◇立つ鳥水を濁さず◇
なんで、やらかしたかなぁ俺。
昨日のと今ので、妊娠しないよな?…。
まだ早いよ。俺自身まだ子どもなのに、子どもが子ども産んでどうするんだよ。
ちゃんと子育てできるのかよ。
もう少し子どもで居たかった気もする。所詮はピーターパンシンドロームですよ。モラトリアムですよ。
こっちの世界じゃ「成人」と見なされる年齢になるのに、少しもそういう覚悟というか自覚がなかっただけですよ、はい。
はぁー結婚か。
しなくちゃいけないかな?結婚。責任とって。
あのウィルがなぁ…理性の人だと思っていたんだけどなぁ。それほど尻尾の誘惑というのは勝てないものなのだろうか。
俺も勝てなかった、本気出したウィルに抵抗できなかった。
それどころか、自分から…。
・・・・・思い出すと赤面する。
――異性が故意的に尾に触れるのは…求愛行動を示すものだ――
恥かしさのあまりのた打ち回りたいような衝動を抑え込む。
落ち着け、瀬尾野アリサ、出来るはずだ。漢なら自分の言動に責任をとるんだ。
「ふつつか者ですがよろしくお願いします」
正座をして三つ指をついて頭を下げれば、ウィルはびっくりしている。
これからは自分の人生だけじゃない、彼の人生も一緒に背負う事になるのだ。
俺は腹を括った。全力で彼には幸せになってもらおう。
レオがラズ主催の「男会」から帰ってきた。オールで飲んでそのまま居酒屋の隣の宿屋の2階に放り込まれて、昼ごろようやく起きたらしい。
U-16なのに本当にいいの?
ウィルから話を聞いたのだが、急展開についていけないようで、目を剥いたまま10分ほどフリーズしていた。
ある意味兄弟だよね君達。予測がつかない事態に会うとフリーズするらしい。
ごめん。君のDT卒業より先に卒業しちゃったよ。
君が小さく見える。
大人の階段を昇ってしまったからな。上から目線というわけだ、義弟よ。
君のヤンデレ気質についても義姉として、少しでも改善するように心がけるよ。
ちょっと遠巻きで、になるが、仕方ないよね?
午後から3人でウィル手配の馬車に乗り、砦へ向かった。魔術師さんたちやクリスさん達治療師さんに王都へ行く事になったことを説明して、お世話になった事のお礼をするためだ。
立つ鳥水を濁さず。ちゃんとしないとな。
治療師さん達と話をしているとウィルはクリスに呼ばれ、席をはずした。
何か真剣そうな話しをしている。
何だろう?
次は冒険者ギルドだ。生憎と「剛腕の盾」のメンバーとは会えなかった。
というか、他の構成員も今の時間は外で活動している時間帯だ。
短い期間であったが、ここでは知り合いがいっぱい出来た。
餞別にポージョンやエーテルをもらう。…最初に絡まれたアレっていったいなんだったの?
ゴブリンの巣の討伐の報酬は、まだ素材鑑定が終わってないとの事でもらえなかった。かわりに沼なまずの素材分がギルドカードの方に入金されていた。
カードに入金された分はどこの支部ででも引き出せるそうだ。便利だなぁ。
受付のおねえさんに、俺が宜しく言っていたと伝えてくれとお願いすると、
おねえさん、レオの手を掴んで握りながら頷いていた。
・・・頼んでるのは俺なんですけど…。
「道中は護衛にまかせて安全なところにいるのよ」
って、言ってるけど、強いんですけど…レオ。
まぁいい、ほぼ徹夜明けのせいかレオが呆けていて気にしていないようだからほっておこう。
家へ帰ると、だいたいの支度をスミス夫人がしておいてくれていた。
旅行鞄に替えの着替えや靴、携帯食料にサバイバル用品などだ。
靴とか服とかレオと色違いでデザインがお揃いだ。俺の服が男子用なのは動きやすさと防犯のためなんだろう。俺の胸が絶望的で腰も細いのでまるで兄弟のようだ。顔面偏差値がまるで違うけれど。
比べて落ち込んでなどいない。いないったらいない。
お世話になった近所の人にも挨拶しにいった。
なんだかんだ言ってもここは居心地がよかったな。
明日は出発だ。早く寝よう。
・・・自分の部屋へ戻ろうとしたらウィルの寝室にひっぱり込まれた。
意地でも子どもを仕込む気なのかもしれない。
随分と子ども好きなんだな。子煩悩パパになりそう。
ウィルに似たら豹の耳と尻尾がある子が出来るのであろうか。
ま、気が早すぎるな。こんなことを考えるの。




