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球技大会1

それは、あの熱狂的なライブ会場に辿り着くよりも、もっと前の話。3人娘がまだ学校のステージで輝いていた、とある『文化祭』の日の裏側である。



 人を信じることを諦め、心に分厚い鍵をかけていたペンギンのペンタ。彼の冷めた世界を強引に塗り替えたのが、あの3人娘の笑顔全開のステージだった。


「自分のようなつらい経験は、他の誰にもさせたくない。彼女たちの前では楽しそうな姿だけを全力で貫いてやろう」


 そんなペンタの熱い誓いに呼応するように、その日、ひとつの『奇跡』が生まれる。日の光を浴びて、七色のプリズムのように異常な輝きを放つ『殻』を持ったカタツムリが、窓ガラスを這い上がってきた。


 固有スキル【奇跡の出会い】が発動。ネームドキャラクター:『レインボーゲイリー』の降臨である。


 カタツムリの姿をしていながら、その眼光はストイックで孤高。


現実で見つけられないなら、俺たちの手で最高のステージを作ればいい。趣味と可愛いものが好きという共通点だけで結ばれた、種族を超えた奇跡の仲間

。これが、のちに魂を抜かれたヘタレ3人組をさらなる高みへと導くことになる、最強の先駆者アニキたちの伝説の始まりだった。


 そして時は流れ、舞台はクラス対抗の『球技大会・野球編』のメンバー集めへと移る。



「アニマル特区の雑用っぽい仕事でもやれば、3人娘の近くにいられるんじゃ……?」

 そう思い立ったヘタレ3人組は、特区の掲示板に貼られた求人票を握りしめ、雇用主であるハゲタカの『キンマ』の元へと向かった。



 しかし、ここから悪夢の「昭和ブラック」が牙を剥く。


 最初に約束した時間になっても、ボスのハゲタカは現れない。


ハゲタカのキンマが威張り散らしながら遅れて現れたのは、約束から20分も過ぎた頃だった


。相手を20分も平気で待たせるなど、その時点で労働者を見下している

。ヘタレ3人組は、こういう「搾取される側の嗅覚センサー」だけは人一倍備わっていたため、一瞬で不穏な空気を察知した。



「えー、仕事内容だけどな、実質スタートは選手たちが誰一人として来ない『2時間前』からな。日中は裏方作業だけだから、選手と近づくなんてまず無理だぞ。で、仕事の終了は、片付けが終わってからな! あ、求人票に書いてある最初の労働時間はあくまで基本だから。うちじゃあ早朝出勤と残業は当たり前。当然だよね?」


 それだけで十分あり得ない条件なのだが、ハゲタカの横暴はさらに加速する。


キンマはヘタレ3人組の姿を頭からつま先までジロジロと不躾に見つめると、鼻で笑いながら著しい侮辱の言葉を投げつけてきた。



「っていうかさぁ、君ら3人、ちょっと仕事する見た目じゃないよね? 剛くん、太ってるし。そっちの中二病くんは包帯とか巻いていかにも怪我してそうだしさぁ。あとそこの眼鏡くん、神経質そうな顔してるけど大丈夫?」


 令和の今じゃ完全に一発アウトな恐恐喝戦術。


ヘタレ3人組はあまりの理不尽さと精神的ハラスメントにピキーンと脳を焼かれ、怒りとショックで固まってしまう。


 しかし、そこで彼らは大人の、最高にシブい対応を見せた


。グッと怒りを堪え、冷ややかな大人の笑顔を浮かべて、静かに言い放ったのだ。


「……一旦、笑顔でお話を聞かせてくれてありがとうございました」


 それだけを言い残し、3人はハゲタカの部屋からスタスタと出て行った。


 とはいえ、胸の奥にはドス黒いモヤモヤが強烈に残る。まっとうに準備をして、本気で向き合おうとしたのに、なぜあんな理不尽な暴言をぶつけられなければならないのか。


「焦るな! よく考えろ!」


 廊下で悔しさに震える彼らの前に、ペンギンの『ペンタ』がパタパタと立ちはだかった!


「おい、僕たちの最終目標はなんだ? 3人娘との交流だろ! 自分を知ってもらう努力をするべきだろ!」

 熱くヘタレたちを鼓舞するペンタ。4匹で再び悩み始めた、その時だった。



 背後から、まばゆい七色の光が差し込む。3人娘のチームの監督を務める、あの孤高の男がそこに佇んでいた。


「フッ、何か困っているのか?」



 圧倒的イケメン指揮官『レインボーゲイリー』の合流である。ゲイリーはペンタたちから、ハゲタカのキンマによる滅茶苦茶な条件と暴言の経緯を静かに聞き届けた。



「キンマの奴、相変わらず凄いあり得ないことをやっているな……。元々、何となくそんなブラックな気質であるとは思っていたが。……まあいい」



 ゲイリー監督はフッと殻を傾け、不敵にニヤリと笑った。



「丁度いい。人間側(3人娘)の対抗チームとして、人間側も3人メンバーを増やしてはどうか、という案が上層部で出ていたところだ。お前たちにそのやる気があるなら、今からメリー先生の所に行って確認を取るが、どうする?」


 あんなハゲタカの奴隷雑用バイトではなく、3人娘と正々堂々と同じフィールドで戦い、名前を知ってもらえる最高の『公式参加券まっとうなポジション』。


絶望のどん底から差し込んだあまりにも眩しい救いの光に、ヘタレ3人組とペンタの魂が激しく震えた。4匹は一斉に直立不動の姿勢をとり、涙目を輝かせながら叫んだ。




「「「「あにきーーーーーーーーーーー!!」」」」



 そこからのヘタレ3人組は凄かった。


 ハゲタカのキンマに容姿を侮辱された屈辱を原動力に変え、ゲイリー監督の課す地獄の特訓を泥だらけになりながら耐え抜いたのだ。


すべては3人娘に自分たちのまっとうな名前を知ってもらうため、そして同じフィールドで輝くため――。



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