第十三話【家族3】
申し訳ありません、風邪で寝込んでしまい更新が遅くなってしまいました。最近は朝は寒いのに昼は暑いと言うなんとも温度差のある日が続いている様な気がします、皆さんも風邪をひかないように気を付けて下さい。
誤字脱字やおかしな点があったら指摘して下さい、よろしくお願いします。
冒険者ギルドの総本山とも言える冒険者ギルド本部、その本部に存在する会議室ーーー第3会議室の内部で、たった1人でも国家戦力を軽く上回る様な者達が集まっていた。おそらくこの場に居る者達が暴れれば、例え大陸中の国々が一致団結しても止める事は出来ないだろうと言っても過言ではない。
その世界征服すら片手間に行えそうな者達の中で、最も強く最も賢く最も面倒くさがりの男が口を開いた。
「取り敢えず全員の自己紹介も終わったし次の話に移りたいんだが、その前に1つやっときたい事がある………お前等1回俺と戦え。」
全員の自己紹介も終わったので早速久しぶりに子供達の教育の準備をしていると、皆から凄い勢いで止められてしまった。別におかしな事ではないと思う。事実昔はレフィ、ラツィー、デイト、マリー、カイラの5人とは頻繁に組手をしていた。
「別に戦うって言っても殺し合いをしようって訳じゃない。簡単な組手をして実力を見させろって言ってるだけだ。」
「なんでそんな事をする必要があるんですか?お父様なら私達の強さくらい知ってますよね?500年経ったとは言え、私達のレベルは昔と殆んど代わりありません。」
まぁレフィの言う通り、レベルは大して変わっていない。変わっていたとしてもほんの5か6程度の差だ。しかし俺は別にレベルが上がったからとか言う、しょうもない理由で戦えと言っている訳じゃない。
「別に強さは関係ない、俺はどれだけお前達が腑抜けになったのかを知りたいんだ。」
そう言うと同時にダダダダダダンッ!!と6回の爆発音が響き、その後に何者かが床にドサリッと倒れる音がした。その音に俺以外の奴等が瞬時に反応して己の得物を構えて椅子から立ち上がり、何事かと周囲を警戒する。
それを尻目に俺はつい今しがた使った“ある物”の回転式弾倉から薬莢を机の上に捨てて、新しく弾を込める。そして込め終わってから、全員に取り敢えず座れと促す。全員状況が飲み込めていないが渋々武器をしまい着席する。それを見届けてからレフィに1つ問い掛ける。
「冒険者ギルドでは他人の話を盗聴するのが流行ってるのか?」
「………はっ?え?何の話ですか?」
「………やっぱり気付いてなかったか。部屋の四隅と天井、窓の外を注意深く見てみろ。」
俺の質問に対して何の事か本当に理解出来てないレフィや、他の奴等の為にちょっと助言をしてやる。全員が俺に言われた通り部屋の四隅と天井や窓の外を見る、そして気付いた。部屋の四隅の床には透明な何かが倒れており景色が歪んで見えており、天井からは赤い血がポタポタと滴り落ちており、窓の外にも透明な何かが倒れて居るのが分かる。
部屋の四隅に倒れて居る何かは景色が歪んでいる空間の形から判断すると人の形をしており、それは窓の外に倒れて居る何かも同じだ。普通の人間は透明になって部屋の四隅に立っているだろうか?天井裏に潜んでいたりするだろうか?窓の外から除き見たりするだろうか?
明らかに招かれざる客だ。俺がレフィ達と組手がしたかったのは部屋の中に入り込んだ曲者にすら気付けなくなっている腑抜け共が、どれくらい弱くなったのかを知りたかったからだ。
6人もの人間の侵入に気付かないなんて普通あり得ない。だから1度組手をして根性を叩き直してやろうと思って戦うかと聞いてみたのだ。
因みに侵入者を撃ち抜いたのは、俺が船旅の帰り道に作った試作品の回転式拳銃だ。まだ試し撃ちをしていなかったので、丁度いいタイミングで現れた曲者6人を超高速早撃ちで撃ち抜いたのだ。
命中精度や威力もいいし強度も充分そうだ。少々発砲音がうるさ過ぎるのが難点だがそこはこれから改良していけばいいだろう。そう試作品の感想を考えながら、机の上に落ちている薬莢を回収する。薬莢は再利用出来るので出来る限り回収した方がいいのだ、これが所謂エコってやつだな?
