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アニマルもいる運動会 3話

【第六章:おねぇゴリラと爆音ヒグマ、治安が大渋滞の応援合戦!】



午後一番のスタートを告げるのは、両チームによる『応援合戦』。



白組のアニマル連合の応援エリアから、凄まじい地響きと共に野太い(?)声が響き渡った。



「おい、お前ら気合入れろオラァ! 歯を食いしばれ、キャンキャン!!」



ヤンキーに憧れて悪ぶる野生のプロ(子犬)、特攻服を羽織ったポメラニアンのレオが朝礼台の上で激しく吠え散らかす。



その後ろでは、胸板が軽自動車サイズのゴリラ界の喧嘩師が、チアのポンポンを両手に持ってしなやかに腰をくねらせていた。



「ちょっとぉ! アンタたちダラダラしないのっ! ウホッ 笑顔が足りないわよ、ウホッ」



素手でドラム缶を雑巾のように握り潰す圧倒的女子力(物理)の持ち主、ピンクのエプロンを外しチア衣装に身を包んだ『フローラねぇ』である。


見た目は世紀末の覇者なのに、心は完全な乙女。無駄にキレのあるステップでお尻をフリフリしている。



さらに、その横にそびえ立つ3メートルのヒグマが、拡声器なしで雄叫びを上げた。



「うおおおおおーーん!!!(自分、非力っすけど応援だけは頑張るっすーーー!!!)」



グラウンドの窓ガラスが割れんばかりに震える爆音だが、当の本人は自分の声のデカさにビックリして「きゃっ」と内股になり、フローラねぇの後ろに隠れてモジモジ。これぞ特区アニマルたちのハイスペックな不条理狂気空間だった。



対する紅組、アオイたち3人組の応援がスタートした。


3人はお揃いのミニスカートチア衣装。ピンクと白のポンポンを持って、トラックの真ん中に駆け出す。



「フレー! フレー! 白組も、紅組も、みんなみんな頑張れー!」



アオイがポニーテールを弾ませて元気にジャンプ。王道トップアイドルの輝きがグラウンドを包み、周囲を一瞬で【笑顔】に変えていく。


コトネのハチマキの結び目の上では、ひよこのユリアンも一緒に小さな羽をパタパタさせている。



「ふふ、みんな怪我しないようにね〜、えいっ❤️」



コトネがちょっと照れながら、14歳中学生ならではの健康的な眩しさでウインクをしてポンポンを振る。


普段は控えめで優しい彼女から溢れ出る圧倒的な【聖母の癒やし】に、グラウンド全体の精神が優しく浄化されていく。



「ちょっと、二人とも可愛さにステータスを振りすぎよ……」



ユズが顔を真っ赤にし、恥ずかしいダンスに耐えながらも完璧なラインダンスのステップを披露。


しかし、その冷静沈着な眼鏡っ子としてのギャップと完璧な美貌は、特別な演出なしで、周囲の男子生徒や観客たちを「ユズ様尊い……!」と両手を合わせる【狂信者・崇拝者】へと変貌させていた。



