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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第五章   倒された運命のドミノの中で
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047 ~目を疑う衝撃の出会い~

 大切な友であるジャップと大切なラニーニャ。

 どちらも大切であるアルトの心は揺れ動いていた。

 すると、宝珠の国の一大事にラニーニャは信じ難い決断をした。

 だが、ラニーニャのその決断に異議を唱えるのはアルト一人だけだったのである。

 そして、そんなアルトの前に目を疑う存在が現れる……。

「チビ。いいのか?」

 揺れ動く心のアルトの耳にこんなラニーニャの祖父の声が届いた。

 アルトがその声の方をみるとベッドの上で体を起こしていたラニーニャは彼を真直ぐ見つめ

力強く頷いたのである。

「そうか……。そうなら、儂は何も言うまい。行ってきなさい」

 しかもそう言った彼も大きく息を吐いて頷いたのだ。

「何を言っているのですか!?

 先輩をあんな所に行かせるなんて、僕は反対です!! 行かせませんよ!!」

 取り乱してしまったアルトは彼を険しい顔で睨みながら反論した。

「アルト……。でも、このままじゃ、兄貴は死んじまうんだ……」

 すると、まだ立てずにいるケレスからそう訴えられた。

 アルトを見上げているケレスのその目には涙が残っている。

「だけど……。行かせる訳にはいかない!!」

 だが、アルトはそう決断した。

 バシッ!!

 そんなアルトにこんな音と目から火花が散る衝撃が走る。

 さらにその音はもう一度聞こえた。

「痛っ!!」

 それに続きケレスの叫び声が聞こえてきた。

 こ……これは……!

 額を押さえながらこの仕打ちの犯人がすぐに誰だかアルトはわかった。

「何するんだい! 婆や!?」

 そして、アルトがメイサを睨みながら怒鳴ると、

「女子(オナゴ)が決心した事柄に殿方がとやかく言うものじゃありませんよ!!」

と、言いながら凛々しい顔のメイサが、しずしずと部屋に入って来たのである。

 その右手には勿論、扇子が握られていた。

「婆や? そう言えばあの時、アルトが呼んでたっけ……。

 てか、女子(オナゴ)って、もしかして姉ちゃんの事か!?」

「婆や、先輩を行かせるって言うのかい!? どうかしてる!!」

「さあ、邪魔者は退却しなさい!!」

 ケレスが先に口を開いたがアルトは割り込んだ。

 だが、目尻が釣り上がっているメイサからアルトは背を押され部屋から追い出されてしまった。

 ピシャリ!

 しかも引き戸をさっさと閉められてしまったのである。

 全く、婆やったら何を考えてるんだい!!

