◇底での闘い◇
ハッサンが腕を噛まれ、そのまま振り回されている。
楔帷子のおかげで食いちぎられはしないだろうが、相応のダメージを受けているだろう。
リングルが盾で押し返している個体は片目に槍が刺さっているがまだ闘志をむき出しにしており隙を狙って噛みついてこようとしている。
トーマスは槍を手放しており、剣を抜いて女の子達に飛びかかろうとしていた個体に切り付けていた。
ニルスは足をすべらせたところを鋭い鉤爪を突き立てられそうになってそれを剣で受けている。
マリィはファイヤーボールを放った直後で、リリィは魔法を放つために隙ができたマリィを庇って、飛びかかろうとしている個体に杖で殴りかかろうとしている。
だめだ。どこを見てもピンチでしかない。
俺は・・・。
覚悟をきめた。バレたらどうなるかわからないがここで全員死ぬとかよりマシなはずだ。
ヘンシン
俺は心の中で呟いた。
とたんに俺は冒険者(魔法剣士)の装備を身に纏った。
背中の弓を取りだし構えると放つ。
追尾の魔法が賦与された矢だ。狙った獲物を射るまで追いかけていく。
簡抜入れず魔法剣に魔力を通しながら抜く。
抜いた勢いそのままに背後の個体を切り捨てた。
「ハァァァ!」
シュパン!スパン!
小気味いいほどの切れ味の剣は確実に魔獣を狩っていく。
ハッサンに噛みついていた個体を矢が射抜き、ニルスを鉤爪で切り裂こうとしていた個体を剣で両断した。
その間にリングルが自分に襲いかかってきた個体を盾でお仕返し、トーマスが魔獣を仕留めたのを目で確認すると、俺はマリィを狙っていた個体に魔法を放った。
ラプトルは一瞬のうちに凍り、その動きをとめた。
俺の今までの人生の中で短い時間にこれだけ複数の事をしたのははじめてかもしれない。
ビックリしたように、ニルスがこっちを見たのが見えた。
が、すぐに剣を取り直すと、ただ一匹残ったボスクラスの奴に飛びかかっていく。
俺は少年達が一斉にボスに飛びかかっていくのを倒れながらスローモーションで確認した。
さかさまになった視界に、少年たちの善戦によってボスの急所に槍が貫かれ、ボスの身体から血が吹きだすのを見る。
そのまま魔力枯渇を起こし、俺は気を失った。