「気付いたか?部屋の中に6人も入り込んでる、なのに誰も気付かないなんて平和ボケし過ぎなんだよ。」
「いつの間に………?」
「ラツィーが会議室に入ってきた時に2人、デイト達が入ってきた時に2人、自己紹介の最中に窓の外から1人、自己紹介が終わった頃に屋根裏に1人だ。」
いくら《隠蔽》を使って隠れているとは言え、気配を消す事も出来ない様な中途半端な潜入をする様な奴等の存在に気付けないなんて、どれだけレフィ達が平和ボケしているのかがよく分かる。
さて、レフィ達を怒鳴る前に下手くそなを潜入行った6人の身元を調査しないとな。こう言うのはちゃんと大元を押さえて叩き潰しておかないと、後々面倒事が多くなる。羽虫が1匹飛び回っているのを見逃すと、後で増えて鬱陶しくなるのと同じだ。
取り敢えず部屋の四隅に落ちてる透明な奴等4人と窓の外のベランダに居た奴を1ヵ所に集めて縛り上げる。全員脚や肩等の致命傷にはならない部分を撃ったので多分生きていると思う。《隠蔽》で姿を隠しているのを解除させてから、一応自決防止にタオルを口に噛ませる。ついでに万が一にも自決した際の保険に蘇生薬を飲ませておく、これで自決したとしても1度だけ復活する筈だ。
まぁ本当に効果があるのか分からないので、実験的な意味でも彼等に飲んでもらう。彼等が自決しなくても最終的には始末するのだ、その際に確かめるので問題ない。
こいつ等が所属する場所によるが、基本的に諜報活動は死罪に当たる程の重罪だ。最終的には死刑になるのだし今始末しても問題はないだろう、蘇生薬の効果実験はそのついでだ。
こいつ等への尋問方法は後で考えるとして、今は屋根裏に居た野郎の対処をどうするかだ。どうやら屋根裏に居た奴は1発食らった後すぐに逃げたらしい、撃たれたのに逃げるとは相当な根性を持っている。
他の5人も撃たれた痛みで倒れはしたが、声は一切上げなかったので痛みに対する耐性はある程度はあるのだろう。しかし屋根裏の奴は他の5人の上を行く耐性を持っていた。
正直逃げられたのは予想外だ。何故ならば俺が撃った銃弾は.357マグナム弾の数倍の威力を持つ特製の弾だったのだ、まともな人間なら痛みの余りショック死するレベルの威力だ。それを食らってなお動き回るとは、流石に予想出来なかった。
しかし俺はこれでも【エデン】最強のプレイヤーだ。弱肉強食の世界では油断や慢心が死を招く、だから常に最悪の事態を想定して色々と準備や仕込みを怠らない様にしている。今回は銃弾に特別な仕掛けをしてある、弾丸の表面に特殊な粉でコーティングが施してあり、被弾した者はその粉が付着する様に出来ている。
銃弾にコーティングした粉は雷毒と言う粉で、暗殺者系の職業のプレイヤーがよく使うアイテムだ。普段はただの液体なのだが、電気を流すと強力な痺れ毒に変化すると言う暗殺には持ってこいなアイテムだ。
逃げた奴は恐らく体内に弾丸を残したまま動いていると思うので、今頃雷毒が全身に行き渡っている筈だ。後は雷属性のスキルを当てるだけ、逃げた先は弾丸に貼っておいた発信の魔方陣シールにより丸分かりなのでこの会議室からでも余裕で当てられる。
発信の魔方陣シールとは簡単な発信器の様な物だ。このシールを貼れば、貼った物や人の大まかな位置がマップに表示されるのだ。勿論何時までも効果が続く訳ではなく数時間で効果が切れるし、水を浴びたりすればシールが剥がれてしまい効果がなくなる。