その足元では、ゲイリーが3人のダンスのテンポに合わせて殻をネオンブルーへと美しくシンクロ発光させ、最高のイルミネーション演出を施していた。



「「「せーのっ、ファイトー!!」」」



3人がお互いの腕を組んで、最後にキュッとポーズを決めると、グラウンド全体が「うわあああ! 尊すぎる!!」と割れんばかりの歓声に包まれた。



結果は三人娘の圧倒的勝利。


アオイが「やったね!」とコトネとユズの首に抱きつき、3人がチア衣装のままキャッキャウフフと身を寄せ合う姿は、もはやそれ自体が本日最大のボーナスステージだった。





【第七章:自爆するハリボテ騎馬戦と、空中腕組みサルの謎オーラ】



プログラム第9種目、全校大注目の一騎打ち『大騎馬戦』で、両チームのボルテージは最高潮に達する。



紅組:3人組騎馬


おっとり天然なコトネが一番下で健気に支え、冷静なユズが「荷重移動を計算しなさい!」とアオイの腰を支え、一番小柄なアオイが上に乗る。



「わあ、高い! ユズちゃんしっかり支えてー!」



「ちょっとアオイ、動かないでくくすぐったいわね!」



「ふふ、アオイちゃんがんばれ〜」



3人が体操服でこれでもかと密着しながらワーキャーと大騒ぎ。グラウンドに極上の癒やし空間が形成される。



対する白組:アニマル連合騎馬


土台はゾウ、おねぇゴリラのフローラねぇ、ヒグマの「ごついデカい強そう非力衆」。


中層にレインボーカタツムリのゲイリー、子犬のレオ、猫のタケシ。


そして最上層には――がっしりと腕を組んだまま、静かに戦場を見下ろしている後方腕組師匠面のサル、『源さん』。



『ピーーーッ!!!』


開始のホイッスルが響き渡る。



「いくよ、二人とも! 突撃ーー!」



アオイのかけ声と共に、3人組の騎馬が突き進む。3人はお互いの体に密着し、ハチマキをなびかせながらキャッキャと悲鳴を上げる。



対するアニマル連合。


突っ込んでくる三人娘の圧倒的な癒やしオーラの前に、最下層の非力衆が完全にビビった。



「ヤダァ! 突っ込んでくるわよ怖ーーい!」


とフローラねぇが内股でヨロめき、



「自分、無理っすーー!」


とヒグマがゾウの足元にうずくまる。



中層のレオとタケシもバランスを崩し、巨大なアニマル城塞は、接触する前に自らのポンコツさで自爆するようにガシャーンと崩壊してしまった。特区アニマルたちのハイスペックな不条理ギャグの極みである。



最上層にいた師匠面サルの源さんは、そのまま空中へ放り出された。


しかしそこはレジェンド。源さんは空中でもがっしりと腕を組んだまま、スローモーションのようにゆっくりと落下していく。



その渋い目は、自分の横をすり抜けていく3人組を見つめ、



(ふっ、あいつらのいちご大福への執念……見事だ、成長したな……)



と言いたげに深く、うんうんと頷き、そのまま猫のタケシのタプタプのお腹の上にフカッと着地した。完璧なドヤ顔である。



――スパァァァン!!!



「痛いコケッ!?(※サルです)」



「浮いてる間もお茶の一杯すら淹れてねぇなこのサボりザル。さっさと片付けろ」



いつの間にか背後にいたボル(インコ)の処刑ハリセンが炸裂。源さんはタケシのお腹の上で白目を剥いて沈んでいった。


何はともあれ、紅組3人組チームの大勝利である。





【第八章:ラスト1ミリのデコピン狙撃と、夕暮れのハッピーエンド】



そして迎えた最終種目、彼女たちの本命『トリオ・ザ・障害物競争』。



3人は見見事な連携を見せ、ネットくぐりを突破。コースの難所である「カバ3姉妹(ジェット、ストーム、アクト)」の超重量級ブロックエリアも、コトネの「大根の葉っぱ誘導」でロスなくクリアした。


