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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第五章   倒された運命のドミノの中で
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046 ~まさかの再会と報告~

 ラニーニャが喋れなくともアルトはその心が不思議とわかった。

 だからアルトはラニーニャ都話す事が出来たのである。

 そんなアルトはある調べ事をしていた。

 だがまたラニーニャにあの悪夢が襲いかかる。

 そして、そんなラニーニャの下にアルトは駆けつけたがそこにまさかの人物がいて……。

 アルトはラニーニャ都話した。

 正確に言えばアルトがラニーニャの気持を言葉にし、

それに対しラニーニャが色々なジェスチャーで返すものだった。

 勿論アルトの言葉にもラニーニャは出来る限り答えてくれた。

 だが不思議とそれはスムーズに進んだ。

 他人の気持ちが今までほとんどわからなかったアルトがラニーニャの気持は良くわかったのだ。

 そして、そのわかった事の中にラニーニャがアルトを信頼し頼っている事もあった。

 だがその反面、ラニーニャがアルトにある程度の距離までしか近づけないという事もあった。

 それは、自分が龍宮一族だからだとアルトは思った。

 何故なら龍宮一族こそ本来ならラニーニャを守らなくてはならないがそうはしていないからである。

 それどころか龍宮一族はラニーニャを苦しめている。

 その龍宮一族に自身はいる……。

 アルトはずっと憎んできた自身に流れる龍宮一族の血をこれ程までに憎めるとは思わなかった。

 そんなアルトは気付かない内に眉間にしわが寄っていた。

 すると、

「アルトお坊ちゃま。あまり長い時間、女子の部屋に居座るのは感心出来ませんよ?」

と、しずしずと部屋に入って来たメイサに話し掛けられた。

 そのメイサの顔は悪戯なものだった。

「えっ!? そんなに長い時間だった……」

 そして、そう言いながらアルトが時計を確認すると、

ここに茶を運び入れてから既に二時間以上経過していたのだ。

「うわわっ!? も、もうこんなに時間が経ってたのか!?

 すみません先輩! こんな長い時間、居座ってしまって……」

 アルトが慌ててそう言いながら食器を持って立ち上がると、

ラニーニャはくすっと笑って首を横に振ったが、アルトを何か言いた気な顔で見つめてきた。

「先輩。明日もお邪魔しても宜しいでしょうか? 勿論、べっこう飴を持って!」

 そして、ラニーニャの気持がわかっているアルトが笑い掛けると、

はにかみながらもラニーニャは頷いた。

 そうしてラニーニャの部屋を退出したアルトの心にラニーニャへの新たな思いが芽生えていた。

 それは言葉に出来ない思いだが、アルトの心を温かくさせるものだった。

 その思いにアルトはまだ気づいていなかったが、

アルトの顔は穏やかさの中に凛々しさがあるものとなった。

 そんなアルトは自室で調べ物をしていた。

 それは、昴とダーナについてだったが、ここでは調べるのには限界があった。

 やはりここでは限界があるか……。

 けど、龍宮家に戻ればあるいは……。

 そう思ったアルトが深く息を吐いた時だった。

 また大きな物音がしたのである。

「先輩!? またあの発作が!」

 そして、アルトは部屋をそのままの状態でラニーニャの下へ駆けつけた。

 すると、そこには炎(イェン)が既に到着していたが、何故か見覚えのある人物までもがいたのである。

 えっと……。あの緑頭はケレス……?。

 おかしいな……疲れて僕は幻でも見ているのか?

 そうだ! きっと、そうに決まっている!

