◇副リーダーはチート?◇
仕事先で、ミニチュアダックスをリードなしで散歩させている人をよく見かけます。マナー違反なんですが、まぁ飼い主によく懐いてまして。勝手にどこかにはいかないようです。
ですが、見るたんびに増えているんですダックスが。分裂でもしてるんでしょーか?
「…さすがにいっぱい」
俺のインベントリは、もうどう詰めても何も入らないようだ。
目の前にどうやっても入らなかった最後の一体のゴブリンの死体がある。
あんまり見ていて楽しいもんじゃない。
「巣の中にこれがあった」
ラズとベータ達が巣穴の中を調べると、古い剣や防具などにまじって、不思議なキノコが…。
「なんだろ…これ」
某髭のおっさんのゲームで、食べるとでかくなるキノコみたいな物がたくさん出てきた。――字ズラ見ると、なんか卑猥だな。
「こ、これ!不思議なキノコじゃないですか!」
…なんかネーミングセンスが、まんまだな。
レイチェルが言うにはこのキノコを食べると本人が持っている隠された能力が開花するキノコだそうな。
隠されている能力がない人には何も変化がないようだが。
「ひょっとして、あのキノコを狙ってオークが?」
「可能性はありますね。珍味で美味しいらしいですし」
付近を探すと、なんとキノコの群生地があった。
「なんとかこの群生地を守りたいですねぇ。アジャール名物になりそうですし。」
エドが思案顔で言う。
「どうする?」
みんな顔を見合わせる。
「砦のエライ人を呼んでくるしかないでしょう。弟君、兄上を呼んできてもらえませんか?ウチの両親じゃ弱くて、ここに辿りつくまでに死んでしまいそうですし」
司令部長官なのにそんなに弱いのかよ。
「と、その前に!」
ベータがニコニコして言った。
「食べてみようぜ!」
「そういえば腹減ったな」
ラズも賛成したのでその場でかなり遅めのお昼となり、キノコとホーンラビットを焚火で炙り、俺のもってきた重箱も出した。
何故かレオがふくれっ面をしていた。みんなで食べるように重箱にしたんだろ?
なに拗ねてんだ。
余談だがモスラムとユウリは「はーい。あーん」と、うふふきゃははしてて周囲をイラっとさせていた。
その傍らで目尻を下げてエルフのジャスティンがチッチ達をモフり倒していたのは言うまでもない。
「…何か変わったか?」
ラズに問われ、みんな首を傾げた。ウィルでもいれば開花された能力ってのは一目瞭然なんだろうが、そもそも皆、自分のステータスを知らない。
「身体が軽くなったかな?」
…それは休憩して疲労が取れたからだろう。
「目をつぶってくるくる回転してもフラつかず歩けるようになった気がする」
それは本当に気のせいなんじゃないだろうか?てかそれ能力?
その中でレイチェルがひとりはしゃいでいた。
「土魔法が使えるようになったわ!」
…わかりやすくていいな。
「なんか歌が歌いたくなってきた」
エルフのジャスティンが急に立ち上がった。
…すごい美声になってた。いやもともといい声だったけれども輪をかけて。
「毛艶がよくなった!」
ベイリーが自分の尾を見て言った。
うわ、モフりてぇ。
「なんにも変った気がしないわ」
いや変わってるって、見た目が!3割増しの美女になってるよ!しかもボンキュッボン。地味顔仲間だったのに!
それ才能っていうの?なんかズルイ。
なんか能力開花っていうけど出てる効果は微妙だな。
俺には実感がなかった。隠されていなかったらしい。
ラズもエドも首を傾げている。
まぁ開花したものもいたし、開花しなかったものもいる。出た能力も微妙だし、能力を持ってるものは皆それを伸ばしてきたんだから、残っているのはそう目覚ましいものはなくて当然なのかもしれない。
「なんか方向音痴が治った気がする」
バートンが喜んでいる。おおよかったな。
「…」
対してカミルは開花したらしいのだが、言いたくない能力らしい。
目に両手をあてて座り込んでしまった。
乙.
能力にもいろいろあるもんな。
「さて、兄さんを呼びにいってくるか」
重箱の入っていたスペースにキノコを出来るだけつめて、俺も立ち上がった。
「おう頼むぞ」
俺達はここで二手に別れることになった。
ウィルを呼びにいくグループとここでキノコを見張るグループ。
オークもあれだけじゃないかもしれないし、巣穴も破壊しておかなくちゃならない。
こちらには多目に人を割くことにした。
インベントリがいっぱいなので俺は一度ギルドへ行って空っぽにして戻るように指示された。なので俺は戻る方に。
その他は、足の速くて攻撃力のあるメンバーが選抜され、結果レオとモスラムとジャスティン、俺が戻る事に決まった。
俺、足引っ張りそう…。
ひきつった顔をしているとレオがしゃがんで背中をむけてきた。
「ほら、おぶされ」
「いや…見た目より重いってか…だし」
「ああ?ブツブツ言ってないで早くしろよ」
レオが切れている。やだ怖い。
「レオ、アリサさんは、君と身長そんなに変わらないから無理かもって思ってるんじゃない?」
カミルが間に入ってくれる。
「俺が平気だって言ってるんだ。いいからおぶされ」
言い合ってるとひょいと胴をつかまれジャスティンの背中に積まれる。
エ?何が起こった?
「ちっこいのはわたしが…」
にこやかな笑顔のジャスティンがそこに居た。
「だってさ?」
ウィンクしてベイリーが言う。俺をジャスティンの背中に積んだのも彼らしい。
果たして見た目は大人におぶさる子どもといった体になって、俺はそのまま運ばれる事になった。
「さて行きましょうか」
脳まで溶けそうな美声でジャスティンがいい、走りだした。
しかも歌いながら、それも速い。
チッっと舌打ちをしてレオが続く。
「よし行くぞ!チッチ頼む!」
どんな時でもチッチ愛でぶれないモスラムがそれに続く。
先頭をイタチのような身体の魔物が走る。その後をモスラム、間に俺を背負ったジャスティン。しんがりはレオだ。
一見すると人さらいの集団みたいだ。
俺、さらわれた人。
そして、急いでいる時に限って邪魔が入るのは世の常か。
だが、モスラムは強かった。伊達に副リーダーやってない。
正確にはチッチ達が強いのかもしれないが。
帰り道で草原狼に行く手を阻まれた。
野生の草原狼が現れた!
「チッチ!攪乱!」
某モンスター育成ゲームのトレーナーのようにチッチ(魔物)を操り、敵を蹴散らすモスラム。
草原狼は混乱している。
草原狼の噛みつく攻撃!
「チッチ!カチコチになれ!」
いやこれどっかからクレームこないよな?
草原狼の攻撃は効かない!
「チッチ!暴虐の牙!」
いたちの魔物の牙に闇が集まり、草原狼の身体にめり込む。
「いいぞチッチ!とどめだ!吸い取る攻撃!」
チッチは草原狼から「活力」を吸い取っている。
チッチは草原狼から「生命力」も吸い取った。
草原狼は倒された!
チッチはスタミナを回復した。
ダメージも回復した。
なにこれ?チートじゃね?
インベントリもめ一杯で入らないのに、どうすんのよこれ。
仕方なく草原狼の死体をそのままにして、俺たちは先を急いだ。
読んでくださりありがとうございます。
それが作者のパワーとなります。
どうもです。




