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JKだけど異世界で真の漢に俺はなる  作者: 相川ミサヲ
第2章
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◇夜空の星の下で◇



 焚火の方に戻ると、レイチェルとユウリがわかりやすく、「あんた行きなさいよ」

 「いやいや、私じゃ無理だし、あんたが…」をやっていた。

 「何やってんだか」

 俺はため息をついた。

 「あ!おかえりアリサ!」

 「なんかいい考え教えてもらえた?」

 そんなに期待して見られても。本来は君達の仕事でしょ。ベータと長いつきあい なのは君達だし。


 「正解ってさ、教えられてたどり着くもんじゃないらしいよ」

 「至言ね」

 レイチェルが腕を組んでウンウンと頷いた。


 「じゃ、あとはまかせたわよ。私、モスラムをケアしなくちゃならないし!」

 おいおいユウリ、今回モスラムはあまりケアの必要がなさそうだぞ?

 ユウリは行ってしまった。おしつける気満々だ。


 「もうっあの子ったら!」

 レイチェルは憤慨している。

 「わかってんのよ。本当は。わたしが言うべきだって」

 独り言のように呟いた。


 「お願いアリサ。一緒についてきて?」

 俺より身長高い癖に上目使いで見てきた。そういうのは男子の前でやれよ。普段クールビューティな外観なので破壊力が半端ない。これは所謂ギャップ萌えというやつか。


 お願いとは言っていたが強制だった。レイチェルは俺の手を握るとずんずん歩きはじめる。途中で戻ってくるベイリーと会う。

 彼は肩をすくめて見せた。

 大丈夫まかせてという風にレイチェルがそれに頷く。


 みんなから外れたところで、ベータは剣を振っていた。俺と一緒だ。悩んだら身体を動かすに限る。


 「あ、あんたが頑張ってるの、知ってるんだから。自信もちなさいよっ」


 それだけベータに投げつけるように言うとレイチェルはUータンして戻っていった。肩をいからせてずんずん歩いていってしまう。


 ・・・おいおい。いろいろ端折りすぎだろう。さっき「まかせて」って風に頷いたのは誰だ?それに今度は俺を置いていってしまった。わざとか?わざと?


 取り残された俺とベータはぽかーんとするしかなかった。




 「みんなにも、いろいろ心配させてたみたいだな」

 普段軽い態度の彼が普通にしゃべっている。

 伏せられたような目はまだふて腐れているようにも見える。

 「これで次のリーダーなんて、笑っちゃうよな」

 彼は腰をおろした。俺にも座るように促す。


 「ベータは強いし、頼れると思うよ」

 そう、たしかにベータは強いし、身軽で飲みこみは早いし、まかせられた事は確実にこなすので頼りがいもある。

 「本当はモスラムが次のリーダーになるはずだったんだ。でもチッチ達の世話を優先させたいからって、俺に…」


 そんな事情があったのか。たしかにベータは遊撃の方が得意そうなタイプだ。ポジション的に全体を見ながら率先して攻撃に加わったりする方が得意そうだ。

 ラズとはタイプが違う。


 「うちのパーティ名「剛腕の盾」だろ?俺の腕を見てくれよ。「剛腕の盾」なのにリーダーがこれって」

 ベータは袖をまくって腕を見せた。

 体質にもよるのだろうが、成長過程の彼の腕はゲイルはもちろん、ラズほど筋肉が発達していない。どっちかと言えば細マッチョだ。


 俺も袖をまくって腕をベータに見せた。

 ベータの腕と並べてみると、俺の腕はいかにもか細く頼りない。

 「どんなに鍛えてもレオにも勝てないし、女だから限界もある。ベータは男だからまだいい」

 ベータは鍛えれば追いつく事もあるだろうが、俺には無理だ。


 「お、おまえ、レオに勝ちたいのかよ。あいつ相当強いぞ」

 ベータはびっくりして言った。

 そんなにおかしなこと言ったかな?

 「あはは、アリサちゃんて、なんか見た目と違うね?考えてる事とかさ」

 彼はちょっと笑った。


 「んっと。アリサちゃ…アリサはさ。なんでそんなに強くなりたいわけ?冒険者として強くなりたい訳ではなさそうだね。」

 呼び捨てになった。言い直してるけど。


 「前ね。弱いせいで奪われたの。大切なもの…。いつも思ってる、もっと強かったらって」

 「俺も同じだよ。もっと強かったら、みんなをうまく守れるのにって」

 慰めるつもりが慰められてた。

 「強くなりたいよなぁ」

 肩と肩がふれあった。ベータの体温が俺に伝わってくる。あたたかい。


 「『剛腕』かぁ。」

 ベータは寝転がって自分の腕を見た。

 「もっと鍛えないとなぁ」

 俺もまねして寝転がる。

 見上げた空には星が輝いている。見慣れた世界の星座はそこにはない。


 「ねぇ。『剛腕』をさ、『凄腕』に解釈したら?」

 いい思いつきだと思ったがベータに笑われた。

 「なんかそれもう意味ちげーよ」

 俺の方に向きをかえて半分起き上がってじっと顔を見てくる。

 「でもありがとな」

 俺もベータの顔を見つめる。うん、いい表情になったようだ。少しは役にたったかな。


 「てかさ?そんな無防備だと…襲うぞ」


 エ!


 あわてて起き上がると身体を傾きかけて俺を覗き込んでいたベータの額とぶつかる。


 「うわっ!いてて。アリサの…石頭!」


 目から星が出て、俺も蹲る。泪が出た。

 あはははは、と朗らかにベータが笑った。からかわれた俺は軽くベータを睨んだ。


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