◇パーティ「剛腕の盾」狩り編◇
お気に入り登録ありがとうございます。評価も感激です。
読んでくださってありがとうございます。
作者もやる気が沸いてきています!
最近どこへ行ってもこんな話題。
「ウィルと一緒の家に住んでいるんですって?」
ウン。外では豹顔貫いてるみたいだけど、家に帰ると人の顔になってるよ。
びっくりするくらいイケメンだな。
「弟君のレオ、かわいいよね」
ウン、女殴って暴行しようとするけどな?
「クリスに治癒魔法習ってるんですって?」
ああ、教え方うまいしちょっとパトス的なものがほとばしってるみたいだけど良い人っぽいよ。
「うらやましいわ」
そう?そうでもないぞ。ほぼ男所帯だからな。中身はキャッキャウフフ的な要素はひとつもない。
「運がいいことにイイ人達に拾ってもらって幸運です」
とだけいつも、俺は言っておく。
遠くから見てる分には綺麗に見える景色だって、近くに寄れば枯れてる草はあるし虫の死骸も落ちてるし…まぁ現実ってそんなもんだろ。
俺だって完全無欠な人間じゃない、むしろ欠点の方が多い。
レオとはあんな事があったが、ウィルとクリスの前でお互い正座させらせて
「ごめんなさい」をしてお互いにわだかまりなしにしろと言われた。
一発殴らせてもらったが、レオが若干うれしそうだったのが気にかかる。
変な趣味に目覚めたんじゃないだろうな?
まぁそんなこんなで、朝早くから、今日は待ち合わせて「剛腕の盾」メンバーで、軽い狩りをする。
スミス夫人にレオのお祝いをするので肉を獲ってくるように頼まれたのだ。
町を出て、アジャールの草原を海側へ、ややいった所に沼がある。
雁やカモに似た鳥やらそれを狙う草原狼、また小型や中型の草食獣なんかが多く出る。もちろんゴブリンクラスの魔物も出没する。
だが凶暴な魔獣の一角熊やオーガクラスは出ない。
かけだし冒険者にとってはそう危険のない狩場だ。今日は鳥類を狙っているので 俺は弓を持ってきている。――鳥南蛮がまた食べたいというリクエストがあったからだ。
魔法で追尾とか照準を調節できるようになって、弓もそれなりに使えるように なった。本当に魔法って便利。
リーダーも今日は槍を持ってきている。投擲して得物を仕留めるのだ。
「みんないいか。こういう水場では思いもかけず大物と出くわす可能性がある、雑魚ばかりだと侮って油断するなよ」
「了解っス」「わかったわよ」
「剛腕の盾」は20人からなる大所帯だ。町で副業をしているものもおり、都合がつくものがその日、その日で集まる。
集まったメンバーのレベルと特性を見て、リーダーが実力にあった依頼を受けるといった形態をとっているらしい。
アジャールのギルドに登録した新人は大抵、一度はここに属する。
町の常識だったらしいが、俺はもちろんレオも知らなかった。
リーダーは、初代から数えて3代目。ぼちぼちここを卒業することを意識していて後継者育成に余念がない。
今、期待されているのが、意外にも件のナンパ男、剣と弓の使い手のベ-タである。
前衛にリーダーのラズとベータ、中堅にシーフのユウリと副リーダーのモスラム、後衛に魔法使いのレイチェルと俺、といった具合に一応陣組をする。
時々リーダーのラズはベータにしんがりをさせたり、偵察に行かせたりしている。
前の時は10人以上集まったので、今日は余裕があまりないらしい。
レベルも皆の分を足してみてもあまり余裕がない。
ベータもあまり俺にかまってこなかった。というか構ってるところをリーダーに見つかるとボコされる。
今日は冒険者というより、狩人的な意味合いが強いな。
丈の高い葦のような草をかきわけて水場につくと…いた。水鳥の群れだ。
リーダーの合図で一斉に矢を射る。
駝鳥のような大きな鳥もいて、そっちはリーダーが投げ槍でしとめる。
かなりの数を仕留めた。
沼の水深の深いところに落ちた鳥は、副リーダーが数匹のイタチのような魔物を使役してとってこさせる。
便利だなアレ。
倒した獲物は、俺とレイチェルでインベントリに詰めれるだけ詰め込んで収納する。
イタチのような魔物は、最後にリーダーの倒した、でかいダチョウのような獲物を数匹がかりでひっぱってもってこようとしていた。
ゆらり
水面がゆれた。
「何かいるぞ」
リーダーが警告の声を発した。
ベータが弓を構えた、俺もあわててそれに習う。
ぶわ
水面が盛り上がり、巨大な咢にダチョウ似た鳥と一緒に一匹のイタチのような魔物が飲み込まれた。
「チッチ!」
副リーダーが水辺まで走り寄って自分の使役している魔物を呼んだ。
「チチチチチチ」
警戒音をたて、残った小さな魔物は使役主のところへ慌てて逃げようと岸にむかって泳ぎだす。
しかし水中の影はそれを追いかけてくる。
「水場から離れろっ」
リーダーが叫び、次の瞬間
バババババッ
何かの衝撃が副リーダーを襲って彼は倒れた。
「やばい食われる!モスラムが狙われてる」
