山の向こう側に人が住める土地があると殆んどの人間は思わないだろう。故に商人達はわざわざ金を掛けてアルフレニヤ山を越えるメリットがないと考えてヒノモトへと向かわないのだ。


いくらヒノモトが開国しようとしても商人が訪れないのだがら鎖国に近い状態になっている、それ故にヒノモトはあまり知られていない未開の地だと思われている。まぁそれは後で詳しく説明するとして今はヒノモトまで行く方法だ。


国境を越えるには身分証が必要だと言う事は既に話しただろう。国境にある関所では身分を証明出来る書類もしくはカード類を提示して、簡単な審査をした上で通る事が出来る。しかし俺は身分証の類いなど持っていない、なので当然国境を越える事は出来ない。


身分証の発行は役所で執り行っているが、申請してから発行までには数ヵ月を要する。俺はそんなに待つくらいなら関所の強行突破を選ぶ、しかしそれだとレフィ達に怒られるのでちゃんと身分証を用意した上で国境を越える事にする。


役所で申請するよりも早く身分証を手に入れる事が出来る場所と言えば、やはり冒険者ギルドだろう。犯罪者じゃなければ誰でも登録可能と言う謳い文句を掲げるだけあって、役所より簡単に身分証の代わりになるギルドカードを発行してくれる。


定住している事が必須条件の通常の身分証では依頼で世界中を旅する冒険者は取得出来ない。そうなると冒険者は国外に出る事が出来なくなるので、特例でギルドカードが身分証の代わりになるのだ。


取り敢えず冒険者ギルドに登録してギルドカードを貰う事にする。冒険者ギルドの登録はすぐ近くの冒険者ギルド本部に行けば簡単に出来るだろう。なので早速宿をチェックアウトして冒険者ギルドへ向かう。


道中襲い掛かってきた刺客が何人か居たので道端に投げ飛ばしたり殴り飛ばしたりして放置する。最早わざわざ騎士団の駐屯所まで投げ込むのも面倒になってきたのだ。放置しても大した問題はないだろう。そうこうしている間に冒険者ギルドに到着したので、中に入る。相変わらず外見や屋内の清潔感は抜群だ。


「冒険者登録はどの受付で行えばいいんだ?」


「えっ?あっ、はい!彼方の奥から2番目の受付で行えましゅーーーますっ!」


入口から1番近い受付に座っていた受付嬢に何処で登録すればいいか訪ねると、突然話し掛けられたからか驚いて噛みながらも何とか登録が出来る場所を教えてくれた。


何を驚いているのかと首を傾げると、何故か受付嬢が物凄い勢いで謝ってきた。俺なんか怖がられてるのか?怖がられる様な事したっけ?よくよく考えればこの目の前の受付嬢は1週間前の家族会議の時に会議室にお茶を持ってきた受付嬢と同じ人物だ。


だとしたら怖がられるのも仕方ないかな?世界中に支部を持つ冒険者ギルドのギルドマスターや世界一の鍛冶師、世界最大の魔法学園の学園長、凄腕と呼ばれる冒険者等々。あの会議室にはそうそうたるメンバーが集まっていたのだ。


その会議室で俺は上座に座っていたのだ。ギルドマスターや学園長、最高の鍛冶師、凄腕と呼ばれる者達を差し置いて上座に座っていたのだ。レフィ達と対談する者は王族ですら対等の関係で言う事で、上座に座る事はないのだ。


そんな中で上座に座っていた俺は、レフィ達にとってそんじょそこらの王族よりも偉いと言う事になる。目の前の受付嬢からすれば機嫌を損ねたら首が物理的に飛ぶ事態になりかねない相手なのだ。怖がるのも仕方がないだろう。


「ありがとう。」


あんまり話し掛けて緊張させるのも可哀想なので、礼だけ言って先程教えてもらった受付へ向かう。背後からホッ………と一安心した様な感じの声が聞こえてきたが、ここは聞こえないふりをしてあげるのがいいだろう。


「登録をしたいんだが?」


教えてもらった登録用の受付には、麗しの受付嬢ではなく鼾を欠きながらだらしなく眠るおっさんが居た。仕事場で堂々と眠るとは凄い度胸の持ち主だなこのおっさん、と思いながら一言声を掛けてみる。


「フゴッ………グガァァアアアッ、グガッ!?」


しかし返ってきた返事は煩い鼾だった。………これは駄目だろ?受付と言うのはその職場の顔だ、初めてその職場に訪れた人の大半は受付に向かい受付係と会話をするだろう。その時の対応が良ければ当然その職場に対する印象は良くなる、逆に対応が悪ければ印象は悪くなる。


詰まる所このおっさんの勤務態度は最悪だと言う事だ。レフィは何故こんなのを雇っているのだろうか?謎だ。


「起きろおっさん、ちゃんと仕事しろ。」


アイテムボックスから巨大ハリセンを取り出しておっさんの見事に禿げ上がった頭頂部を叩く。スパーンッ!と良い音を立てて振り抜かれたハリセンによりおっさんは完全に目を覚ます。まぁこの巨大ハリセンーーー目覚ましハリセンの効果を持ってすれば起こせない者など存在しない。