血液により弾からシールが剥がれる可能性も考慮していたが大丈夫そうだ。体内に入った後もシールからの発信は切れてないので、血では剥がれたりしないのだろう。これなら数時間は追跡可能なので銃弾にシールを貼ったのは効果的だったらしい。
逃げてる奴の位置は捕捉しているので、さっさと片付ける事にする。まずは逃げている奴まで最短で辿り着ける経路をマップから割り出し、次に雷属性の魔法スキル《電気ショック》を放つ、後は当たるのを待つだけだ。
《電気ショック》は当たった者を50%の確率で気絶状態にする効果を持つので、当たれば逃げている奴は気絶するだろう。まぁ気絶しなくても雷毒の効果で痺れて動けなくなるだろう。
しかし《電気ショック》を放った後で、重大なミスに気付いてしまった。逃げた奴を動けなくした後で、どうやってここまで連れてくるのかを考えてなかったのだ。どうしようか?わざわざ回収しに歩いて行くのは面倒くさいし、なんの為に遠距離から《電気ショック》を撃ったのかが分からなくなってしまう。
マリー辺りに回収に行ってもらおうか?
「マリー、ここから南南東に直線距離で800~860m辺りにある一軒家の屋根に、1人倒れてるから連れてきてくれ。」
「分かったわ、行ってくる。」
マリーが回収に行く為に会議室から出て走って行くのを見送った後、レフィに16歳未満の子供達を別の部屋へと連れていかせる。尋問してる所を子供に見せる訳にはいかないからな。因みに昔は20歳から成人だったのだが、現在は16歳から成人と言う事になっているらしい。
なので一応16歳の奴は大人として扱う事にする。それ以下は完璧に子供なので、尋問してる所を見せない様にしなければならない。まぁ実際そこまでエグい事をするつもりはないので、絶対に見せたくないって訳でもないけどやはり教育上よろしくないので別室へと行ってもらう。
孤児48人と曾孫1人と曾々孫5人がレフィと一緒に会議室から出ていった後、入れ替わる様にマリーが1人の男を担いで会議室に入ってきた。どうやらちゃんと回収してきたらしい。
「そいつは後で色々と聞きたいから、縛って置いといてくれ。まずは此方の5人組から尋問するから。」
こいつ等はおそらく全員同じ所に所属しているのだろう。何故そう思うのかと言うと、目の前の5人組の服の胸元にでかでかと何処かの国の国旗の様なマークが描かれているのだ。
国旗らしきマークは、金糸で縫い込まれた剣と銀糸で縫い込まれた十字架が交差している回りに、緑糸で蔦が縫い込まれている。銀の十字架は神聖、金の剣は聖剣、蔦は平和を意味する。これ等のマークから予想出来る国家は、聖教国かフリークス共和国のどちらかだろう。
しかしフリークスの国旗は銀の十字架に絡まっている蔦が鷲を絡め取っている物が描かれている。あれは神聖な十字架から生える平和の象徴である蔦が戦いの象徴である鷲を捕らえている図であって、金の剣は描かれていない。
つまりこのマークは聖教国の物だろう。金の剣と言えば聖剣ーーーつまり聖剣エクスカリバーを連想させる代物だ、聖剣エクスカリバーは現在聖教国の大聖堂に【勇者】の死体と共に安置されている。つまり聖剣の象徴である金の剣は聖教国を示す国旗やマークによく使われる。
つまりこいつ等は聖教国の諜報員なのだろう。しかしこいつ等が本当に諜報員なら、随分お粗末な諜報員だと思う。普通諜報員って言うのは身元がバレない様にするものではないだろうか?
