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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第五章   倒された運命のドミノの中で
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048 ~大切な友の為に~

 ラニーニャの祖父からは思いも寄らない返答があったがアルトはミラへ向かう事となった。

 そう、大切な友の為に。

 そして、大切なラニーニャの為に……。

「うさ爺はどうするんですか?」

「申し訳ないが、儂は残る」

 ラニーニャの祖父は意外な決断を下した。

 えっ!? 先輩のお爺様、どうして……?

 アルトは彼の決断を信じられなかった。

 しかも彼は適当な理由をつけここに残る決断を崩さなかったのだ。

 アルトはそれに違和感を覚えつつも黙認する事にした。

 それは何か深い意味があるからだとアルトは考えたからである。

「そうなのよ……。運ぶのに力はいるし、意外と大変なワケよん♪」

 そして、白い虎の精霊はしをらしく両耳を下した。

「で、運ぶって、どうやって僕達を運んでくれるんだい?」

 その態度にイラっとしたアルトは意地悪く聞いたが、

「そうねぇ……船とかどう?」

と、答えた白い虎の精霊からは可愛らしく首を右に傾けられた。

「はっ!? 船? そんな物で行ったらどれだけ時間がかかると思ってるんだい?」

「そうねぇ……一時間かねぇ?」

「冗談もほどほどにしなよ! どう考えても行ける訳ないだろう!!」

「それが出来ちゃうのが俺様なのよねぇ、お坊ちゃん♪」

 白い虎の精霊を小馬鹿にしたが同じ態度を返され、激怒したアルトの眉間には深いしわが出来た。

 だが、白い虎の精霊はゴロゴロと喉を鳴らし胸を張ったのである。

 ちなみにアルトの屋敷から宝珠の国までは大型船で六時間程かかる。

 勿論、アルトが所有する船ではそれ以上かかってしまう。

 なのでアルトが言う事は最もなのだ。

「君の言う事は信じられないね!!」

 それを知っているアルトの眉間のしわはさらに増えた。

「アルト、信じられないかもしれないけど本当なんだ。

 ヘルのおかげで俺は宝珠の国から数分でここまで来れたんだ」

 そんなアルトはケレスから宥められる。

「そうだよね~♪ 僕ちゃんの方が話がわかるねぇ!

 さあ、わからず屋のお坊ちゃんはさっさと船を用意しなさいな。

 それとも……口だけで船を用意出来ないのかい? 龍宮家なのに?」

 しかも三白眼になった白い虎の精霊からは見下されたのだ。

「船ぐらいすぐに用意出来るさ!! 僕を誰だと思ってるのかい?」

 アルトは白い虎の精霊のその目にイラっとしたが逆に見下す様に言った。

「まあ、嘘か本当か、この後わかるさ♪」

「ははっ。精々楽しみにしときなさいな♪」

 そして、アルトが髪をかき上げながらふっと笑うと、

白い虎の精霊からは尻尾を優雅に横に振りながら右目でウィンクされた。

「お待たせいたしました!」

 そんなやり取りをしているとメイサがラニーニャと歩いて来た。

 だが、ラニーニャはメイサにより着物を着せられた様だった。

 そう、鬢を少しだけ出しているラニーニャの髪はアップになっており、

サイドから編み込みながら一つにまとめられてそれが、くるっと巻かれていた。

 さらにその巻いた部分には薄桃色の簪が刺されていたのである。

 そして、青みが買った白色の着物を着ており、その袖にはクリーム色の停め具が付いていた。

 その停め具には勿論、金色の龍宮家の家紋が入っている。

 これが意味する所は龍宮家がラニーニャを命に代えても守るという事だった。

 婆や……ありがとう!

