◇敵襲1◇
早朝、隊商はリスボレイから王都へむけて出発した。
「はーーー」
聞えよがしの大きなため息。
俺はすみっこの方で出来るだけ小さくなる。
「レオ?感じ悪いよ」
カミルが注意してくれるけど、暫くするとまた。
「はーー」
それも俺から視線を外さずにするので居心地が悪いったらありゃしない。
いつもは自由に振る舞うエドまでそのせいか大人しい。
これでは隊商が王都に着くまでに俺の胃に穴があくのではないか。
「固パンでも食べるかい?」
バートンは食べ物で釣る作戦のようだ。
でもレオは相変わらず。膝を抱えたまま首を横に振る。そしてその目は、俺を睨んでいる。
リスボレイからの護衛が思いのほか多かったので、護衛見習いであるレオ達はお役御免となった。
そしてライラさんが降りたあとの、馬車の荷台に一緒に乗りこんでいる。
エドと二人っきりというのも辛いが、これも辛い。
王都の事を聞きたいと思っていたけど、そんな空気じゃないし。
もう寝たふりしかない。
レオの方に背中をむけて俺は目をとじた。
「おかしいと思わないかい?」
エドの言葉が気になり俺は薄目をあけて見た。
レオ達も気になるのか、馬車の左右の幌を内側からめくって外を見ている。
「護衛の数が多すぎる。いや多いのはいいんだけど…陣形がおおげさだ」
「なんだろう。何かあるのかな?」
「この馬車の左右にも護衛の人がいるよ。まるで…何かに備えて怯えてるみたいだ」
「…いやな感じだね」
いいながらカミルは荷を固定しているロープをひっぱって具合を見ている。
何かあって、このロープが解けた場合、俺達はぶちまけられた荷の下敷きになったり、木箱の角で怪我をしたりしてしまう。
「念をいれておこう」
レオも立ち上がって、ロープの締まり具合を見る。
あ、俺、邪魔ですね。
さらに隅の方へ寄り小さくなっているのに、レオの奴はわざと俺にぶつかるように近くに寄ってくる。
「邪魔」
その邪魔にはいろんな「邪魔」が入ってますね。
ウィルの傍にいて邪魔だとか
王都まで一緒で邪魔だとか
思わず恨めし気な目でレオを見ちゃいましたよ。
「なに?」
ぶっきらぼうにレオが言う。
「別に」
何か言ったら、それがきっかけで喧嘩になってしまいそうだ。
「いい気になるなよ」
俺の方に身をかがめてレオは言う。その瞳には暗い炎がチラチラと踊っている。
いい木ってなんですか?この木なんの木、気になる気ですか?
近くにいたバートンがレオを止めようと声をかける。
「あ、また…。レオ、いい加減にしろよ」
そのバートンの肩と腰に矢がいきなり生えた。
え?何?
そんな風に思う間もなく次々と矢が、幌を突き破って中に飛び込んでくる。
「伏せろ!」
エドが言い。みんな低い姿勢になる。
馬車は速度をあげた。荷台の荷物も俺達もその勢いに跳ね上がる。
馬の嘶き、男達の怒号、剣を打ち合う音が外から聞こえてくる。
「敵襲か?」
「多分そうだ」
「くっ!うううっ」
バートンが歯を噛みしめて痛みを堪えている。
「今、治療する」
俺はバートンに声をかけ近くまで這いよった。
馬車はまたスピードをあげたようだ、激しい揺れに舌を噛みそうになる。
「今、矢を抜いて…」
レオが立ち上がりかける。それをカミルが止めた。
「だめだ。レオ、立つな!」
言い終わらない内に、大きく幌が切り裂かれた。
裂けた幌のむこうに鎧を着た馬に乗った兵士が見えた。
その兵士は馬車に併走しながら片手に握った剣をさらに大きくふりかぶった。
「カミル!あぶなっ」
カミルは後ろの気配に気がついていたが、馬車が激しく揺れるせいで回避行動が出来なかった。
斜めにカミルの身体が斬られた。
スローモーションのように、カミルの身体が倒れて跳ね上がるのが見える。
「カミルーー!!!」
レオが絶叫した。
「くそぉぉぉぉ!!!!」
レオは自分の剣を引っ掴むように掴むと馬車の荷台から飛び出した。
「だめだ!レオ行くな!」
エドが叫ぶがレオは構わず、カミルを切った兵士に飛びかかっていた。
兵士の首が飛び、レオがその兵士を蹴り倒して下におとすと馬をそのまま奪って乗る。
身体能力がいいレオでなければできない芸当だ。
「あぶないっ!レオ!」
そのレオに向かって別の兵士が斬りかかる。