それなのにこいつ等はこれ見よがしに胸に聖教国のマークを着けている。聖教国の奴等は愛国心が強い事でも有名な国らしいので、自国のマークを付けていてもおかしくはないのだろうか?
まぁどうにしろ聞けば分かる事なので早速、尋問を始めよう。尋問と言っても手荒な真似はしない、ちょっと簡単な質問をして答えてくれたら苦しまない様に即死、答えてくれなければ手足を1本ずつ斬り落としていくだけだ。
「傷があるままじゃ喋りにくいかな?《グレーターヒール》。」
取り敢えず怪我したままだと喋りにくいだろうから、傷を治してやる。勿論体内にあった銃弾はちゃんと摘出している、摘出しないで治療スキルを使うと体内に銃弾が残ったまま傷が治ってしまうからな。
なのでちゃんと摘出してから治す、俺って意外と優しいだろ?………まぁ結局最後は殺すんだから優しいもくそもないか?
「傷も治った事だし、早速質問しようかね………。まず最初にお前等は何処の組織からの命令で動いている?」
聖教国の諜報員で間違いないとは思うが、一応確認した方がいいだろうから確認しておく。もし間違えてたら恥ずかしいしな。
「…………………。」
「………黙秘、と言う事か?しかたあるまい、少々手荒な真似をしなくちゃならないみたいだな。」
喋らないなら喋りたくなる様にしないといけない。こいつ等には蘇生薬を飲ませているので多少無茶な事をしても大丈夫だろう。なので試してみたい武器を使用してみる事にする。
アイテムボックスから2本の大剣を取り出す。取り出したのは物斬刃右と左と言う名前の大剣で、刃渡り約5m近くある巨剣だ。片刃で持ち手が輪の様になっている歪な大剣で、右と左の2本セットで1本扱いされる珍しい大剣だ。
この大剣は2本を交差させて金具で繋ぎ合わせると1本の武器、物斬鋏と言う鋏型の武器になるのだが、これがまた恐ろしい効果を持つ武器なのだ。《止血》それがこの物斬鋏の持つ能力だ。
《止血》とはその名の通り傷口からの出血を止める能力で、物斬鋏を使う側からすれば余計な能力だ。【エデン】には出血と言うバッドステータスがあり、大きな傷ーーー四肢欠損等の傷を負った際に傷口からの出血でHPが毎秒総HP量の5%が減ってしまう。そのバッドステータスである出血を起こす事なく相手にダメージを与えるのが《止血》だ。
大して意味のない能力の様だが実は意外と価値がある。召喚獣にしたいモンスターがいた場合、ある程度弱らせないと契約出来ない。しかし強いモンスターが相手だと契約出来るくらい弱らせるには、本気で戦う事が必要になってくる。
しかし本気で戦うと大抵は相手に出血のバッドステータスを与えてしまう為、大抵は契約する前に死んでしまう。なので出血によるダメージを無くす為に《止血》を持つ武器は召喚術師系に重宝されるのだ。
しかしこの物斬鋏は《止血》を持つせいでかなり残酷なPK事件が起きた事がある。プレイヤー間では達磨斬り事件と呼ばれており、一番最初の被害者が出てから約5年間で8000人近いプレイヤーがPKされた。因みに俺もこれの被害にあったーーーと言うか当時プレイしていたほぼ全てのプレイヤーがこれの被害にあったのだ。
しかしこの事件が何十年間も語り継がれる理由は被害者の数が多いからじゃない、その被害者の殺され方が酷かったからだ。達磨斬り事件の被害者は最初に物斬鋏で手足全てを斬り落とされ、その後ジワジワといたぶられながら殺されるのだ。
手足を全て斬り落とされたら、近接戦闘特化型のプレイヤーに抵抗する術はなくなる。普通は手足全てを失えば、バッドステータスの出血で毎秒総HP量の5%×4を失う事になるのですぐに死んでしまうのだが、物斬鋏の《止血》のせいで襲撃されたプレイヤーは簡単には死ねない状態にされたのだ。
因みに俺は被害にあった時は、最寄りの村でデスペナルティを食らった後すぐにPKされた地点に戻ってPKを行ってたプレイヤーを半殺しにした。その後プレイヤーが多く集まる街に縛り上げた状態で投げ込んでやった。その後達磨事件を起こしたプレイヤーがどうなったかは俺の知る所ではない。
物斬鋏はその際にデスペナルティで失ったアイテムの変わりに回収させて貰った物だ。鋏型なので取り扱いは難しく癖があるが、扱いを覚えれば使い勝手がかなりいい武器になる。
話が反れてしまったな。取り敢えず何故俺がこの武器を選んだかと言うと、この物斬鋏は拷問に使うには最適だからだ。斬っても血が出ない、つまり大量出血で死亡する事が無くなるのだ。素晴らしく拷問向きの武器だと思わないだろうか?