目覚ましハリセンは叩いた者の気絶や睡眠、催眠、混乱等のバットステータスを打ち消す効果があるのだ、これで叩かれて起きない者など居ないだろう。因みにこのハリセンで叩いてもダメージはない。普通のハリセンで叩かれても怪我をしないのと同じ様に、このハリセンは大きな音が出るだけで一切のダメージを与えないのだ。


「はっ!も、申し訳ありません!」


おっさんが起きたのを確認してから目覚ましハリセンをアイテムボックスにしまう。おっさんは叩き起こされて俺が受付の前に居るのに気付くと、急いで立ち上がり頭を下げながら謝ってきた。


ま、眩しい!禿げ上がった頭頂部に光が反射している!まさかあの禿げ上がってテカテカの頭にこんな機能があるとは!あのテカテカ頭を見た時点でこの目眩まし機能に気付けなかったとは!不覚だ!そして受付のおっさん、敵ながら天晴れだ………!


ーーーとアホみたいな思考は毛程も表情に出さず、気にしていない事を伝えて本来の用件に移る。受付のおっさんは中々仕事が出来るらしく、分かり安くギルドに関するルールを説明してくれた。


その説明を適当に纏めるとこうだーーー。


1.ギルドに登録出来るのは犯罪歴の無い者のみ。


2.依頼主からの報酬の6割りが冒険者に入り、4割りをギルドが仲介料として貰う。


3.冒険者は依頼の達成、非達成に関わらず月に5回依頼を受ける必要がある。


4.冒険者はF-~S+までの21段階のランク付けがされており、ギルドへの貢献度や依頼の達成数によりランクが上下する。


5.冒険者は自らのランクと依頼の適性ランクが掛け離れている場合は依頼を受ける事は出来ない。


6.ギルドは依頼中に起きたあらゆるトラブルに対して一切の責任を取らない。


7.ギルドは冒険者に対して一切の干渉は行わない。


8.緊急時に召集が掛かった場合冒険者は集まる必要がある。(強制ではない)


9.ギルドカードを紛失した場合、再発行は不可能。


以上だ。


至ってシンプルで分かり安いルールだ。俺は犯罪歴どころか職歴すらないので、1は問題ない。2も大した問題じゃない、報酬の4割りを払えば安全(依頼人との間に起きるトラブルに関する安全)が保証されるのだ、安いものだろう?


3は少々微妙だ、詳しく聞くと月に最低でも5回依頼を受けないとランクが下げられる可能性もあるらしい。まぁ長期での護衛依頼を受けて他の依頼が受けられなかった場合は、ランクが下げられる事はないらしい。まぁ気にする程ではないと思うのでこれもOKだ。


4も問題ない、ランクによって宿の割引等の優遇があるが、基本的に低ランクであってもギルドカード自体の効力は代わらない。俺は身分証として使うだけなのでランクは余り興味がないしな。5も問題ない、ギルドの依頼に関しても大して興味がないしな。


6もOKだ、自らが起こしたトラブルは自分で解決するのが俺の心情だからな。7は寧ろありがたい、ギルド側から無駄に干渉されるのは面倒だし不快だからな。8は強制ではないので別にいい。9も問題ない、アイテムボックスにしまってしまえば紛失や盗難の心配はないからな。


どのルールも問題なさそうなのでさっさと登録する事にする。登録は簡単だ。登録用紙に必要事項(名前・性別・年齢・レベル・使用武器等々)を任意で書き込み提出して、簡単な質疑応答で精神鑑定をして問題がなければ登録完了だ。


その後2~3分待っていれば、掌に収まる程度の四角い鉄板の様なカードが渡される、これがギルドカードだ。見た目はただの鉄板なのだが、実際は魔力に反応しやすい聖銀(ミスリル)(ゴールド)の合金を使った魔法道具で、魔力(MP)を流す事によって登録用紙に書いた内容が浮かび上がってくる仕組みになっているらしい。


因みに簡易的な魔法道具とは言えかなりの高級品ならしい。


「これで貴方も冒険者ギルドの一員です、これからよろしくお願いします。」


登録が終わりギルドカードを受けとると、受付のおっさんがマニュアルに書いてあるであろうお決まりの台詞をドヤ顔で言ってきたので、目覚ましハリセンと逆の効果を持つ居眠りハリセンで叩いておく。


叩かれたおっさんは受付のカウンターに突っ伏して鼾を欠き始めた。どうやら居眠りハリセン等のアイテムの効果は現実でも確りと反映される様だ。それを確認した後、入口の近くに居た受付嬢にレフィへギルドに登録した事を伝える様に頼んでおく。


ついでにヒノモトへと行ってくる事も伝えてもらおうかと思ったが、伝える必要もないしレフィも余り暇ではないだろうからヒノモトに行く事は伝えない事にしておく。


それじゃあ早速ヒノモトに向かおうかな?

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