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妹と死んで異世界に転生したら、妹が200歳のエルフのお姉ちゃんになっていた ~交換チートで、二度目の命を使い切る~  作者: だい


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第12話:あばよ

迫り来る灼熱の死を前に、俺が全てを諦めて目を閉じた、その時だった。


『お兄ちゃああああああん! がんばれー!』

『マコナル! がんばって!』


脳内に、はっきりと二つの声が響いた。

俺はハッと目を見開いた。


脳裏に浮かぶイメージ。

地球にいた頃の、無邪気でいつも俺を頼ってくれた十一歳の『羽奈』の笑顔。

そして、この世界で俺の肉体の本来の持ち主だった少年を愛していた、エルフの姉『ハナ』の笑顔。

二つの笑顔が、ピタリと重なり合う。


三十二歳の社畜だった俺。

子供を庇って死んだ十七歳の彼。

そして、姉を守ろうとした十二歳のマコナルの決意。

バラバラだった全ての魂が、この極限状態の中で完全に一つに結びついた。


(そうだ。俺がここで死んだら……俺が諦めたら、アイツは誰が守る!)


俺の瞳に、強い光が戻った。


ピタリ、と。

ガクガクと震えていた手足が、嘘のように静まった。

ガシャン! という無機質な金属音とともに、俺は力強く、確実な動作でRPGの次弾を装填した。


逃げない。腰が抜けているなら、立てないなら、このまま膝立ちで構えてやる。

俺は、腹の底に溜まっていた恐怖を吐き出すように、大きく一つ息を吐いた。


「フゥーッ……」


魔獣が地を蹴り、一気に距離を詰めて飛びかかってきた。

開かれた灼熱の大口から、生臭い息と炎が俺の顔面を焼く。

だが、俺はもう目を逸らさなかった。迫り来る炎の奥、その喉のど真ん中を真っ直ぐに見据える。


RPGのスコープを覗き込み、開いた口の奥へピタリと照準を合わせた。


「お前が最初から全力なら、俺は死んでた」


飛びかかってきた魔獣は、直前まで怯えきっていた獲物から放たれる、研ぎ澄まされた死の気配に気づいた。

空中で焦ったように目を剥き、「ギ……ッ!?」と喉の奥で鳴らす。

だが、もう遅い。


「余裕ぶって遊んでくれて……助かったよ」


俺は、引き金にかけた指に力を込めた。


「あばよ」


ドゴォォォンッ!!

俺が引き金を引いた瞬間、RPGからロケット弾が一直線に放たれた。

距離わずか数メートル。ロケット弾は、迫る魔獣の開いた口の奥へと真正面から吸い込まれていく。


弾頭は、魔獣の喉の奥深く、炎の袋のど真ん中で着弾した。


内側からの凄まじい大爆発。

分厚い鱗に覆われた外側からの攻撃には耐えられても、無防備な体内からの爆発に耐えられる生物など存在しない。


「ぐわぁぁぁッ!?」


至近距離での爆発に、俺はすさまじい爆風と衝撃波をもろに受け、後ろへ激しく吹き飛ばされた。

地面をゴロゴロと無様に転がり、太い巨木に背中から激突してようやく止まる。


辺りに立ち込めていた黒煙が、風に流されて晴れていく。

そこには、上半身の半分が爆散して吹き飛び、ズズン……と地響きを立てて倒れる巨大な魔獣の姿があった。


「……いってえ……。終わった、か」


全身煤だらけになりながら、俺は木に寄りかかってへたり込んだ。

現代兵器の威力の恐ろしさと、間一髪生き延びた奇跡に、俺は天を仰いで大きく息を吐き出した。


「ははっ……守れたよ」


乾いた笑いを漏らした直後だった。

絶対隠蔽で姿を隠していたハナが透明化を解き、涙目で駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん!」


ハナは勢いよく俺に飛びつき、首に腕を回して強く抱きしめてきた。

俺は豊かな胸の感触に焦りつつも、その体をしっかりと受け止めて笑った。


「おう! 大丈夫だったか」

「うん、すっごくカッコよかった!」


ハナは何度もウンウンと頷きながら、俺の顔を見つめた。

だが、彼女の視線がスッと下に落ちる。俺の下半身――ぐっしょりと濡れたズボンを見た瞬間、ハナはニッコリと大人の女性の余裕を含んだ笑みを浮かべた。


「でも、お着替えしようね〜」

「っ!」


俺は自分の失禁の事実に気づき、顔を茹でダコのように真っ赤にした。


「あ、いや、これは違うんだ! その、川に落ちた時の水がまだ残ってて……!」


地球の川の水が、異世界に転生した新しい身体に残っているわけがない。

そんなパニック状態の苦しい言い訳など意に介さず、ハナは有無を言わさず俺のズボンに手をかけてきた。


「いいのいいの! お姉ちゃんは全部わかってるから!」

「待て待て待てーい! 自分で脱げるから!」


俺は必死にズボンを押さえて抵抗したが、ハナは慈愛に満ちた(明らかにからかっている)笑顔でグイグイと迫ってくる。

二百歳のエルフの耳年増な知識と、十一歳の少女の好奇心がバグって混ざり合い、凄まじい化学反応を起こしているらしい。


「遠慮しないで! さあ、お姉ちゃんに任せて!」

「だから俺が兄ちゃんで! お前が妹だろ!」


赤面しながら必死に押し返す俺に、ハナは豊かな胸を張って言い放った。


「今は私がお姉ちゃんなの! ほら、ズボン脱いで!」

「くそっ、ポンコツエルフ姉ちゃんめ……破壊力高すぎだろ!」


倒れた巨大な魔獣の死体の前で、血なまぐさいサバイバル空間に似つかわしくない、わちゃわちゃとしたじゃれ合いが繰り広げられる。


「やめろー! 俺の三十代の尊厳が死ぬ!」

「可愛い弟のお世話をするのは、お姉ちゃんの役目ですー!」


攻防の末、ハナの大きな胸が俺の腕に当たり、俺は思わずドギマギして動きを止めてしまった。

ハナは、無邪気で、でもどこか色っぽい笑顔を俺の顔のすぐ近くで咲かせた。


「えへへ。マコ、可愛い」


その言葉と笑顔に、俺は不覚にもドキッとしてしまう。


「マコって呼ぶな! 俺はお兄ちゃんだ!」


血みどろの絶望的な魔境サバイバル。

だが、このバグった姉弟(兄妹)のロードトリップは、意外と余裕のある賑やかなものになりそうだった。

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