◇親父のせいなんだからね!◇
若干俺だけがひきつつ、8階下層まで降りた。
次の階層からは、魔物のレベルがあがる。
「次はどうします?予定ではここまでだったので、引き返しますか?」
「行く。危なくなったら、これを使う」
ニルスが手にしているのは、脱出アイテムだ。
子どものお小遣いでは買えない代物だ。
どんだけ過保護なんだよ。キャスパー(パパ)。
「次の層からはゴブリンが通常出現。スナイプスネイプ、ポイズンバット、吸血 ヒルなんかが新しく出るらしいですよ。」
ステータス異常をもたらすタイプか。ちょっとこれは気をつけないと。
さすがに攻略されているダンジョン。生徒達用に地図や出る魔物の情報の乗った ガイドブックまであるようだ。
「毒消しや麻痺回復の薬の持ち合わせは?」
「大丈夫だ。問題ない」
ニルスが力強く肯定する。
「では行こうか?」
なんで俺がリーダーっぽい仕事してるんだ?疑問に思わないでもなかったが、ニルスが暗い顔をして考えこんでいるようなので、仕方ない。
女の子達はお手伝い気分だし。
誰もマッピングをしていないようなので、俺は黙ってマッピングをしておく。
ニルスも女の子達も地図を持っているようだが、俺はもっていないからな。
ついでにこっそり索敵を発動する。
レオにマナを渡し続けているが、だんだん俺の魔法量も増えてきているらしく
余力が出てきている。
少しの魔法ならば、このメンバーだし使ってもバレないよね?
何が起こるかわからないしな、ここは異世界だからよけいに。
8階下層から9階下層に降りると、すかさずポイズンバットが複数襲ってくる。
む、思ったより数が多い。
剣の一撃で屠り、2匹ほどを後続の女の子にまかせて様子を見る。
魔法を使うかと思ったが、杖での打撃で倒せているようだ。
「杖の中心に捕えた時って快感よね」
「きもちイイ!サイコー!」
顔を紅潮させうっとりする女の子達。
ごめん何かいけない扉を開いちゃった?
暫くいくと、向こうから人が何人か歩いてくる気配がする。
「しっかりしろ」
「リングル、もうちょっとだ」
その声を聞いてニルスが走りだした。
「あ、ちょっと!おいていかないで!」
女の子達もあとを追うので俺も続く。
まったくニルスの奴、周りをよく見ろよ。
次の角にスナイプスネイプがいるんだけどなー。
石を拾い、スネイプ目指して投げる。それでニルスも気がついたみたいで、スネイプに向かって剣を奮う。
「邪魔だっ」
一撃を与えたあと、そう叫ぶとスネイプの上を飛び越える。
まったく一体とうしたんだ。
後続の女の子が結局ファイヤーボールでスネイプを仕留めた。この子がマリィ。
黒焼きのようになったスネイプをインベントリに仕舞って
「こんなに真っ黒でもコアとれるかしら?」
ともう一人の女の子、リリィが呟いた。
2人は双子らしい。双子つながりでニルスとラーナとも知り合いのようだ。
「トーマス!ハッサン!リングルはどうしたんだ!!?」
ニルスが3人の少年の前に立ちふさがっていた。
「ごめん、ニルス。きっとバチがあたったんだ。君を置いていったから」
「こんなこと頼むのは、すごく気が引けるんだが、毒消しを持ってないか?ニルス。毒をくらった。」
どうやら、ニルスとの約束をドタキャンした人達らしい。
「水臭いことをいうな。これを使えよ」
ニルスは腰につけた道具袋から毒消しを取り出すと。両側の少年に肩をかりて、脂汗を流していた少年に薬を飲ませた。
「リングル、これで楽になるはず。飲んで」
肩を貸していた少年達も、安心して気が抜けたようでその場に座り込む。
「どうせデビット先輩に脅されたんだろ?」
ニルスが俯いて拳を奮わせている。
ラーナだけじゃなく、ニルスもパパン(キャスパー)のせいで嫌がらせをされているのか。
くだらないな。親の事情なんか子どもに関係ないだろうに。親の因果が子に報い・・・なんて世知辛いな。
「リングルの妹の社交界デビューを目茶目茶にしてやるって言われたんだ」
「くっそ!あいつ!」
歯ぎしりをして、いきり立つニルス。
それを、毒をくらった少年以外の二人が止める。
「強く言われて、あいつらに連れていかれたんだけど、10階層ぐらいで、アイテムすべて奪われて、放り出されて、それで…」
戻ろうとしたところをポイズンバットの群れにやられたと。
仲間を連れていかれて、ニルスが怒って追いかけてくるだろうからその辺りで3人の少年を放りだしたのだろう。アイテムすべてを奪うとか悪質だ。
ギリギリギリと音がしそうなくらいに歯を噛みしめたニルスは獰猛に吠えた。
「デビットの野郎!ぜってー殺す!」
それを聞いてトーマスとハッサンと呼ばれた少年達は首をすくめた。
「そんなの、無理だってわかってるだろ?ニルス。
俺達は負け犬だ。下手に噛みついて、今度はラーナが嫌がらせされたら、どうするの?」
もうすでにラーナも嫌がらせされてるけどな。
俺は昨日あった事を話した。
「くそ!くそ!」
悔しすぎてどうかしてしまったかのようだ。
ニルスは泪を流しながら壁を叩く。
手から血が出ている。それすら気が付かないようだ。
リリィとマリィがどん引きしてそれを遠巻きに見ている。
「親父のせいで!なにもかも親父のせいだ!」
なんかグレテルがぐれた原因がちょっとわかったような気になった。




