↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JKだけど異世界で真の漢に俺はなる  作者: 相川ミサヲ
第4章
46/78

◇悪夢◇

 道なき道を進む。

 ひたすら、前へ前へ。


 俺の入り込んだ森は、名もないような森だった。

 人の入り込んだような気配がない。

 御多分に漏れず、森を住処とするトレントや森林狼、蝙蝠のような魔獣が、侵入者である俺の進路を阻む。


 驚くほど簡単に魔獣を駆逐できる。

 この魔法剣のおかげかもしれないし、アレスからもらった「物理強化の指輪」のせいかも知れない。ゲイル達からもらった装備も、砦の魔術師さん達から教えてもらった魔術もそうだ。いろんな人からの贈り物で今の俺は生きている。


 俺が居なくなっても、とか考えてしまった事が恥ずかしい。

 俺は、これらのギフトをのお礼をまだ返していない。そして俺自身は誰にもまだ贈り物をしていない。

 次に受け渡していかなければ、これらの贈り物はここで途絶えてしまう。


 馬車の中でバートンにもらった固パンを齧る。

 こっちにくる時に持っていたペットボトルに水魔法で水を溜め、それで喉を潤す。

 あれから半日はたっただろうか。

 敵の襲撃があったのは早朝だった。森の中で太陽が見えないが、空腹を感じる感覚でだいたいの時間を知る。


 昼なお暗いこの森の中では見通しは悪く、ひそむ悪意や害意に敏感にならざるを得ない。

 かつてないほど、俺は感覚を研ぎ澄まして行動していた。

 いつも耳にかけていた音楽プレイヤーをやめたからか、耳がよくなったのだろうか。

 かすかな異音を俺は拾った。


 チリリチリリリチリリ

 なにか金属のようなものを引きずる音。

 そしてぶわっと俺の腕に鳥肌が立った。


 ぼろぼろの服をまとった骸骨が一列になって歩いていた。


 足と手に枷をはめられ、鎖で繋がれた骸の行列だった。

 背格好から、女性と子どもばかりであるのがわかる。


 皆俯いて、ものを見ることのなくなった虚ろな眼窩が真っ黒な穴のようになっている。

 「何…あれ」

 俺は思わず両手で口を抑えた。


 スケルトンだ。俺のラノベ知識がそう教える。

 彼女達が通りすぎるのを見送ったあと、何かに強く呼びかけられた気がして俺は森の奥へ進んだ。


 そこが事件のおきた現場のようだった。

 バラバラになった何かの部品。朽ちた馬車の車輪、馬の骨。

 そして年代を得た無数の人骨。


 ふいに霧のような物が湧いてきて、俺の周囲をミルク色に染める。

 「?」

 目をこらすと一人の若者が俺に背をむけて霧の中を立っていた。

 彼は剣をもっていた。ゆるいウェーブのある美しい金髪の若者だ。

 冒険者の恰好をしている。彼は目の前にいる人物にむかって何か言っているようだった。

 ふいに彼は倒れた。さっき話かけていた男に斬られたようだ。


 若者を斬った男は近くに現れた別の護衛らしき人も斬る。

 そして奥へと走る。

 すると一台の美しい馬車が霧の中から現れ、男はその馬車に押し入ったと思うと中から灰青色のドレスを着た一人の美女を引きずり出し突き飛ばして倒すと背中から刺した。


 男の仲間が大勢現れ、さっきの殺された美女の供の者と思われる女と子どもに枷をつけていく。鞭うち、連れ去ろうとしたところに、先程斬り倒されたと思われた若者がヨロヨロと立ちふさがり剣を構える。


 男と若者は相打になった。


 そこへ森林狼が現れ…。


 目をこらすと霧は晴れ、再び人骨と朽ちた馬車の残骸が現れる。

 「…な…なに」


 俺は茫然とした。目の前に現れた映像はすべて無音だった。


 チリチリチリリリリ


 再び鎖を引きずってスケルトン達が戻ってくる。


 それから何回も同じことが繰り返された。


 まるで悪夢のように。


 彼らは自分が死んだ時のことを無限に再現しているのだ。

 観客のいない劇場の舞台の上で、何回も何回も。

 さぞかし無念だったのだろう。

 俺は聖魔法を知らない。覚えていない。この悪夢を止めてあげる方法もわからない。

 埋めてやったらいいのだろうか。

 動きまわるスケルトン達はどうにもならないが、朽ちた馬車の周りにバラバラに 散った骨はなんとかなりそうだ。


 逆再生のように幻影から骨にかえるところをよく見れば、悪い奴とそうじゃない奴の骨はわかる。


 一緒にされたらたまらないだろうから、慎重にわける。

 もちろん念動を使ってだが。

 分けてる最中にも無声映像は繰り返される。


 大きな穴を土魔法で彫り、ちゃんと一人一人の墓を作ってやる。

 墓標には彼らの装備品を使った。


「あなた達の事はきっと親しい人達が覚えていてくれる。安心して土に還って」


 俺は祈った。

 するとひとつの墓から幻が湧きあがった。

 あの斬り殺された若い美女だった。

 俺の方に手を差し延ばした。その手には赤い魔石をあしらった古い首飾り。


 目をこすると幻は消えていて俺の手に先程の首飾りがあった。


 え?いつ?


 俺が目を瞠っていると、ガシャガシャーンという音がした。

 音の方を見ると、彷徨えるスケルトンがすべてバラバラになって地面に散っていた。


 ・・・この人達のお墓も作れってことかな?


 じっと見ていたが、もう二度と立ち上がらなかった。

 彼女達には悪いが、もうどの骨がどの人のものかあやふやだ。

 ひとつの墓穴になるべく一人ずつの骨格になるように組んで埋葬し共同のお墓を作った。


 もう霧が涌いてくることはなかった。


 「!」

 首飾りを手に立ち尽くす。

 気がつくと俺はぜんぜん見覚えのないところに立っていた。

 草が踏み荒らされて倒れている広い草原。その向こうに街道が見える。

 街道の隅に人が倒れていた。

 俺と色違いの旅人の服を着ている。



 「レオっ!」

 レオが土埃まみれで倒れていた。

 無意識に首飾りをアイテムボックスに入れ走り寄った。

 周囲を見回す。エド達の姿は見えない。敵兵の姿も。

 「レオっ!しっかり!」

 抱き起こすとぬらりとした感触があった。嫌な予感がしてレオの顔を凝視する。

 レオの顔は安らかですらあった。

 レオの顔に顔を近づけた。

 息をしていない。


 「レオっ!…そんな」

 体はまだ温かい。風がレオのやわらかいウィルより色の薄い金茶色の髪をゆらす。

 「だめえええ!許さないから。死んだらゆるさないから!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。