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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第四章   心をざわめかす言葉
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039 ~彼が出した答え~

 抑えていたタガが外れてしまったアルトは声を荒げてしまった。

 そう、憎むべき国が行ってきた事をケレスに話してしまったのだ。

 そんなアルトはケレすに話を続け、ケレスにある答えを求めた。

 そして、ケレスが出した答えとは……。

「ああ、そうさ!!

 あの国はね……昔からダーナの力を奪ってきたんだ!! 水面下でね!!

 上手く証拠を残さない様にしてきたから僕達も手が打てなかったんだ!!」

 時刻は草木も眠る真夜中。

 虫の声一つしない中、ラニーニャの家でケレスと話していたアルトは声を荒げた。

 それでも剣の国に対する苛立ちを抑えきれない。

ダンッ!!

 アルトは右拳を机に叩き付けてしまった。

 机に置いてあった空の湯のみがケレスの前でグラグラと揺れる。

 カタカタと音までしてもう少しで倒れそうだった。

 水鏡の国と剣の国。

 この二国は文化的に近いものがあるが決して交わる事のない国である。

 何故ならダーナを巡っての考え方が真逆だからだ。

 水鏡の国はダーナは世界の為に。

 そして、剣の国はダーナを支柱に収めた者の為にあると考えている。

 なので、決してこの二国が交わる事はない。

 本当にケレスは何も知らないんだね……。

 剣の国が昔から行ってきた憎むべき行いを!!

 まあ、先代の皇帝になってからはあれは公では行っていない事になっているから

ケレスが知らないのは仕方がない事なのか……。

 だけど、絶対に今でもやっているけどね!

 でも、先輩があれにされなくて本当によかった……。

 剣の国が密かに行っていた行いを思い出したアルトは胸を撫で下ろした。

 その行われていたものには名が付いているが口に出すのも悍ましく、

アルトは二度とその名が心に浮かばぬ様その行いに対する激しい怒りと共に心の奥底へそれを鎮めた。

 机上の湯のみはもう揺れていない。

 アルトは今やるべき事に話を修正させる。

「とりあえず、今は先輩の代替わりの手助けだ!!

 全く……先輩は一人でそんな事をしようなんて無茶な事を考えるんだから!!

 そのスレイプニル様も何を考えているんだか……。

 先輩が大事なら、どうして無茶をさせる事を言ったんだ?」

 だが、心に余裕がなかったアルトは、ぶつぶつと愚痴を言う形となってしまった。

「そんなに無茶な事なのか?」

 そして、まだ事の重大さがわかっていないケレス。

 本当に信じられない。

 以前から無知でデリカシーがないとは思ってはいたがここまでだとは……。

 アルトは、カチンッときた。

「当たり前だ!! 君もあの雪桜の園を見ただろう?

