◇本気の兎人族◇
「っ、人の気配だ!」
捜索隊か?俺も泉のほとりまで走って竪穴の上の方を見上げる。
ニルスが上を見て叫ぶ。
「おーい、おーいこっちだ。こっちに竪穴があって、落っこちた!みんな無事だ!」
「ニルス様!?」
かなり上の方から誰かが竪穴をのぞきこんでいる。
声からいってレンブラントか?
「おねぇちゃーん!」
リュリュの声もする。なんであんな小さな子まで一緒にきたんだ。
まぁここの竪穴に入らなきゃ、レベルの低い魔物しか出ないだろうからレンブラントがいれば余裕なのだろうが。
「まってろ。すぐ行く」
と、上の方が騒がしくなる。
「おねぇちゃーーん」
空から兎耳の幼女が降ってきました。
「わわわわあ」
俺はやっと少し回復した魔力で風を起こし、ふんわりとリュリュを受け止めた。
「下は泉だ。濡れるし岩もあるから蔦を伝っておりるか何とかしてくれ。飛び込むとか厳禁な!それと、こっちから登るのは無理だ!なにか登れる道具とか用意してくれ」
あわてて続けて飛び込もうとしていたレンブラントにむかってニルスが叫ぶ。
捜索隊まで皆竪穴に落っこちたら、どうやって登るのだ?
「わかりました。ニルス様、少々お待ちを」
レンブラントの姿が一旦ひっこむ。
「おねぇちゃん!」
リュリュが首ったまにかじりつく。暖かくて柔らかい身体が俺の心の芯まで落ち着かせていく。
「会いたかった!」
って、今日の朝ぶりだよね?かわいいなぁ、もう。
「うわぁ。すごい、兎人族だ。はじめて見る」
トーマスも双子も兎人族に夢中だ。
「って、また敵襲だよ!」
また横穴から魔獣が涌いてきたらしい。
「リュリュは後ろに下がって!」
俺はリュリュを庇って前に出た。
でかいワームのような魔獣がいた。口には牙状の尖った歯が並んでおり、目は小さい。そして3つある頭の上には3本の触手が生えている。
ヘンシン
俺はまた魔法剣士になる。
双子も杖を構えている。物理で行く気満々のようだ。
「たぁぁぁっ!」
ニルスが躍り出た。9本の触手を掻い潜りつつ、胴体に切り付ける。
俺も飛び出す。
ジャンプして俺めがけて飛んできた触手を2本まとめて斬り落として着地する。
魔物を集中して見る。
とたんに3D画像のように魔獣の内部が透けて視えて、3股にわかれた頭部の付け根に赤く光る反応があった。
「頭部の付け根だ。そこを狙って!」
トーマス達が槍で魔物を突き刺す。
「目をつぶした。出鱈目につっこんでくるぞ!」
「ちぃぃぃぃっ!」
ハッサンは片手で振り回していた槍を捨てた。
「まだ練習中だけど、これでどうだ!」
指を一本魔獣にむけて指さす。
「エア・ニードル!」
バスバスバス!と風が魔獣めがけて刺さる。
まるでレイ●ンのようじゃないか。だが威力はそこまでじゃない。
体液を振りまきながら、魔獣が暴れる。
身体に触れたら、ふっとびそうだ。
「危ない!」
触手の一本が俺の頭上を越えてリュリュに迫る。
「うさキックハイパー!」
リュリュはキックで触手を蹴り飛ばすと一回転して着地した。
ベイリーもそうだったが、獣人の身体能力は凄まじい。一見よるべないような幼女だが、リュリュも相当なものだ。
リュリュの目が赤く染まる。
「月神アルティナに奉じる御業、リュリュ・ウォーシカが命じる。地獄の大鎌召喚!」
とたんに虚空に麗しき乙女の映像が浮かび、その乙女が目を見開いたと思うとその手に大鎌が現れ、それを奮った。
スパァァン!
魔獣が真っ二つになった。
みんな口をポカンと開けている。
「さ、留めを!」
「お、おう」
何だか気が抜けた風情でニルスが頭部の付け根に向かって剣を振り下ろす。
急所を攻撃され、魔獣は倒れた。
何て大技をもってるんだ。
リュリュ・・・おそろしい子。




