◇襲撃◇
「はぁはぁ・・・もうダメ」
「水いっぱい飲んじゃった~」
「あの水、綺麗かな?」
俺達が倒れていると、ニルスと女の子達もようやく岸にあがってくる。
みんなずぶ濡れだ。
「ハァハァ…ファイヤー」
インベントリから薪をとりだし乱れた息のままマリィがそれに火をつける。
「この前の授業で使った野営セット、片づけないでそのまま持っててよかった~」
「マリィの何でも持ち歩く癖をありがたいと思ったのはこれがはじめてだわー」
脱げる物は脱いで、外せるものは外して、水を絞って火に炙る。
俺は背中に背負っていた小さな袋より出すふりをしてインベントリから干飯を出した。
「マリィ。鍋みたいなものも持ってる?」
聞けば、すぐ出してよこす。彼女もなかなか容量の多いインベントリ持ちらしい。
俺は泉の水を汲むふりをして、魔法で水を作り出して鍋にいれ、干飯を投入し、
これもインベントリから取り出した塩を少々ふりかけた。
俺がやっている事に気が付いてリリィが土魔法で竈のような物を作ってくれていた。
鍋をその竈にかける。
しばらくすると粥のような物ができあがった。
この干飯、ダルトンの亜空間で作り出したものだ。日本人だもの米食べたいさ!
食器は3組しかなかったので食べ終わったら洗って使うという事を繰り返して順番に食べた。お米はみんな初体験らしい。
「「…あったまる~」」
好評なようだ。よかった。
軽食のあと、暫く服を乾かしながらみんなで寛いだ。
どのみち、こんな下層まで落ちたのだ。デビットとやらの前に回り込んで待ち伏せとかもできないだろう。
「こうしてみると、やっぱり女性だったんだな」
ニルスが俺を見て言う。
ほぼ下着姿なのだ。これで性別がわからないとか抜かしたら殴る!
「あまり見ないでください」
俺の抗議に女の子2人も頷いて同意する。
「ここは見ても見ない振りするのがマナーです」
「先輩、デリカシーないですよ」
口ぐちに攻撃され、ニルスもタジタジだ。
ちゃんと他の少年達はこちらを見ないようにして・・・って!チラチラ見てんじゃないか、このムッツリどもめ!
お腹も膨れて、火で暖まって。みんな瞼が重くなる。
今、何時ごろだろうか?
今日は日帰りのつもりだったから遅くなれば捜索隊が来るかもしれない。
助けがくるまでここで待つか?
女の子達は早々に二人で寄りかかって寝てしまっている。
ハッサンとリングルも口を開けて寝始めた。
トーマスは俯いて・・・熟睡してるな、あれは。
ニルスは時々船を漕ぎながら、ハッと起きて周囲を見るがすぐに瞼が下がってきている。
俺も似たようなものだ。
索敵は発動させているが、時々カクンとなってハッと起きる。
ああ眠い。本当に眠い。
何度目かの「カクン」で俺はハッと目を覚ました。
薪もほとんど燃え尽きて、炎は小さくなっている。
竪穴の底であるここはそれもあって暗くなってきている。
身体を触る。だいぶ乾いているようだ。
クシュン。誰かがくしゃみをした。
ニルスが大あくびをしてのびをした。
女の子達も目をこすっている。
突如として脅威が迫ってきていた。
「起きろ!剣をとれ!」
突如として索敵にひっかかった敵に俺は声を荒げる。
数が多い。なんだこいつは・・・
グルァァァァ!
咆哮が周囲を揺らす。
吠え声は威嚇か、それとの獲物を見つけた歓喜の雄叫びなのか。
グルァァァァァォォォォ!
恐竜のラプトルのような生き物が横穴から沸いて出てきた。
「なんだこれ、こんな魔獣見たことないぞ」
トーマスが槍をかまえつつ、つぶやく。
重装備の鎧をつける時間がなくて鎖帷子だけのハッサンとリングルも槍をかまえる。
ニルスと俺は剣だ。
「魔法で援護を!俺達は武器でやる!」
グルゥゥゥアアアアアア!
リーダーらしい一際大きな奴が咆哮した。
「ちぃぃぃ!やらせるか!」
「させるかよ!」
「二段突き!」
槍で横穴から出てきたのをトーマス達3人が突く」
「っしゃぁぁぁぁっぁ!」
動きが止まったところをニルスが首をはねる。
「ファイヤーボール!」
「岩落とし!」
女の子達も魔力を出し惜しみしないで魔法を放つ。
俺も夢中になって剣を奮う。
強さとしてはゴブリンより…かなり強い。
このピンチ、切り抜けられるか?