物斬刃右と左の持ち手付近にある金具を使い、交差した状態で大剣同士を繋げる。刃渡り5mの刃と1.5mの持ち手を2本合わせれば、全長6.5m重さ800kgの巨大鋏の完成だ、大きさもそうだがそのデザインは非常に不気味なので威圧感は抜群だ。
一応鋏の動作に違和感がないかを確認すると少し動きが悪かったので、油をさしながら地面に転がっている奴等に聞いてみる。
「斬られるなら足の指先からがいいか?それとも手の指先から?好きな方を選ばせてやるよ。」
油をさした部分から余分な油を拭き取り、錆止め代わりに刃にも塗っておく。ついでに刃を砥石で研いで切れ味を確保しておく。これから人間5人を切り刻むのだから確りと研いで切れ味を上げとかないとな。聞いた話では斬る事に特化している刀でさえ使えばすぐに切れ味が落ちていたらしい。この鋏が刀と同じかどうかは分からないが、斬り易くするに越した事はない。
その為に刃を砥石で研いでいるのだが、それが物凄く不気味に見えたらしく、床に転がる5人の顔が目に見えて青醒めていく。まぁこの会議室はちょっと薄暗く、明かりは蝋燭の火くらいなのでその中で巨大な鋏の刃をた研ぐ俺は、さぞかし恐ろしく見えているのだろう。
「どっちがいいんだ?足か、手か?あ、それか手足完全に斬り落とした後で火炙りにしようか?他はーーー。」
10種類くらいのパターンを考えたのだが、どれも恐ろしく残酷なやり方なので彼等5人は余計に顔を青醒めさせるだけだった。どうやら彼等も手足を斬られたり、火で炙られたりするのは嫌ならしい。
まぁ俺もしたくはないから嫌ならやらないに越した事はないので、喋ってくれた方がありがたい。しかし彼等の所属する聖教国は一部から世界で最も危険な国とまで呼ばれるくらい暴力沙汰が多い、何故なら熱狂的な信者が他国からの旅人に対して事件を起こすからだ。
聖教国の法律は厳しい。他国で産まれた者からすれば理解しがたい法や宗教に関するマナーが幾つもあるので、旅人達が知らず知らずの内にマナー違反をしていたりするのだ。それに対して熱狂的な信者達は「神への冒涜だ!」とかなんとか言って暴力を振るう事がよくある。
半分洗脳にも近い宗教的なルールやマナーを通して聖教国の国民全員が法王や神官、国に対しての忠誠心を抱く様にしているのだ。それは目の前の5人とて例外ではない、拷問による痛みや恐怖よりも国への忠誠心や愛国心の方が強いのだろう。
もう少し恐怖を与えれば、忠誠心を恐怖が上回りそうなのでビビらせるために、今まで研ぐ為に開いていた刃をわざと音を発てて閉じる。ジャキンッ!という鋏が閉じる際の独特な音に5人はビクッ!体を反応させる。
「早目に決めてくれないか?喋って苦しまずに死ぬか、手足斬り落とされるか、二つに一つだ。俺としては面倒だから普通に喋ってくれた方がいいんだけどな。」
