◇エルフはちっさいもの好き◇
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アジャール平原へ出ると今日は山側へ向かう。
門番ががんばれよと声をかけてくれた。
俺達はそれに手を振って、進む。
山側には小さな丘がいくつもあって、草原狼やホーンラビット、電気ねずみ等が巣穴を作って生きている。
少し小高い丘に登れば、低い平原にいる俺達は丸見えだ。
俺達はたくさんの敵からの視線にさらされている。
だが、
「チッチ!索敵!」
モスラム(この人)のおかげで、ゴブリンの巣までの行程は順調だ。
今も潜んでいた草原狼をモスラムの使役獣「チッチ」が位置を探りあて、それを レオとベータで切り捨て、その死体をレイチェルと俺がそれぞれインベントリに収納している。
何故か、はりあう二人、周囲は若干引き気味だ。
「いいんですか?あれ」
レイチェルが心配してラズに言うがラズも苦笑している。
「今のうちならまだいい。モスラムの使役獣がいる。そのうち飽きるだろ」
「男なら引けない時もあるのさ」
エドがしたり顔で言う。ウンやっぱりこの人、ある意味「男版のライラさん」だ。
「とはいえ、早々にスタミナ消費されてバテられても困る。おい、お前らいい加減にしとけよ」
ラズの注意にも不満気な二人。実は馬が合うんじゃないのか?
「あ、アリサ。髪に葉っぱがついてますよ。フフ。どこ通ってきたんですか?」
こっちはこっちで、エドがいちいちうるさい。
「うふふ。わたしパイを焼いてきちゃったの。レイチェルのインベントリに入れてもらってあるから、休憩になったら、チッチ達と一緒に食べましょうね。モスラム」
「ありがとう。ユウリ。君は本当によく気がつく子だね。チッチのことまで考えてくれて…僕うれしいよ」
こっちも別の意味で煩わしい。
「ねぇねぇ。この恰好、今日でやめない?防具屋の親父に『冒険者ならコレ』って勧められたアーマーだけど、こういう所通る時に葉っぱや木の枝で足に細かな傷が出来ちゃうものねぇ」
「当たり前のように先輩達がこれ着てるからそういうものだと思っていたけど・・
思ったよりなんか使い勝手がよくないわよねぇ」
リズとマチルダは装備のハイレグアーマーに思う所があるようだ。
「そういうの作ってるのって、所詮男だしな」
カミルがぼそっと呟く。
肩をすくめるバートン少年。にゃるほど目から鱗。
今回はじめて行動を一緒にするジャスティンは寡黙な青年だ。長い槍をかついで飄々と歩いていく。身長が高い。2メートルぐらいある感じだ。
あれ?耳が…ちょっと尖ってね?ひょっとしてエルフ?エルフ混じり?
その隣をいくベイリーも身長が高く、くるっくるの茶髪の巻き毛だ。
こちらも落ち着いた物腰で背中には弓、腰には剣を装備している。
…が、よく見ればそのうしろには尻尾が生えている。
あれ?と見ればくるっくるしてる髪から三角に尖った犬耳の先端がぴょこぴょこと動いて出ている。
犬系の獣人かー。
手がわきわきしちゃうけど、初対面だし我慢しよう。
彼らは油断なく左右を見ていて、お子様達とは違う貫禄を見せつけている。
たかだか4~5歳違うだけなのに、おっとなーって感じだ。
ほぇーと見上げていたら、ジャスティンの目が動いて、俺を上から見下ろした。
「…ちっこいのがいる」
「落ち着け、彼女はもう成人してる」
ベイリーが言うと、ジャスティンの肩ががっくりと下がった。
ちっこいのって、俺のことですか…
いや、たしかにこの中で一番身長が低いですけれども!
「あっちのちっこいのは…だめか?」
チッチを指さす。
「あっちは今仕事中。邪魔しちゃだめ」
――魔物と同列ですか、俺。
ジャスティン、がっくりしてとぼとぼといった歩き方になった。
「一仕事終わったらモスラムに頼んでやるから存分に触らせてもらってこい」
「うん」
ジャスティン、にこやかな顔になってチッチを後ろからほのぼのと見守っている。
「ごめんな。気にしてた?」
ベイリーが身を屈めて俺に謝った。
今のは身長が低い事を気にしていたのか?っていう質問なのかな。
俺は身長163センチ。日本人女子としては平均より高めだがこっちでは見事に埋まった。
いや、こっちの人のが高すぎるんだって。
「エルフの子ども好きは筋金入りね」
レイチェルが俺の肩をポンポンと叩く。
気にすんなのジェスチャーかな?
よくわからんが、エルフであるジャスティンは子ども好きというか小さい物好き らしい。エルフの生態とか、あとでウィルかスミス夫人に聞いてみよう。
「君さ、時々砦の治療院にいるね?」
俺が首を傾げたのを、気にしていないと取ったらしく、ベイリーが更に話しかけてくる。
「わたしは砦のところで魔術師達といるのを見た」
ジャスティンもチッチから目を離して俺を見る。
「ああ、それぞれ魔法を教えてもらっているから」
俺が言うとみんなぎょっとした顔をした。
「すごいわ。このアジャールでは『今をときめく人々』じゃないの」
レイチェルが手を組んでうっとりと言った。
なんだそれ、芸能人みたいなものか?
「騎士団長で守備隊長のウィルハルト・リーバの家の人なんだよね?あのメイド服姿、かわいかったなー」
エドを除き、何者なんだ?みたいな空気になる。
「ええっとー」
なんと説明すればいいのだろう?苦笑いをしているとレオが割り込んできた。
「アリサは記憶喪失で兄貴に保護されたんだ。あまり突っ込んで聞いてくれるな。無理にいろいろ聞こうとすると混乱するらしいからな」
ウィルの説明丸飲みだよ。大丈夫かね?こんなにウィルに心酔してて。
「大丈夫?無理に思い出さなくてもいいよ。オレが守ってあげるからね」
…誰だ?こいつ
こんなのレオじゃねぇ。
ぞわっと来た。




