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中間試験1

【第一章:おいおいどうするよ!? 試験前夜のパニックと、尊すぎるお勉強会】






千草中学校の中間試験を翌日に控えた夜。




アニマル特区の寄宿舎は、未曾有のパニックに包まれていた。




「おいおいおいどうするよコレ!? 聞いたか、明日は『人間基準』の筆記試験らしいぞ、キャンキャン!」




特攻服を着たポメラニアンのレオが、廊下を激しく往復しながら吠え散らかしている。




「フッ……焦るな仔犬。俺たちの野生のパルスを記述用紙キャンバスにぶつけるだけだ」




ニヒルなリスのジンが、どんぐりを片手で弄びながら壁に寄りかかるが、そのどんぐりを持つ手はプルプルと震えていた。




「ヤダァ! 計算問題なんて出たらあたいの脳細胞がストレスで老けちゃうわ、ウホッ」




おねぇゴリラが胸板を叩いて絶望し、垂れ耳白猫のタケシは「フッ、漢(猫)は直感のみで生きる……(もう勉強諦めて寝るニャ)」と、試験前日だというのに早々に開き直って丸くなっていた。




――そんなアニマルたちの地獄絵図とは裏腹に、アオイの部屋では、世界で一番優しくて尊い「お勉強会」が開催されていた。




「うぅ……ユズちゃん、この数式、何度見ても記号にしか見えないよぉ〜」




お揃いの可愛いパジャマ姿の3人組。




元気いっぱいなハズのアオイが、完全に脳がオーバーヒートして、隣に座る眼鏡っ子のユズの肩に「すりすり」と頭を預けて甘え始めた。




「ちょ、ちょっとアオイ、密着しないで! 密着係数が高すぎて私の計算式が狂うじゃないの……!」




ユズは顔を真っ跨にしてツンツンと怒るが、拒否するわけでもなく、アオイのポニーテールが解けたサラサラの髪を優しく撫でてあげる。




「ふふ、二人とも、夜食のミニいちごパンが焼き上がったよぉ〜。あーんして?」




おっとりとしたコトネが、エプロン姿で焼き立ての甘いパンを二人の口元に運ぶ。




アオイとユズが「モグモグ……ん〜、美味しい!」と顔を見合わせて破顔すると、3人はベッドの上でお互いのパジャマの柄を褒め合いながら、キャッキャウフフと幸せそうに笑い合うのだった。




勉強の進み具合はともかく、そこは完全なる桃源郷ユートピアだった。






【第二章:試験開始! 熱唱する試験官と、斜め上の苦悩】






翌朝、アニマル特区の講堂。




教壇に現れたのは、今回の新キャラである試験官の羊ひつじ、通称:メリーだった。




メリーはなぜかマイクスタンドを握りしめ、試験開始のチャイムと同時に、グラサンを光らせてソウルフルに大熱唱を始めた。




「さあ野郎ども試験開始だァ! 『高ければ高い壁の方がァ! 登った時きもちいいぞォォ!!』」




「試験中にMr.Childrenを歌うなァァーーーッ!集中できねえだろコラ、キャンキャン!」




子犬のレオのツッコミが響く中、アニマル特区独自の【全5項目の過酷な試験】が始まった。






第1項目:『アニマル常識』




「アニマルとしての生き様を答えよ」という基本問題。




ヤンキー子犬のレオは、記述欄に『肉をよこせコラ!噛み千切るぞ!』と吠えながら激しく爪痕を残す。




しかし、煙が目に染みて「クシュンッ!」とくしゃみをした拍子にペンを落とし、試験官に「静かにしなさい」と睨まれて「くぅぅん……(すいません)」と一瞬で硬直。




プライドの高いチーターのハヤテは、「フッ、風の匂いを感じ、ただ走る。それだけだ」と書こうとするが、窓の外を舞う一本の落ち葉が気になり、本能で「シャッ!」と飛びついて記述用紙をズタズタに引き裂いて自爆した。