 アルトの顔は綻んだ。

「婆や……。結構、張り切ったんだね」

 だが、化粧をまでもしたラニーニャの美しい姿に頬が赤くなったアルトの声は小さくなった。

「当然です! しかし、もう少し時間があれば宜しかったのですが……」

 すると、悔しいのかメイサは眉間を右手で握る様に抑え、俯いたが、

「とてもお似合いですよ?」

と、気を取り直したメイサが穏やかな顔でラニーニャを見つめながら言うと、

ラニーニャは頬を少し赤くして何かを言いたそうにメイサを見つめた。

「礼等、無用です。それより、しっかりやり遂げてきなさい」

 それからラニーニャをしっかりと見つめた凛々しい顔のメイサが頷くと、

ラニーニャも頷きアルト達の所へ歩いて来た。

「姉ちゃん。兄貴の事、頼む!」

 そのラニーニャにケレスが視線を合わせてそう言うと、ラニーニャは「任せて」という様に微笑み、

「喜蝶、俺がいる」

と、言った炎(イェン)と視線が合うと、ラニーニャは嬉しそうに頷き、

「先輩。僕も行きますから!」

と、言ったアルトと視線が合うと、ラニーニャはさらに大きく頷いた。

 最後に たぬてぃがラニーニャの肩に乗って鼻息をフンッと掛けると、

その たぬてぃにラニーニャは頬を擦り寄せた。

「準備が出来たみたいだね、嬢ちゃん?」

 それから白い虎の精霊からそう聞かれたラニーニャが力強く頷くと、

「そぉーか。了解! では、お坊ちゃん。船を頼むぜぃ♪」

と、言った白い虎の精霊はチラリとアルトに目を転がした。

「わかったよ。船だね。じゃあ、みんなこっちに来てくれ」

 だが、アルトは白い虎の精霊とは目を合わさずに船着き場まで案内を始めた。

ー●

 アルトが案内を始めて数分で船着き場に到着した。

 船着き場と言っても数個の灯りに照らされた船が一隻だけの小さな所だ。

 ここからたまに気分展開でアルトはアケルナル島を巡るのである。

「これもアルトの所有物か?」

 そんな船着き場でケレスからアルトは恐る恐る見られた。

「そうだよ。僕のプレジャーボートさ。いつでも乗れる様に点検もバッチリしてる」

「やっぱり、スゲー金持ち……」

「そうかなぁ? こんな物を所有してるくらいでそんな事言われても……」

 アルトは普通に話していたが何故かケレスはしかめっ面になり、声までも小さくなった。

 そのせいでアルトの眉は下がってしまった。

「はあ……。まあ、言っても仕方がないか。ところでこれはアルトが操縦するのか?」

「そうだね。正確に言えば、僕と浦島で操縦するんだ」

「アルトと浦島だって!? どうやるんだ?」

「まあ、乗船しなよ。時間がないんだろ?」

 だが、ケレスはすぐに気を取り直した。

 そんなケレスから胸ポケットにいる浦島にアルトが優しい目を向けると、

ケレスはアルトと浦島を交互に見てきた。

 そして、アルトは乗船し、それに続いてラニーニャが炎(イェン)に付き添われ乗船した。

 それからその二人に留意しながらアルトがケレスを待っていると、

乗船して来たケレスの手には何故かベコがいたのである。

 そんなケレスをラニーニャが不思議そうな顔で見つめる。

「姉ちゃん。もしかして、オサ殿とベコ殿が気になるの?」

 そのラニーニャにケレスがベコを見せながら聞くとラニーニャは軽く頷き、

「この方々は成り行きで俺がお連れしたんだ」

と、ケレスが説明すると、ラニーニャは、そう、という様に頷いた。

 ふーん……ケレスの様子からしてベコ君もあの鼠の精霊と同じ類と言う事か。

 そう推測したアルト。

「そろそろ、出発するから。じゃあ、浦島頼むよ」

 それを悟られぬ様にアルトは支持し、プレジャーボートは軽快に動き出した。

 すると、ラニーニャは見送るラニーニャの祖父とメイサに大きく手を振っていた。

 そして、そのラニーニャを見送る様に満月はラニーニャを優しく照らし、

幻想的な光景を生み出していた。

 先輩、あなたにこんなにも負担を掛けているのに僕は……。

 ですが、今度こそ何を犠牲にしてもあなたを守ります!

 だから、必ず願いを叶えてください……。

 アルトはラニーニャを優しく見つめそう願った。

 ジャップ……。どうか、助かってくれ!

 そして、友の為に強く願った。

 そんなアルト達を乗せたプレジャーボートは順調に進んでいた。

「で? どうやって一時間で宝珠の国に行くのかい?」

 だが、その航海中アルトが意地悪く白い虎の精霊にそう聞くと、

「まあ、見てなさいって♪」

と、答えた白い虎の精霊は瞳を閉じ前足を伸ばしたのである。

「さぁて、やりますかね!」

 すると、瞳を開けて全身の毛を逆立てた白い虎の精霊の白い体から黒い縞模様が浮かび上がった。

 それは一般的な虎の縞模様と同じだった。

 そして、その縞から黒い霧が出てきたかと思うと、

その霧はプレジャーボートをあっという間に包み込み、月明かりを遮断したのだ。

「な、何なんだ!?」

 その現象に驚いたアルトが辺りを見渡すと、

「ふっふっふっ。俺様の力の一つだよん♪」

と、言った白い虎の精霊は大きな鼻を上に向け、得意気にアルトを見下したのである。

 さらにその背にいる たぬてぃも何故か小さい鼻をめいっぱい上に上げて

白い虎の精霊の真似をしたのだ。

「君の力の一つだって!? これじゃあ周りが見えないじゃないか!

 どうやって目的地まで移動するんだい?」

「んん~ん? 周りが見えないのは当然なぁ~の! 見えなくしてんだからぁ♪

 それに、どうやって目的地に行くかなんてお坊ちゃんが心配しなくてもいーの。

 俺様が連れて行ってやるからさ♪」

 焦ったアルトに白い虎の精霊は纏わりつきながら揶揄ってくる。

 だが、飽きたのかトコトコとアルトから離れて行った。

「君が連れて行くだって!? 言っている意味がわからない!」

「まあまあ。大船に乗った気持ちでいなさいって!」

 そして、その白い虎の動きをアルトが目で追っていると

踵を返す様に戻って来た白い虎の精霊はアルトの前で止まり、堂々と胸を張った。

 ちなみに白い虎が行って戻って来た時間は数秒だった。

 こんなやり取りが暗闇の中でも明るいプレジャーボートの中ではっきりと見えた。

 そして、ラニーニャと炎(イェン)が二人寄り添って見つめ合い、

言葉はなくとも何かを話している事もはっきりと見えた。

 その様子が目に入ったアルトの眉間にはしわが寄る。

「お坊ちゃん? もしかして、嫉妬かい?」

「違うよ。彼をどこまで信用していいものかと思ってね」

 すると、白い虎の精霊は揶揄ってきたがアルトは溜息をついた。

「ほう? 炎(イェン)坊ちゃんを何故疑うのかい?」

 そして、不気味に目を光らせた白い虎の精霊にアルトは辿り着いた炎(イェン)の正体について話す。

 次回【倒された運命のドミノの中で ~答え合わせをする時~】 

 投稿予定日は2026年8月31日☆

※この作品は無断転載禁止でございます♪

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