私は魔王さんの補佐役に任命されました(ナリア視点)
魔王さんは、本当に人間や私に心遣いがあり、やさしくて、心の温かい人。だから、魔王さんに付いていたい。そう思っていると、背の高い人間らしきお兄さんが私に近付いてきました。
だ、誰!? もしかして、私に危害を加えてこようとしているの!?
でも、お兄さんの目はやさしい。だから、私にそんな酷いことをしてくるような感じにはあまり思えない。
お兄さんは私に口を開き言いました。
「怖がらなくていい。ちょっとだけ、お嬢ちゃんに教えておきたいことがある」
「教えておきたいこと?」
「うん。あの女魔王、凄く良い奴だろ?」
「は、はい!」
「実はあの魔王な、人間のおばさんなんだ」
「えっ、お、おばさん!?」
「そうだ。俺は実際、あの女魔王から聞いたからな。あの国の国王の魔法陣に巻き込まれ、別の世界から召喚されたのが、俺とあのおばさんだ。俺は勇者に選ばれ、彼女は追い出された。それで…詳しい話は忘れたんだけど、秘密の実を食べて、殺されて、脱皮したら女魔王になったって言ってたな」
どうりで…。なんだが、あの女魔王さん、人間の感じを出していたから何となく私には伝わっていたな。
「そうなんだ! あの魔王さん、もとはおばさんなんだね」
「うん。お嬢ちゃん、あの人のカレーライス食べただろ。実はな、別世界でカレー店経営していたんだ」
「そ、そうなんだ。経営って良く分からないけど…私には」
「まぁ、この世界にいるお嬢ちゃんにはあまり、分からないだろうな。だって別世界で生活をしていた訳ではないからな。あの世界には、あの世界なりに大変なことはたくさんある。俺も大学に合格出来ず、浪人しているからな」
「大学? 浪人…?」
「あっ、ごめん、ごめん。お嬢ちゃんにはさっぱり分からないな」
笑ってごまかすお兄さん。何が、なんだか分かりませんが…。もしかしたら、この世界とは違う、世界なのかも分かりません。
すると、肩をトントンと叩かれました。クルーエルという方です。あのお兄さんとは違い、なんだか怖い目をしています。いったい、何のご要件なのでしょうか?
「魔王様がお呼びだ」
「魔王さんが…」
「魔王様だ!」
「は、はい。ごめんなさい!」
私は彼に付いていき、魔王さんのお部屋まで行きました。クルーエルが扉をコンコンコンとノックをします。
「入れ」
どうやら、魔王さんの声です。
「失礼します」
「し、失礼致します」
「魔王様、彼女、ナリアを連れて参りました」
私は、深々と魔王さんに礼をします。
「ありがとう。ナリア、私の部屋に入って机の前まで来い」
「はい」
魔王さんのお部屋に入ると、椅子に座って机に両手を組んで前かがみになっている魔王さんがいました。私はつい、緊張してしまいます。
いったい、私に何の用件があるというのでしょうか?
「私に、何のご要件がありますか?」
っと聞いた私。
すると、魔王さんは話をはじめました。
「私のこと、聞いたのか? あの勇者から」
勇者? あのお兄さんのことかしら? 多分、そうだと思う。
「は、はい。聞きました」
「もしかして、ナリアちゃんは、いやナリアは私のこと、もともと人間だと知っても別に変に思わないか?」
「そんなこと、思いません!! むしろ、私は魔王さんに助けられて良かったし、魔王さんが、もとは人間で本当に良かった。だから、私は魔王さんの役に立ちたい。役に立たせてください、よろしくお願い致します」
「そうか。良かった。まっ、緊張しないようにな」
「は、はい! あ、あの…用件はそれだけですか?」
「いや、すまない。ナリア。お前を私の補佐役に任命するために魔王部屋に呼んだ」
「ほ、補佐役?」
「そうだ…私の右腕になって欲しい」
「ま、魔王さんの右腕!? どういうことですか?」
まさか、右腕になれって…。魔王さん、いったい何を考えているのかしら!?
「この魔王軍の組織のナンバーIIになってくれたらそれで良い」
「よ、良かったです。てっきり、私、そのまま解釈してしまいました」
「な、何を思っていたんだ。お前、ナリア?」
「い、いえ。何もありません。魔王さん、いえ、魔王様、私を補佐役に任命していただいてありがとうございました。これから、あなた様の役に立てれるように頑張ります!」
「うん、お互い頑張ろう。明日からよろしくな。ナリア」
「は、はい。魔王様、こちらこそよろしくお願い致します!」
魔王様と握手しました。魔王様の手は人間の感触があってとても温かいです。
私は誓いました。これからはこの方のために頑張ることを!