巨大な鋏を開いたり閉じたりを繰り返しながら無表情で淡々と聞く俺の姿は、周りで見守っていた他の奴等から見ても恐ろしく見えたのだろう、皆顔が青醒めている。そんな中で俺は鋏の刃を開いた状態で手の動きが止め、頭上を見上げる。
「………俺の死角に立つとはいい度胸だな。」
言うと同時に右手1本で鋏を持ち上げて天井を斬る。刃を閉じた時の感触では、肉を斬った感触があったので多分斬ったと思う。しかし《止血》のせいで血が出ないので本当にちゃんと斬れたのかどうか分からない。
気配を頼りに先程斬ったと思われる奴の居場所を割り当て、天井を四角く斬り出し上に居る奴を引き摺り落とす。ついでに窓から侵入してきた透明な奴の足を回転式拳銃で撃ち抜いておく。
「なんだなんだ?まるで蛆虫みたいに沸いて来やがるな?デイト!ここら辺一帯に結界張れ!」
透明になって入り込んできた奴等や屋根裏に気配を殺して隠れてる奴等がウジャウジャと居る。何処からこんなに入り込んでいるのか、何十人もの諜報員や暗殺者達がギルド内の様々な場所に入り込んでいる。一応これ以上侵入者が来ない様に、デイトにギルド本部を丸ごと包む形で結界を張る様に言っておく。
気配を探れば侵入者の大部分はこの会議室に集まっており、会議室より少ないが何人かは資料室や倉庫等に向かっているのが分かる。推察する限り、資料室や倉庫に向かっている奴等はギルド本部に保管されている資料やモンスターの素材を取りに、会議室に向かっている奴等は誰かの暗殺に来たのだろう。
よくもまぁこんな大人数でやってきたものだと思わずには居られないくらいウジャウジャと隠れてる。
「フンッ!《短気絶》、《雷の衝撃》。」
壁際に潜んでいた数人の男が一斉に此方に向けて突進してきたので、正面から来る3人を纏めて物斬鋏で斬り裂き背後から迫る奴に気絶効果のある《短気絶》を施した裏拳を当てて気絶させ、左右からくる奴には麻痺効果のある《雷の衝撃》を当てて動けなくする。
襲い掛かってきた奴等はどいつもこいつもど素人みたいな動きだ。一斉に襲い掛かってくる割には全く連携が取れてないのがその証拠だろう。突進してくる際に全方向から同時に攻撃したのなら俺に触れるくらいは出来ただろうに………まぁ触れられるのとダメージを与えられるのとは別だけど。
「ラツィー、お前レフィと一緒に倉庫に居る奴を、グランフィードとマリーは3階の資料室、残りの奴はこの部屋に居るのを殺るぞ。」
近付いてきた奴をまた1人また1人と斬っていきながら他の奴等に指示を出す。どうにも数が多過ぎて手が回らないのだ、何故こんなに居るのかは知らないが諜報員や暗殺者にしては数が多過ぎる。暗殺者ギルドか何かの組織か?