 アルトは強く瞳を閉じ、何度も瞬きした。

 そして、もう一度目の前の緑頭の人物を見たが、それは紛れもなくケレスだった。

「何してんだ!? 離せ!!」

 そのケレスは叫びながらラニーニャを押えつけているラニーニャの祖父の処へ駆け寄って行った。

「やめなよ。ケレス」

 アルトは静かに部屋に入りながらそれを制した。

「アルト!? 何で止めるんだ?」

「まあ、見てなよ……」

 すると、ケレスから睨まれたがアルトはラニーニャに目を転がした。

「どういう事だ?」

 そして、ケレスがアルトに従いその光景を見ていると、

「喜蝶、俺だ。しっかりしろ……」

と、炎(イェン)から優しく話し掛けられたラニーニャは落ち着きを取り戻し、暴れるのをやめた。

 その後、顔色が悪く息が上がっているラニーニャはラニーニャの祖父から布団に寝かしつけられた。

 その一連の光景を見守っていたケレスは青褪めた。

「アルト……。姉ちゃん、どうしたんだ?」

「どうしたもこうしたもないだろう? あんな事があったんだ」

 ケレスの呟きに返したアルとの声には溜息が混じる。

「殿下のせいか……」

 呟いたケレスの声はふるえていた。

 だが、そんなケレスを見る事なくアルトは瞳を閉じた。

「ああ、そうさ。あれから先輩は三日間、意識が戻らなかったんだ。

 そして意識が戻ったのはよいけれど、それからというもの、眠れていない。

 眠ったとしても、一時間もしたらあんな状態さ。

 ほとんど眠れていないのと同じだね。

 まあ、あんな目に合ったんだ。ああいう状態になるのも仕方がないよ」

 説明している間、アルトは瞳を閉じたままだった。

 そうする事で出来るだけ怒りを抑えていた。

「そんな……」

 すると、ケレスが言葉をつまらせたのがわかった。

「それだけじゃないんだけどね……」

 そして、瞳を開けてそう言ったアルトの顔は険しいものとなってしまった。

「それだけじゃないって、どういう事だ?」

 ケレスがそんなアルトを不安の滲み出ている目で見つめると、

「ケレス。こっちに来なさい」

と、ラニーニャの祖父から呼ばれ、

「うさ爺?」

と、言ったケレスがその傍に行くと布団から体を起こしたラニーニャからケレスは見つめられた。

「姉ちゃん、俺だ。生きてて、よかった……」

 今のラニーニャを見たケレスはそれだけしか言えなかった。

「姉ちゃん? どうしたんだ?」

 だが、喋れないラニーニャを見たケレスが不思議そうに聞くと、

「すまんな。今、チビは喋れんのじゃ」

と、答えたラニーニャの祖父がラニーニャの左肩に優しく手を置き、ケレスを見つめた。

「喋れないって、どうして?」

「所謂、失語症って言うやつだ。あの事が原因だろうけどね」

 その彼の手の動きを目で追っていたケレスが言葉を漏らすと、アルトは溜息交じりに教えた。

「そんなぁ!? 治るんだよな?」

 すると、そう言ったケレスが縋る様にアルトを見つめてきたが、

「さあね。治るかもしれないけど、治らないかもしれない」

と、アルトは答えになっていない答えを言ってしまった。

 そんなアルトに眉を顰めたケレスが詰め寄る。

「何言ってんだ!!」

「僕に怒ってどうするんだい? そんな事をしても、先輩の失語症は治らないよ」

「それは、そうだけど……」

 アルトはそんなケレスを蔑んだ目で見つめた。

 そのアルトの目からケレスは逃げる様にラニーニャを見つめ、その目がラニーニャと合った。

 すると、ラニーニャの目は『ケレス君、どうしたの?』と言っている様にアルトには見えた。

 それが伝わったケレスの目からは止まらない涙が溢れ出し、ケレスは瞳を強く閉じた。

 そんなケレスの手をラニーニャは優しく握った。

「姉ちゃん……」

 その優しさで瞳を開けたケレスは暫くラニーニャと目を合わせた後、

泣きながら宝珠の国で起きた事、起きている事、全てを話した。

 そのケレスの話はこう言ったものだった。

 イザヴェル付近に祟り神が誕生してしまった事。

 その祟り神により、メタは死亡し、オルトは前足を切断するといった重症を負った事。

 そして、その祟り神は目覚めたヒロにより倒されたが、

多くの宝珠の国の軍人が滅びの呪いに侵され命の灯が消えかかっているという事。

 高杉の右手が死にかけているという事……。

 やはり起こってしまったのか……。

 これは、逃れられなかったのだろうか?

 いや、だけどこれは自業自得だ!! 仕方がないんだ!!

 アルトはそう自身に言い聞かせ続けた。

 別に宝珠の国にもアカデミーにも思い入れ問う、全くない。

 だから、宝珠の国が滅ぼうとどうでもよかった。

 だが、どうしてもたった一人にだけはそんな感情を持てなかったのである。

 ジャップ……。どうして、君は……。

 勿論、それはジャップにだった。

 どうしても滅びの呪いを享け命の灯が消えかかっているジャップにだけは

そんな感情を持てなかったのだ。

 生きてほしい。

 そう思ってしまったのである。

 だが、そんな方法はどこにもない。

 そう思った時、ふとアルトの脳裏にラニーニャの顔が浮かんだ。

 駄目だだめだ!! 僕は何を考えてるんだ?

 例え飛行艇をぶっ飛ばして間に合ったとしてもそれは絶対に駄目だ!!

 あと数時間で尽きるジャップの命を救える人物……。

 それはラニーニャを置いて他にはいない。

 そんな事はわかっている。

 だが、今のラニーニャにそんな負担を掛けさせる訳にはいかない。

 だが、そうなるとジャップの命は……。

 どちらも大切すぎてアルトにはどちらを選ぶ事等出来なかったのである。

 そんなアルトの耳にあの者の思いも寄らない言葉が届く。

 次回【倒された運命のドミノの中で ~目を疑う衝撃の出会い~】

 投稿予定日は2026年8月24日☆

※この作品は無断転載禁止でございます♪

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