小さなチッチと呼ばれる魔物を狙うのはやめて副リーダー目指してその影は突進してくる。
ザバァ!水中から大きな口を開けて飛び出してきた。
「エアシールド!」
レイチェルが風で突進を弾き飛ばす。
「エアハンマー」
俺も魔法でその影を攻撃した。
奴は水中に身を捻ってもぐった。
水中の敵だ、炎系は使えないだろう。
何本もの矢が影にむかって放たれるが水の抵抗で威力が落ちるのか致命傷にはならない。
「モスラム!立って!逃げるのよ!」
シーフのユウリがモスラムの腕を取って泣きながら引きずっている。
あの症状は麻痺だ。ということは麻痺系の毒か・・・いやあの時の衝撃からして
「電気ショックか」
見れば、水面には大小の魚が浮いている。
「水場は危ない、離れるんだ!ユウリ!」
リーダーが命令するがユウリはモスラムから離れない。
「いやだ、いやだ。モスラム!立って!逃げよう!」
ユウリは半狂乱だ。
ザバァ
再び巨大なモンスターが水中からあがってきた。
足があるよ。アイツ、水陸いけんのか。
ぬめぬめとした身体には4本の足があり、オオサンショウウオというか、なまずに足が生えたような姿をしている。
「沼なまずか!奴の攻撃にはインターバルが必要なはずだ。陸に誘い込んで次の攻撃の前に留めをさす!」
ベータはわざと水の中に入っていき、派手な水音をたてる。
「こっちだ!化け物!」
沼なまずの小さな目がベータの姿を捕えた。
風のシールドに守られているモスラム達よりベータをターゲットにしたようだ。
陸にあがってきた事により、俺の目にヤツの内側が3D映像のように映る。
赤く、輪郭が浮かび上がってみえた、あれは…心臓と魔石の場所だ。
「眉間と前足と前足の間真ん中!!2カ所を撃て!急所だ!」
言いながら俺も弓を引く、
ヒュンッ!矢は眉間と眉間の間を貫く。狙いはよかったのだが、くそっ浅い!
「俺にまかせろっ!」
リーダーが化け物の正面に回り込んで矢をぐいっと握った。
「そいやぁぁぁぁ!」
渾身の力でおしこむ。
「はぁぁぁぁぁっ!」
掛け声をあげつつベータ―も飛び上がると怪物の背に飛び乗り、剣を下向きに突き刺す。前足と前足の間、よし!いいぞ!
「ベータ!やべぇ離れろっ」
言ったリーダー自身も慌てて、ひとのみにされそうな位置から相手の顔を殴って飛びのく。
「わ!わわわ」
緊張感のない叫び声をあげつつベータも身をはげしくくねらせる沼なまずの背の上から振り落とされるように後ろから落ちた。
なまずの側線に沿って体色が変わっていく、…やばい、なんか反撃するつもりだ。
俺達は、ほとんど本能的に葦をかき分けながら走って退いた。
「閉じろっ」
俺は叫んでいた。葦が重なりあって壁のように俺達の前に壁を作る。
しーーん
追撃がない。
構えていた俺達は顔を見合わせた。
そろそろとリーダーが動く。
落ちた時に打ったとおぼしき肩を庇いながらベータも前に進む。
俺とレイチェルはいつでも魔法を発動できるように準備をして後ろに続く。
葦にかけた魔法はとっくに解け、風にさやさやと葦が揺れる。
隙間から沼を見の方を見る、よく見えない。
剣を構えつつ、ベータに目配せをして、葦を一気にかき分け、リーダーが前に飛び出した。
戦闘音がすることを予想していた俺たちの耳にはさわさわと風に葦が揺れてたてる音しかしない。
ベータにくいくいと指で、来いと呼ばれ、俺とレイチェルも顔を見合わせて前に出る。
葦をかきわけて水辺へ進むと目の前をリーダーが両手で頭を押さえて俯いている。
暫くして、
「やったーーーーー!!!」
リーダーの雄叫びが聞こえた。
「うぉおおおおおお!」
ベータも拳をつきあげ叫んだ。
「やった!やったよリーダー!沼なまずってCランク相当だよ!」
巨大ななまずは静かに横たわっていた。
倒せたのだ。
「チッチ!」
副リーダーのモスラムが麻痺から復活してなまずに駆け寄る。
彼の周囲には麻痺から復活した数匹のイタチっぽい魔物が群れていて何か訴えるように鳴いている。
モスラムは、なまずの口からはみ出ている、リーダーの槍をとってひっぱった。
すると、ずる・・・ずると丸のみにされた大きなダチョウみたいな鳥がべとべとのまま引き出されてくる。
うぇぇぇ…
みんな酸っぱいものを見た時のような顔になる。
さらに引き出すと、チッチと呼ばれたイタチのような、魔物がぐったりとしつつ も生きたままやはりベトベトで出てくる。
「チッチ!」
モスラムはかまわずそれを抱きしめる。
それを見てみんなげんなりとしつつも感心した。
「愛だな。愛」
リーダーが言い、
「負けないわ」とユウリが呟く。
ユウリよ魔物と張り合ってどうする…。
「さぁて今のうち根こそぎよ!」
レイチェルが膝まで水につかって感電して浮かんだ魚をインベントリに収納している。
「大漁じゃー」
…たくましい子だな。黙ってればクールビューティなのに。
あわてて、脛あてをはずしたりして、みんな水に入る。
その日の狩りは「剛腕の盾」史上最も稼いだ日になった。