上から飛び掛かってきた奴を閉じた鋏の先端で突き刺して地面に叩き付け、その流れで近付く奴等を纏めて串刺しにする。もう殺さずに捕まえるに数が多過ぎるし、殺さない様にしていると隙が出来てしまうのでもう捕まえるのは諦めて片っ端から倒していく。
それにしても変だ。向かってくる奴等から殺気が感じられない。短刀やナイフで急所を狙ってきているのだ、つまり殺す気満々なのだ。それなのに殺気が出ないとは変だ。それにこいつ等からは恐怖が感じられない。
普通いくら訓練していたとしても、目の前で同業者が何人もやられてるのに恐怖を感じない訳がないのだ。それがこいつ等は一切ないーーーと言うか感情が感じられない。動揺、恐怖、殺気、何も感じられない。
「………操られてるのか?」
よく見れば眼が虚ろだし動きも非常に単調だ、突進と飛び掛かりくらいの動きしかしてこない。これを操ってる奴は何がしたいのかサッパリ分からないが、あんまりレベルが高い奴ではないのだろう。
そう思っていると、今まで攻撃してきていた奴等が突然此方に背を向けて逃げ出し始めた。これには流石に驚いて固まってしまった、何せ今の今まで戦っていた奴等が突然逃げ出し始めたのだ。しかし固まった体を無理矢理動かして逃げる奴等を背後から斬っていく。
逃がすと厄介な事になりそうな気がするので、1人残さずに消しておきたいのだ。それに少々気になる事があるので、何人か捕まえておきたいと言うのも理由の1つだ。捕まえると言っても生かして捕まえる必要はない、死体の1つや2つくらい回収出来ればいいのだ。
なので手早く背後から鋏で斬り裂くのだが、中々人数が減らない。斬った人数が三桁に届きそうになった頃、突然目の前で強烈な光が発せられて視界が塞がれる。突然の事だったので反応出来ずに数秒間視界が閉ざされてしまった。
おそらく《閃光》の類いだろうと判断して瞬時にその場で気配を探る。すると案の定左右から迫る者が2人居た。それに気付くと同時に物斬鋏の持ち手付近の金具を外して、大剣の状態に戻して気配を頼りに左右から迫る2人を同時に斬り棄てる。
そしてもう一度気配を探るが、誰かが近付いてくる感じはない。視界が戻ってくると何故最初の2人以外に誰も近付いて来ないのかが分かった。他の奴等は最初のを囮に時間を稼いで《転移》で逃げたのだ。中々上手い手だ、《閃光》により目眩ましをした後に保険で2人の囮を使い残りは手早く《転移》で脱出したのだ。
流石に《転移》を使って逃げられたら追跡は不可能だ。勿論《転移》を使うには多少時間が掛かるので強引に止めさせる事も出来るが、先程の様に目眩ましされては難しくなる。
なのでやはりさっきの手はかなり上手いのだ。こればっかりは関心するしかない、仕方ないので今まで通ってきた道に落ちている死体を回収しながら冒険者ギルドの本部へ戻る。
今が夜で良かった、もし夜じゃなかったら人の往来が激しい大通りで人間をぶった斬ってる所を目撃されて、騎士達を呼ばれてしまう所だ。それに夜ってだけじゃなくて、この斬った奴等が断末魔や叫び声を上げなかったのも騒ぎにならなかった理由だろう。
「しかしまぁ、こいつ等えらく軽いな?」
死体を回収しながら思ったのたが、この死体は軽過ぎるのだ。まるで乾物みたいだ、こんなに軽い体重でよくあれだけの運動能力を発揮出来たものだなと思わずには居られない。
余りにも軽過ぎるうえに何かがおかしい、死体は全て妙に骨張っているのだ。この感触は1度現実で触れた事がある、ミイラだ。この死体はあれに非常に近い。乾燥している為軽く、骨張っていて固い、ミイラ程ではないがこの死体も乾燥しているし骨張っている。
それにもしかしたら血が全て搾り取られているかもしれない。乾燥していたとしてもこれは軽過ぎる、物斬鋏の効果で血が出ていないと思っていたが実は物斬鋏の効果ではないのかもしれない。確かめる為にアイテムボックスから適当なナイフを取り出し死体を斬り付けてみる。
「………出ないな。」
幾つか別の死体でも確認してみたが、どれも血は出なかった。どうやらこの死体は元々死んでいたらしい。それを何処かの誰かが《死霊術》を使って乾燥死体にして使役していたのだろう。
