21蹴 BUPPA!
俺は、侮るのをやめた。以前では、調子に乗って手を抜くところも、全力でぶつかった。
試合に勝って勝負に負けた、準決勝。負けたのは、俺だけだった。小学生だからと甘く見ていた。組織力をバカにしていた。
準決勝の相手は、キャッスル羽咋。SC実川と対戦し、圧倒。3-0で勝利している。だが、本気を出した俺の、俺たちの底力の前には、なすすべなく崩れ去った。キックオフと同時に一気にゴールまで駆け抜け、前半5分、俺の1点目。プレー再開直後、武内のタックルでボール奪取、そのままFW3人でゴールまで駆け上がり、前半7分、前川が得点。その後は引き締まった雰囲気になった羽咋。ゴール間際まで駆け上がるも、土本にボールを奪われる。俊足を生かして前半20分、土本が得点。その後も得点を重ね、前半で5対0であった。
準々決勝で目が覚めた。俺は何も見えていなかったのだ。自分しかみていないのに、ボールが守れるわけがないのである。
後半、羽咋は満身創痍であった。結果的に33-4、というのは嘘だが(なんでや!阪神関係ないやろ!)13-0という結果に終わった。俺の成長はというと、以前より仲間に気を遣うようになったからか、フィールドの把握がしやすくなった。以前はできていたのだ。だが、できなくなっていた。見えなくなっていた。それが戻った。変わったのはそれだけではない。相手の移動を予測し、その行動を基に自らの動きを修正する。例えるなら、常に最適化した解を求めるスパコンのような、いやスパコンは古い。常に最適化した解を追い続けるAIのようなプレイングが身についた。相手はチームとしてもそうだし、味方についてもそうだ。さらに、それによって自らのフェイントテクニックも向上した。それだけではない。天候や調子を含め、選手達の試合の動きから、勝率の計算までできるのだ。これで完璧、というわけではない。足りないものは多い。まだまだ俺は成長する。その可能性を見つけ出せるようになったのだ。伸びしろがわからない状態で、努力を続けられる人間はいないだろう。明確に伸びしろがまだあることを理解できたのであれば、人間は何でもできると思う。うーん、このままいくと悟りも開けんじゃね?そうでもないか。
俺は、準々決勝で死んだのである。そして、めちゃくちゃに踏みつけられた。伸び続けていた鼻を明かされ、おられたのである。そして、成長してよみがえったのである。開会式にあった不安は、この死のことだったのかもしれない。とりあえず、俺は一皮むけたのである。これで、俺が負けることは、もうない。
チームメイトという武器を、仲間を、俺は信用できるようになったし、それと同時に本心から信用してもらえるようになった。これまでは俺の腕前、というか足前?足技を認めてはいたものの、仲間として受け入れられてはいなかったのだ。あいつは見下している、そう皆思っていたのかもしれない。
準々決勝が終わった後、チームメイトからおもいっきりビンタされた。今更なんだ、お前らしくない。ということだった。心から、こいつらのチームでよかったと、思えた。言葉なんか必要ないくらいに。
迎えた決勝の相手は、フィールドの魔術師、田川雄太率いるFC登別だった。このチームは全試合僅差ながら、無失点で勝利している。対戦チームのシュートの本数も極端に少ない。要するに、ディフェンスラインが突破できなかった、ということだ。カテナチオと呼ばれるサッカーを基にした、徹底した守備サッカー。田川という得点源がいることによって得点、その1点を全力で守り抜く、というプレイングである。新聞やメディアにも面白いように取り上げられていた。
【カテナチオサッカーVSカウンターサッカー】
【俊足と堅守、これが現代の矛盾対決】
【ファンタジスタ藤とマジシャン田川の一騎討ち】
【天才対決!】
「初めましてこんにちは、全日本少年サッカー選手権、決勝の模様をお送りします。いくつものドラマを作り上げたこの大会も、最終戦を残すのみとなりました。実況は、私阿川光弘、解説は元日本代表監督、広島寛太さんでお送りします。広島さん、もう決勝戦になってしまいましたが、今回の大会を振り返って、いかがですか」
「そうですねぇー、えっと、やはり全国大会ということで、地区予選を勝ち上がってきただけの実力校同士のぶつかり合いは、見ていてとても興奮しました」
「そうですかー、決勝戦、見どころはどこでしょうか?」
「あの、やはりドイツ留学していた藤君の実力が、おそらく今回の試合ですべて明らかになる、と思います。田川君もそうですね。これまでの試合はこのための調整のように見えましたし。実際田川君、藤君がいなかったとしても、この二チームの対戦になっていた可能性は高いですねー」
「なるほどーそうですよね。藤尊くんはサッカーを学ぶためにドイツに行き、日本で言う高校に相当するギムナジウムに在籍。ギムナジウムというのは、日本で言うところの中高一貫の、大学進学を目指すものですので、彼の学力の高さが伺えます」
「そうですねー。あの年でドイツ生活ですから。言語は幼いころに覚えるほうが、素人なので実際分かりませんが、身に付きやすいのでしょうね。一方の田川君、ずっと日本にいたので、何かとその点で藤君と比べられることが多いですが、彼も頭脳明晰でしょうね。そろばんの全国大会でも初出場の時に決勝戦まで勝ち上がったとか。今では優勝常連のようですから、計算速度は目を見張るものがあるでしょう」
「ということは広島さぁん、どちらの頭が上か、雌雄を決するときが今やっと来た、そう言ったところでしょうか。」
「そういうことになるでしょうね。もちろんチームとしての戦力も注目です。シミズジュニアは俊足を生かした攻めで、他を寄せ付けない圧倒的な強さを見せつけてきました。一方のFC登別。得点は少ないですが、ディフェンスラインがあまり下がらない。一点取れば攻め過ぎず、慎重にボールを動かす、そんなサッカーが魅力です」
「そうですかー。広島さんはどちらのチームが勝つと思いますか?」
「うーん、難しい質問だね。個人的には攻撃的サッカーが好きだから、シミズびいきかな?どちらのチームも特筆するべき選手がたくさんいますし、予想できないなぁ」
「なるほどー。おっと、もうすぐ試合が始まりそうです。さあ、全日本少年サッカー選手権大会、勝利の女神はどちらに微笑むのか!今、キックオフです!」
ピィー!!!




