◇歓迎できない情報◇
「大胆な事するね・・・」
あきれ顔のハッサン。うわぁーと目を手で覆っているリングル。トーマスは鼻を押さえている。鼻血がでそうなのか?
「アレが一番てっとり早い」
ニルスは顔を赤くしたままうそぶく。
恥かしいならしなきゃいいのに…回復とか頼んでないし。
なんだろう。女慣れしているのか、していないのか分からない反応だ。
てか、こいつも肉食系かよ。俺の世界では流行の植物系男子はこっちにいないのか?
家族のキスでべろちゅーはないと思うのだが、こっちの常識がわからん。
ごめん。ウィル、これは浮気に入らないよね?むしろ事故だ。
たしかにまとまった量のマナが俺の中に流れ込んで、回復してだるいのは収まってきたがお礼を言うのも変な気がして微妙な気持ちだ。
「その・・・回復しました。ありがとうございます。が、何度も言ってますよね?俺には決まった相手がいると。・・・だから・・・はぁ、お礼は言いましたが、複雑な気分です」
ため息が出た。断りなく、他人にベロチューはいかん。
「もう俺の物だ。誰にも返さん」
「へ?」
「なんでもない」
…小声だったけどバッチリ聞こえた。
額から汗が出た。
いやいやいやいや、奴隷は人じゃなく物扱いだって言ってもですね?
モノじゃないんだから・・・って物でした。
いやな予感がした。俺、このまま奴隷から抜けだせないんじゃない?
頭を抱えた俺にマリィとリリィが慰めるように肩に手を置いてきた。
ラプトルが出てきた横穴を睨んでトーマスが言う。
「どうやってここから脱出しようか?」
「正直さっきみたいなのが出てきたら、勝てる気しないんだけど?」
ハッサンは片腕を怪我している。ムリはきかないだろう。
「今日の夕方に帰らなければ、捜索隊が出るはずだけど。まずそれまで生き延びなくちゃね」
リングルが盾と槍を構えた。
「ちぃっ!噂をすれば・・・かっ!」
他のメンバーもみんな獲物を構える。もちろん俺もだ。
横穴をの奥から何かが近づいている。一難去ってまた一難とは!
気配の主はスライムだった。透明なゼリーの中に魔核が透けて見えている。
あの核を攻撃して壊すことが出来れば退治することができる。
だが、スライムだってただやられているわけじゃない。
「ファイヤーボール!」
「岩の壁!」
やつらの嫌なところは、魔法攻撃だ。後衛である双子はスライムの魔法攻撃を同じ属性もしくは反対の属性の魔法をぶつけることで防いでいる。
「っ!魔力がないときに限って!」
俺も剣で応戦する。横穴からは数体ずつしか出てこれないのが幸いだ。
スライムは他の魔物と違って、死体を残さない。
ゼリー状の身体が溶けるように消え、あとには魔核だけが残る。
あたりはスライムの残したその魔核が大量に落ちている。
誰もが息を切らしていた、いくらそれほど強くないモンスターでも数が多すぎる。
「はぁっはぁっはぁっ!くそ!きりがない!」
「動きを止めるな!止めたら終わりだ!」
「うぉぉぉぉ!スライムの癖にっ」
皆必死にスライムを倒していく。
どれほどの時間がたったのだろう。いつの間にか、一人、また一人と倒れ込んで、ゼィゼィと荒い息をあげている。
残って立っているのは俺とニルスぐらいだ。
「っせぇぇぇぃっ!」
最後の一匹の魔核に剣をつきたて、ニルスもとうとう膝をついた。
「俺達、もっと持久力、鍛えなくちゃね・・・」
トーマスが指をたてて言い、ニルスは大の字になって言った。
「やっべ!めちゃくちゃ疲れた。町の近郊に出る奴にくらべて強ぇぇよ」
身体を酷使したためか、デビットの所業を聞いた時の暗い感じは消えている。
しかしあの横穴、何とかしないと。
ああやって今後も魔物が押し寄せてくればジリ貧だ。
「しかし、アリサさん強いね。どうやってそこまで腕をあげの?」
リングルが感心したかのように言う。
「俺はアジャール出身だから・・・あそこの魔獣は強いから自然と」
「アジャール砦か。それじゃ心配だね」
トーマスがそこで爆弾を投げた。
「アジャール平原、やぶられただろ?あそこ、今孤立してるもんね」
なんだってーー?????