かつて水泳大会でわずか1メートル垂直沈没自滅した前科を持つカバ3姉妹は、大根の葉っぱに釣られて華麗にコースを開けたのだった。



しかしラストの直線、強風の送風機エリアに行く手を阻まれる。


向かい風に押し戻されそうになり、3人の足が鈍る。



その時、応援席のひな壇のてっぺんから「カツン」と音がした。


ニヒルなリスのジンが、手の中で弄んでいたどんぐりを、正確無比なコントロールでデコピンのように弾き飛ばしたのだ。



放たれたどんぐりは、送風機のスイッチに見事命中。カチリと音がして風が止まった。


ジンは再びフッ……と不敵に笑うと、ぷいっと後ろを向いて茂みに消えていった。



「風が止まった! 行こう!」



チャンスを逃さず、3人は一列になって全力で足を伸ばした。



『ゴールイン!!』



実況の声が響き渡り、アオイ、ユズ、コトネの3人は見事1位でテープを切った。



夕暮れ時。


3人は念願の『幻の極上生チョコいちご大福』を購買部のベンチで広げていた。



「ん〜〜っ! 美味しい! 頑張ってよかったぁ!」



アオイが頬を落としそうな顔で大福を頬張る。王道アイドルの笑顔が夕日に輝く。



「本当に、口の中でとろけるね……ユズちゃん、あーん」



コトネがおっとりとした聖母の笑顔で、自分の大福をユズの口元に「あーん」と差し出す。



ユズは顔を真っ赤にしながらも、演出なしで狂信者に変貌したかのように「も、もう、自分で食べられるわよ……ん、美味しい……」と、幸せそうに目を細めた。


そんな尊すぎる2人の様子を、ユズはすかさずスマホのカメラでパシャパシャと連写し、3人で写真を見てはまたキャッキャと笑い合った。極上の百合癒やし空間がそこにあった。



ふと影が差し込んで見上げると、そこには戦いを終えたアニマル連合の面々が、ぞろぞろと集まってきていた。

アニマル界の魔術師ニワトリやフローラねぇたちの後ろから、ニヤリと笑うアニマルたち。


「クェェーーーッ(飯だァァ!)」


ダチョウのオトシがリンゴに突進し、チーターのハヤテも「有給の後の飯は最高だな」と猫のようにおねだり。マッチョ猫のタケシは、ユズの足元にモチモチのタプタプ体をすり寄せている。


「今日だけは特別によしよししてあげるわ」

ユズが顔を赤くして照れながらタケシの顎の下を優しく撫でると、タケシは「ニャウ〜ン」と幸せそうに地面に寝転がった。


アオイがハヤテをぎゅーっと愛おしそうに抱きしめながら、弾むような声を上げる。


「あはは! 本当にみんな面白いね! すっごく楽しかった!」

「ええ。こんなに賑やかで楽しい運動会は初めてよ」

ユズもハチマキを解き、いつもの冷静な表情の裏に、優しい笑顔を滲ませた。


「うん、またみんなで一緒に遊ぼうね!」

コトネがおっとりと微笑むと、アニマルたちもそれぞれの鳴き声で、嬉しそうに賛同の声を上げた。


しかし、そんな温かい癒やしの輪の端っこで、レインボーカタツムリのゲイリーだけは、悔しそうに殻をバチバチと赤紫に発光させていた。ゲイリーは3人娘をギロリと睨みつけると、夕日に染まるプールをヌルヌルとした触角で指差した。


その瞬間、夕日の赤がプールの水面に反射してワインレッドに染まり、ゲイリーの背後に無駄にハードボイルドで重厚なオーラが立ち上る。ゲイリーは静かに殻のネオンを消し、夜の気配を纏いながらプールを見つめた。


「フッ……我がボスのゲイリー様が言っている。陸上では不覚を取ったが、次なる勝負……水泳大会アクア・ストリートこそが真のストリートだとな!」


裏での気づかいを忘れない精神論ポエム担当のゲイリーに代わり、通訳のアニマルが不敵に笑う。


「へえ、水泳大会! 面白そうじゃん、受けて立つよ!」

アオイが笑顔で拳を突き出すと、ゲイリーは「まだだ、まだ負けちゃいねえ!」と言いたげに殻をギラギラと1600万色のネオンへと輝かせ、次なるリベンジへの決意を固めるのだった。

(なお、このセリフの裏で、白組のテントにいたカバ3姉妹が『次こそは垂直沈没しない……!』と陸上リベンジの血眼モードに入ったのはまた別の話である)


最後に、校庭の隅の木の上で、後方腕組師匠面のサル、源さんがゆっくりと深呼吸をしていた。

源さんは空中お仕置きのダメージを感じさせないガッシロとした腕組みのまま、夕日に向かうかのような渋い目で楽しそうな3人とアニマルたちを見つめ、


(ふっ、あいつらも成長したな……)


とでも言いたげな顔で、何もしていないのにお茶すら淹れずに、深く、深く、うんうんと満足そうに頷いていたのだった。







◇ 次回 水泳大会


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