◇敵襲2◇
この隊商はすっかり取り囲まれているようだ。あちこちで斬り合いの音がする。
レオと敵の兵士は剣を打ち合いながらあっという間に見えなくなった。
「アリサ!カミルが危険だ。治療を!」
傷口を手で押さえながらエドが俺を呼ぶ。
「ヒール!」
グリーンのエフェクトがカミルを包む。
血が止まり傷が塞がっていく。
「こっちにも、頼む・・・ぜ」
自分で矢を抜いたでのあろう、苦しそうな顔でバートンが言った。
「ヒール!」
その時、馬車が激しくはねたと思うと横倒しになった。
「う…うぅぅ」
馬車から放り出されて、あちこち打った。足を捻ったようでズキズキする。
「ヒール」
自分に自分でヒールをかける。
ヒール使えて本当によかった。
さっきみんなで荷物の固定を見たのがよかったのだろう、荷崩れは最小限だったようで、運よく馬車の下敷きにもならなかったようだ。
「うっくぅぅぅ。舌噛んだ。せっかくヒールしてもらったばかりなのに」
「ケツ打った。いてててて」
「うぉ。肘から下ズルむけてる。ひでぇぇ」
三者三様に文句を言いながら、馬車の陰から這い出す少年達。
が、すぐそんな事を言ってる場合じゃないと我に返る。
俺達の乗っていた横倒しになった馬車に後続の馬車がつっこみ次々とひっくり返る。
俺達はあわてて転がりながらその場を離れた。
「エア・シールド」
俺は4人の周囲に風のバリアを張った。
すでに周囲は敵味方混戦気味になっており、魔法攻撃もしずらい。
俺達の馬車をひく馬は?と見ると一頭は泡を吹いて死んでいて、もう一頭は倒れて荷台が邪魔なようで起き上がれず、足をばたつかせている。
御者をしていた人は矢が刺さって息絶えているようだ。
「何者なんだ?」
エドは男らしく、上着の生地を引きちぎって、擦りむけた腕に傷薬をかけ巻いていく。
「盗賊にしては装備がきれいすぎる」
カミルは顎と右肘を打ったようだ。痛みに顔をしかめている。
「所属章も階級章もついていない。見たことのない鎧だね」
バートンはお尻を撫でている。
3人共、すでにその手に武器を持っている。
腰をおとし、警戒態勢だ。
「レオは?」
バートンがきょろきょろしながら言うとエドが指を差して言った。
「あそこだ」
大勢の兵士や護衛の冒険者達にまじって剣を打ち合わせつつ戦場を駆け回るレオが遠くに見えた。
「あいつ、頭に血がのぼってるな」
カミルがペッと血まじりの唾を吐いた。
口の中も切れていそうで痛々しい。
「押され気味だ」
エドが周囲を見ながら冷静に分析した。
「今ならアリサの魔法でシールドを張りつつ、ここを離れることができる」
「逃げるのか?」
バートンが物騒な目つきをしてエドに詰め寄る。
「俺達のような子どもが参戦しても戦局はかわらないだろう、いやむしろ足を引っ張りかねない。」
「…今年成人だ。」
エドは肩をすくめた。
「周りの大人との体格差を見ろよ。ただ逃げるんじゃない。リスボレイまで戻り助けを呼びにいく」
その時、槍を構えて突っ込んできた兵士が俺のエア・シールドに阻まれて、はじかれて馬から落ちた。
「馬を拾え」
エドが短く言う。
俺はエア・シールドの内側に馬を閉じ込める。
カミルとバートンは馬車と馬を固定していた革の帯をはずし、馬車から無事な方の馬をはずして引いてきた。馬の方は大した怪我をしていないようだ。
「移動しながらでもシールド張れる?」
「…やってみる」
「レオは?」
「…こっちに気がついた。来る」
「もう二頭捕まえるぞ。二人乗りは、速度が落ちる」
「…馬に乗れない」
俺の告白にエドが振り返る。
「…わかった。俺と乗れ。…合図したら、シールドを解いて」
エドは、鞭を取り出した。合図で俺がシールドを解くと近くの兵士に向かってその鞭をふるった。首にそれがまきついて、敵の兵士は馬から落ちた。
両前足を上げ驚いている馬にエドは素早く近づき馬のたずなを取る。
そして馬だけを俺達側にひっぱりこむとまたエア・シールドを張るように俺に言う。
びっくりした。エドってけっこう機敏だ。
「怖いと思うから俺にしっかり捕まって、目を閉じていてもいい。エア・シールドを俺達を守るように発動し続けてくれ」
エドと俺を乗せた馬を中心にして左右をカミルとバートン、うしろをレオといった陣を組んで俺たちは馬を走らせはじめた。