 扇子が投げつけられた部分をさすりながらアルトは追い出された部屋を睨んでいた。

 痛みと苛立ちでその眉間には勿論しわが寄っている。

「また、女子(オナゴ)? たくっ……何なんだあの人!?」

  すると、後から追い出された涙目のケレスもぶつぶつ言いながらその部屋を睨んでいた。

「すまない。婆やは頑固者でね」

 そんなケレスに落ち着きを取り戻したアルトはそう言いながら近づいた。

「アルト!? あの人は、お前の祖母なのか?」

「祖母じゃないよ。僕の執事さ。ここで僕と二人で暮らしてるんだ」

 額を撫でていたケレスにアルトが溜息交じりに答えるとケレスは額を撫でる事をやめた。

「ここで暮らしてるって!? じゃあ、ここはお前の家か?」

「ああ、そうだよ。僕の屋敷さ。と言うか、この島自体が僕のだけどね」

「はあ……。やっぱり、金持ち……」

 声を荒げたケレスにアルトが髪を軽くかき上げながらこの島の説明をすると、

 呟いたケレスの顔のパーツは何故か中心に集まった。

「余計な話はやめよう。ところで、どうやって宝珠の国に行くんだい?」

 そんなケレスを無視したアルトが腕を組んで聞くと、

「さあ。わからない……」

と、答えたケレスはお手上げポーズをしたのだ。

 そのケレスに苛立ったアルトの眉間にはしわが寄る。

「わからないじゃないだろう? だいたい、君はどうやってここまで来たんだい?」

「それは、ヘルに連れて来てもらったんだ」

「ヘルだって? 誰だい、そいつは?」

 お手上げポーズをやめたケレスが変な事を言い、そのせいでアルトの右眉が少し上がった時だった。

「俺様だよん♪ お坊ちゃん?」

 こんなお調子者の声が何処からともなく聞こえてきたのである。

 その声は少し低めの女性の声だった。

 そして突如、廊下の闇から口角を耳まで上げ笑っている真っ白い虎の精霊が現れたのだ。

 その虎の頭から尾の付け根までは二メートル以上はあり、瞳は金色だった。

「な、何だ!? 何で君は喋ってるんだ?」

 驚いたアルトが思わず組んでいた腕を崩し、その白い虎の精霊をまじまじと見ると、

「ははっ! そう言うの、俺様、好きだな♪」

と、言った白い虎の精霊はアルトに体を擦り寄せてくる程、御機嫌だったが、

「こらぁ馬鹿虎!! いい加減にせぬか! こんな時にいつまで遊んでおるんじゃ!!」

と、今度はケレスの頭の上から老人の男の怒号が飛んで来たのだ。

「うわっ!? 今度は小さい鼠の精霊までも喋ってる!? どうなってるんだ!?」

 だが、アルトの言う通り、その声の主は掌ぐらいの大きさの灰色の鼠の精霊だったのである。

 そして、それに驚いたアルトが目を丸くし、ビクっと後退りしながらそう言うと、

「貴様もか! この小童共がぁ!!」

と、さらに怒った鼠の精霊からは怒鳴なれ、

「はっはっは! このお坊ちゃんも面白いね♪」

と、言った白い虎の精霊からは腹を出して笑い転げられてしまった。

 な、何なんだ……? どうして精霊が喋っているんだ!?

 この時、アルトは状況に全く付いていけなかった。

 大抵の動物、精霊、霊獣といったものと心を通わせられるアルトだったが

口で話した事は一度もない。

 それは彼等が喋れる訳がないので当然だった。

 なのに目の前にいる精霊は普通に喋っている。

 しかも二体もだ。

 色んな事が重なり疲労も重なっているので夢を見ているかもしれないと思い、

アルトは自身の左頬を強く抓ってみたが夢ではない様だった。

「あの……。そろそろ、どうやって宝珠の国に行くのか考えないか?」

 そこでケレスがその二体のやり取りを終わらせた。

「おっと、そうだった¡

 なあに。俺様の力を使えば宝珠の国まで一瞬よ!」

 そのケレスに元の体制に戻った白い虎の精霊は大きな鼻を上に向け突拍子もない事を言ったのだ。

「俺の時みたいにか?」

「そうとも! 任せなさい!」

 だが、ケレスは普通に返したのである。

 そして、自信満々な白い虎の精霊は目を細め胸を張ったが、

「これこれ、待つのじゃ。それは、一人の時の話じゃろうが」

と、鼠の精霊にツッコまれてしまった。

「そうだが?」

 その鼠の精霊に白い虎の精霊は、ぐるんと頭を左に傾ける。

「はあ……。これだからお馬鹿者には手が焼ける」

「どういう事だい?」

 鼠の精霊はぼやき、白い虎の精霊が頭を戻すと、

「あの娘一人を宝珠の国に向かわせるつもりなのかえ?」

と、小さい鼻を上に向け数回盾に振っている鼠の精霊は指摘した。

「あっ……そうだったわ……」

 すると、白い虎の精霊の口は開いたまま閉まらず間抜けな顔になった。

「ま、まさか……。ヘル、お前は一人しか運べないのか!?」

 そして、その白い虎の精霊の間抜けな顔を見たケレスは冷や汗を掻いている様だったが、

「御名答! 俺様の背は一人乗りなんでな♪」

と、言った白い虎の精霊は何故か胸を張って自信満々な顔でケレスを見た。

「御名答!じゃないだろう!? どうするんだよ? 時間がないんだぞ!!」

 眉が釣り上がり、前のめりになりながら怒鳴るケレス。

「まあまあ、落ち着きなって! さっきより時間はかかるが俺様の力で速く行けるからさ♪

 そう言えば、何人で行くつもりな訳?」

 だが、白い虎の精霊はそんな事を気にも留めず口を窄め可愛らしく聞いてきたのである。

 訳がわからない……。どうして精霊が喋っているんだ?

 しかもケレスは普通に話している市……。

 まあ、彼はあまり考えずに行動するから仕方がないとは言え、一体彼等は何者なんだ?

 ケレス達のやり取りを見ていたアルトは色々と考えていた。

「俺は、行く」

 そんなアルトの前でケレスはそう答えた。

「当然、僕も行くよ」

 白い虎の精霊を怪しんでいるアルトは横目で白い虎の精霊を見ながらそう答えた。

「俺も、行く」

 すると、炎(イェン)までもが白い虎の精霊を睨みながらそう答えて頷いたのである。

 いつの間にか傍にいた炎(イェン)はどうやら強制的に追い出された訳ではなさそうだった。

 どこも痛そうにはしていない。

 ふぅーん……。まあ、彼なら当然そう言うとは思ったけど厄介だね……。

 そんな炎(イェン)を冷ややかな目でアルトは見ていた。

「ひい、ふう、みいっと、三人と、あの嬢ちゃんね♪了解!」

 すると、そう言いながら白い虎の精霊はアルト達を一人ずつ見ながら頷いた。

「うさ爺はどうするんですか?」

 それから同じくいつの間にか傍にいたラニーニャの祖父にケレスは尋ねたが

彼からは意外な答えが返ってくる。

 次回【倒された運命のドミノの中で ~大切な友の為に~】 

 投稿予定日は2026年8月26日☆

※この作品は無断転載禁止でございます♪

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