ならば疑問は解決だ、なんであんなにウジャウジャと湧いてきたのか。簡単な話だ、近くの墓から死霊術師によって生み出されていたのだ、そうならば三桁近い数の侵入者が居たのもおかしくはない、何体殺され様が墓に死体がある限り永遠と生み出されるのだから。
しかし何処の誰が《死霊術》なんてスキルを使ったのだろうか?あれは悪魔神官系の職業が使うスキルだ、悪魔神官系なんてそうそう居ないレア職業なのだ。何故なら悪魔神官系の職業が使えるスキルは基本的に相手にバッドステータスを与えたり、死霊系のモンスターを使役したりするスキルばかりで、自らが剣を振ったりする様なスキルが少ないからだ。
それに悪魔神官系の職業は光、聖属性の攻撃が当たると大ダメージを食らう、下手すれば即死する事もあるくらいだ。そんなデメリットが多い職業なので不人気なのだ。故に超レア職業でもあるのだ。
なった奴は相当な物好きだろうとおもいながら、死体を全て回収してギルドの会議室に戻る。するとそこには資料室や倉庫に向かったレフィ達が帰ってきていた。足下には俺が回収してきた死体と同じく物言わぬ本物の死体になっている侵入者達が転がっている。何か違和感を感じるが、取り敢えずレフィが捕まえてきた奴等の数を数える。
「1、2、3………16人だけか?もっと居ただろ?」
「追跡中何人かに足止めされて他の者には《転移》で逃げられました。」
レフィの方も俺と似た様な状況になってたのか………。まぁあれをやられたら初見では誰も追跡出来ないだろうな。まぁレフィが捕まえた奴等は無傷っぽいから色々と調べられるだろう。
《死霊術》は使役した死霊に簡単な命令をインプットさせる事が出来る、そしてそれは使役した死霊を調べればどんな命令をインプットしたかが分かるのだ。どんな命令がインプットされているかを調べれば、ここを襲撃させた奴の目的が分かるだろう。
まぁ大体の目的は分かったがな………。
「目的は資料やモンスターの素材の回収だろうな。ついでに最初に忍び込んできた6人の奪還もして行ったのか。」
会議室に入った時に違和感を感じたのは、最初に捕まえた6人が居なかったからだろう。どうやらあの死体軍団の目的は誰かの暗殺などではなく、資料やモンスターの素材を盗む事だったんだろう。そしてそのついでに捕まっていた同胞を助けたってところかな?
一応何処に逃げたかは分かる。最初に捕まえた6人の内5人からは銃弾取り出し治療したが、1人だけ銃弾を取り出してない奴が居るのだ。そいつの位置はマップに出ているので何処に居るか分かる、しかし追跡は出来ない。
マップに表示されているマークが《転移》で移動したのは国境を超えた先、聖教国の中だからだ。追い掛けるには少々距離があり過ぎる。
しかしまぁ奴等が聖教国の手の者だと言う事はこれで確定した、ここを死霊に襲撃させた奴が聖教国の所属だと言う事もだ。まったく………何が“聖”教国なんだよ?思いっきり悪魔神官系の職業の奴が居るじゃねぇかよ。あれって聖教国の法律では邪教扱いされる職業だろうよ。
「仕方ない、取り敢えずこの死体の山を片付けるか?」
追い掛けるのは諦めてまずは三桁近くある死体の片付けをするとしよう。いくら乾燥している死体でも何時までもこんな場所に置きっぱなしにしていると腐ってしまう、何処かにこの死体が入っていた墓がある筈なのでマップを開き近くの墓地の位置を調べる。幸い墓地は冒険者ギルドの本部からすぐ近くなので担げるだけの死体を担いで墓地まで持っていく。
すると案の定墓地には幾つもの穴が空いていた、この穴が大量の死体達が眠っていたは墓地なのだろう。何処に誰が埋まっていたのかは分からないので適当に放り込んでいき、《アースウェイブ》で埋めて地面をならす。最後に手を合わせておく、成仏出来るかは分からないけどな。
長くなったので一旦ここで切ります。ちょっと中途半端な終わり方になったような気がしないでもありません。次回からは主人公が冒険者になってモンスター相手に無双する予定ですので、スルト一家の団欒編はここら辺で終わります。まぁ多分たまに登場するので終わりとは言えませんが………。
これからもよろしくお願いいたします。