 あの場所のマナの豊富さは異常だ!! 恐らく、あそこで代替わりは行われる。

 もし、あの環境を先輩一人で創りあげたとしたら

どれだけ先輩が祈りの力を使ったのかわからない。

 祈りの力は決して無限じゃないから

力を使いすぎて先輩のマナが無くなってしまったら先輩はどうなると思うんだい?」

 そして、怒りがこみ上げてきたせいかわなわなとふるえ出し、つい喋ってしまった。

 そのアルトの様子で漸くケレスにも事の重大さが少しだけ伝わった。

 ケレスはおずおずと口を開いた。

「力を使いすぎるとどうなるんだよ?」

「マナを使い果たす。つまり、マナの枯渇さ……。死ぬよ」

 アルトは最悪の結末を声をふるわせながらも教えた。

 すると、ケレスの顔は一気に青褪めた。

「死ぬなんて嘘だろ!? 何とかする方法はないのか?」

 勢いよく立ち上がるケレス。

 また空の湯のみがグラグラと揺れた。

「だから、代替わりは数人のダーナで行われてきたんだ。

 互いが互いを供与や増幅といった力で助け合ってね。

 でも、先輩は何らかの理由でそれを望んでいない。

 悔しいけど、僕に出来る事はほとんどない。僕に出来る事と言えば……」

 ここまで話したアルトだったが先程ラニーニャの祖父から聞かされた真実の全てを話せなかった。

 何故ならその真実を知ってしまったらケレスは後戻りできなくなる。

 ラニーニャの希望であるケレスを命の危険を伴う事に巻き込む訳にはいかなかった。

 そんなアルトの心なんて露知らずなケレスはその場に座り直した。

「アルトに出来る事って、何だ?」

「僕に出来る事は、先輩と雪桜の園を守る事だけだ。

 今、代替わりが行われるという事は守り神が弱っているって事だからね。

 何事もなければいいのだけれど、昔から何かは起こっているのは確かで、

何者かが豊かなマナや先輩を狙ってくる可能性が十分あるんだ」

「でも、それは神話の中の話だろ? 誰が狙ってくるっていうんだ?」

 アルト達が互いに真直ぐ目を見つめながら話しているとまたケレスが、おずおずと聞いてきた。

 アルトは一例を述べてケレスの覚悟を確かめる事にした。

「例えば、ゴンズの様なものさ」

「ゴンズ!? だって、あいつは消滅したじゃないか?」

 明らかに動揺したケレスの声が裏返ってしまった。

「ゴンズは消滅しても他にそういう輩はいるさ。

 祟り神は自分の世界を壊す者を憎む。

 だから、この間のゴンズの襲来は、実は先輩を狙っていたのかもしれない。

 それに、魔物だって、豊かなマナを欲するからね。何が来てもおかしくはないんだ」

 アルトは淡々とこれから起こりうる事を話した。

 それは、ケレスの覚悟がこの程度で逃げる様なものなら不要だったからである。

 ラニーニャとその祖父には悪いと思ったがそうなってしまったらあきらめるつもりだった。

「逃げるんなら、今の内だよ?」

 アルトはこの言葉でケレスの覚悟を確かめた。

 先輩、申し訳ありません……。もし、ここで彼が逃げてしまったら……。

 アルトは少し後悔した。

 正直に言わず、ただケレスをラニーニャの傍にいさせた方がよかったのでは?

 正直に言って、もしケレスが逃げてしまったら……。

 その二つの未来をアルトは描いていた。

「逃げないさ」

 だが、アルトを真直ぐに見つめたケレスが出した答えはこれだった。

「ふーん……まあ、半端な決心じゃない事を祈るよ」

 内心ほっとしたアルトだったが決してそれを表情には出さなかった。

 すると、引き戸の向こうにあるもののの気配を感じた。

 バル君、心配してくれてるんだね……。

 それを察したアルトは何も言わず、すっと立ち上がりバルの処に行こうとしたが、

「何処に行くんだ、アルト?」

と、不思議そうな顔をしたケレスに聞かれた。

「バル君が僕と色々と話したいみたいでね。

 彼の所に行かなくちゃいけないのさ」

 髪をかき上げながら答えたアルトは引き戸を開けた。

 それから部屋を出て行き、引き戸を静かに閉めた。

 すると、そこにはアルトを心配しているバルが指を咥えて立っていたのである。

「バル君、ごめんね。心配してくれてたんだね」

 アルトがしゃがんで優しく声を掛けると、

「キャ?」

と、バルは「あの緑頭の人はどうするの?」と聞いてきた。

「彼も一緒に代替わりの手伝いをしてくれるみたいだよ?」

 微笑むアルト。

「キャア!」

 喜んだバルはポーンとアルトに飛び掛かって来た。

 飛び跳ねたその高さはアルトの胸程だった。

「おっと! 相変わらず君は腕白だね!」

 アルトはバルを優しく受け止めた。

「でも、君もよろしく頼むよ? 一緒に代替わりを成功させよう!」

「キャア!!」

 バルは「任せて!!」と言う様に鳴いて返事をした。

 そこに ぴゅーけんが徐に近づいて来たのである。

「ぴゅーけん君、どうしたんだい?」

 バルを抱いたままアルトは首を傾げた。

「今日、お前さんが泊まる部屋を案内したいそうじゃ」

 すると、後から近付いて来たラニーニャの祖父が ぴゅーけんの気持を伝える。

 その顔はとても穏やかだった。

「そうか。ぴゅーけん君、頼むよ?」

 アルトは ぴゅーけんに笑い掛けた。

 すると、頬を赤く染めた ぴゅーけんはこくんと頷いた。

「先輩のお爺様。今日はお世話になります」

 そして、アルトが彼に頭を下げると、

「気にするでないわ」

と、言った彼は意味深な顔で笑い、それ以上何も言わずケレスがいる部屋へ入ってしまった。

 先輩のお爺様、ケレスに何を言うつもりなのだろう……。

 その彼の背を見送ったアルトは気にはなったが、

ケレスと彼を信じ、ぴゅーけんの案内に従う事にした。 

 次回【心をざわめかす言葉 ~素晴らしい朝を迎えた後に~】

 投稿予定日は2026年7月23日☆

※この作品は無断転載禁止でございます♪

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