第2項目:『人間常識』




「人間の社会ルールを理解せよ」という難関項目。




ここで天才ニワトリのアインシュタイン(魔術師ヤン)の、IQ500の脳細胞がオーバードライブする。




お題は『信号機が赤の時はどうするか』という簡単な一般常識。




しかし、魔術師ヤンは「フッ、人間の常識などこの程度か。裏をかいてこれくらい難しく計算せねば、奴らの高度な社会を記述できんコケ」と勝手に深読みを開始した。




「コケッ(赤信号とは、可視光線における波長約700ナノメートルの電磁波。すなわち、アニマル特区における空間曲率と、ハヤテの最大時速120キロから導き出されるアインシュタイン方程式の相対性理論的エネルギー運動量テンソルにより――)」




羽でペンが滑る物理的限界と戦いながら、人間の常識を勝手に超難解な数式へ変換していくアインシュタイン。




焦れば焦るほど、彼の脳細胞の『3歩の猶予メモリ』がジリジリと削られていく。




すでにその場で2歩動いている! あと1歩、わずか1歩でも足を動かせば、この高度な数式がすべて脳内から消え去ってしまうのだ。




歩いて教壇に行けば3歩目で忘れる。




「コ、コケッ……(ならば、声のトーンと回数でこの相対性理論を暗号化して伝えるか!? いや、鳥類の鳴き声では1か0のバイナリデータしか送れん!)」




ならば、残された道は肉体言語ジェスチャーのみ。




「そうだ、隣のタケシの奴がいつもやっているマッスルポーズの角度で、三次元的な関数の解を表現――コケェェエエッ!! まだだ、この程度の試練、我が智謀で乗り越えて見せる……!!)」




彼はその場で1歩も動かないまま、ぐっと下腹部に力を込め、全身の羽を逆立てて顔を真っ赤にした。




そして、翼をパタパタさせながら全力で「知性派マッスル・ジェスチャー」を試験官のメリーに突き出した。




「コケェェェエエエエーーーッ!!!(これが赤信号の答えだァァァ!!!)」




しかし、ただのニワトリがその場で羽をバタつかせて顔を真っ赤にしている姿は、どう見ても「ただただ、ものすごく必死に力んで卵を産み落とそうとしているニワトリ」にしか見えなかった。




足元では、前回の運動会で生まれた愛弟子のひよこ、ユリアンが「ピヨピヨ〜?(パパンがんばれのら〜)」と無邪気にダンスを応援しているだけだった。






第3項目:『己の種族の誇り』




「己のアイデンティティを証明せよ」という魂の項目。




マッチョ猫のタケシは、構造的にペンが握れず、記述用紙にガリガリと爪痕を刻み込んでいた。




『我が筋肉バルクの軌跡、これすなわち歴史の答えニャ。垂れ耳とタプタプの腹こそが至高ニャ』




大真面目に斜め上の肉体思想を記述(物損)しているが、採点上はただの器物破損、文句なしの0点である。






第4項目:『不測の事態への対応力』




「アクシデントを乗り越えよ」という項目。




ホタテ貝の高倉くんは、殻をピチッと完全に閉じたまま微動だにしない。




水中にじわっと滲み出る【自分、不器用ですから……(対応できません)】の文字。




ヤドカリの宿無し庵は、「この解答用紙の余白のデザインは私のQOL(生活の質)を損なう」と贅沢なえり好みを始め、制限時間をまるごとドブに捨てていた。






第5項目:『未来へのビジョン』




最後の自由記述。




でっぷりカバ3兄弟(ジェット、ストーム、アクト)が、ここで陸上と水中のリベンジとばかりに立ち上がった。




「「「ジェットストリームアタックだ!!!(トコトコトコトコ!!!)」」」




3匹でお互いのでっぷりしたお尻と頭をギチギチに密着させたまま、3人がかりで1つのマークシートを塗るという共同作業ビジョンに出た。




しかし、カバの太い足では繊浅なマークシートなど塗れるわけがない。




インクがはみ出しすぎて、マークシート全体が「ただの真っ黒な巨大イモムシ」のようになり、読み取り機が爆発して強制失格となった。




みんなが斜め上の間違いと苦悩を突っ走り、阿鼻叫喚のパニックに悶える中。




中央の席に座るレインボーカタツムリのゲイリーだけは、一切動じなかった。




ゲイリーは最初からペンなど見向きもしない。




不条理な人間のルールに合わせる必要などない。




彼はただ静かに、己の「生態」を信じて、その時を待っていた。


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