034 ~光よりの使者との遭遇~
企てた計画の第一段階を成功させたアルトはケレすにある申し入れをする。
それは、あるとの計画の第二段階だった。
そして、何とかそれを成功させたアルトはある者の下へ赴くのだが……。
「アルト。聞きたい事って何だ?」
茜色の空に浮かぶレーヴァレイティン号が小さくなった頃、後ろからケレスが声を掛けてきた。
そして、アルトは振り返った。
「先輩の家に連れて行ってくれ」
振り返ったアルトは企てた計画の第二段階を実行する為にそう言った。
ちなみに第一段階はケレスだけをこの場に残す事だった。
「はっ!? いきなり何を言い出すんだ?」
目を見開くケレス。
驚きが前面に出ていたが計画を実行すべくアルトは気にせず続ける。
「僕は先輩の家を知らないからね。君が案内してくれないと!」
「だから、何で姉ちゃんの家に行きたいんだよ?」
邪魔をしようとするケレス。
イラっとしたアルトの眉間にしわが寄る。
だが、一刻も時間が惜しい。
「つべこべ言わず、早く案内してくれ!!」
なのでアルトは有無も言わさず、決めてしまった。
そして、アルトの勢いに負けたケレスはそれ以上何も言わず、ラニーニャの家へ案内した。
そのケレスの案内で十数分程歩くと、ぽつんと平屋が見えた。
だが、ケレスはその家のドアの前で何故か尻込みしたのだ。
どうも動きそうにない。
なので、アルトがドアベルを鳴らした。
ガラッ!
乱暴に開き戸が開いた。
そして、バンッ!!と、その開き戸がその端にぶつかった。
「帰れ!!」
そこから現れた老人が怒鳴った。
その老人は見上げる程の大柄の男で白髪頭、口髭と顎鬚で口の周りを囲んだ白髭を蓄えており、
日焼けしたベージュ色の肌の怖面だった。
恐らく彼がラニーニャの祖父だろう。
臆する事なくアルトは彼を見つめた。
「僕は、龍宮 アルトと申します。先輩に会わせて下さい。会うまで、僕は帰りません」
「お前さんが何と言おうと、チビにはもう誰も会わさん!!」
「お願い致します」
頭を下げたアルトはまた怒鳴なれた。
そして、アルトが頭を下げ続けている間、彼の荒い息遣いが大きくなっていくのがわかった。
さらにケレスが、そわそわしている事もわかった。
それでもアルトは自身の願いを叶えるべく、頭を下げ続けたのである。
すると、ふわ、ふわり……と、アルトの目に金色に輝く粉が映る。
そう、広がった瞬間儚く消えるぐらい細かい光り輝く粉が落ちて来たのだ。
「ん? 君は……」
頭を下げたままアルトが目線を上げるとそこには金色に光る蝶が飛んでいた。
その蝶に特に模様はない。
羽を拡げた大きさは五センチメートルを少し超えたと言ったところか。
だが、その蝶の美しさは見惚れるものだった。
目を奪われてしまったアルトはそのままの姿勢で動けなかった。
「アマテラス様の使い様じゃと!?」
と、そこに彼の驚いた声が聞こえ、暫しの静けさが訪れた。
アマテラス様の使い様だって!?
確か、光る蝶の御姿をした精霊で、アマテラス様の御意思を伝える使者……。
彼がそうなのか!?
でも、どうしてアマテラス様の使い様がここにいらっしゃるんだ?
それに、どうして先輩のお爺様はアマテラス様の使い様を知っているんだ?
そう、アマテラスの使いとは光る蝶の姿をした精霊で、
その名の通りアマテラスの意思を伝えるものとされている。
そして、そんなアマテラスの使いも、アマテラスも言葉を持たないが、
アマテラスの意思を伝える時にアマテラスの使いは何処からともなく舞い下りるとされているのだ。
だが、そうそうアマテラスも、アマテラスの使いに遭遇する事等有り得ない。
静けさの間、アルトの頭の中では色んな考えが巡っていた。
「……入りなさい」
すると、彼の落ち着いた声が聞こえた。
「ありがとうございます」
何も考えつかなかったが顔を上げたアルトは彼に続いて家の中に入る事にした。
ー●
彼から案内された部屋には、大きな机があり、そこに敷かれた座布団に座る様に指示され、
アルトはそこに座った。
「君はさっきの……」
そして、その部屋の隅にあのマンドレイクがいたのだ。
そのマンドレイクにアルトは声を掛けたが、
マンドレイクは急いでラニーニャの祖父の後ろへ隠れてしまった。
「バルや。こやつはお前さんに何もしたりはせんよ」
だが、彼がマンドレイクの傍でしゃがむと、
「キャ?」
と、バルは彼を見上げ、『本当に?』という様に鳴いた。
「君は、バル君と言うのかい? 先程は、悪かったね。許してほしい」
バルに笑い掛けるアルト。
そして、優しく話し掛けた。
「さっきの奇声の奴!?」
そこに突如現れたケレスが、大声を出しながらバルを指差した。
相変わらずタイミングが悪くデリカシーが皆無だ。
ショックを受けたバルは泣きそうになった。
「君は、やっぱり失礼な奴だね。少しはデリカシーを持ちたまえ!!」
アルトの眉間にしわが寄る。
だが、バルの傍でしゃがみ、穏やかな顔を向けた。
「バる君。ごめんね。泣かないでくれ。お詫びに、いいものを見せてあげるよ」
「キャ?」
優しいアルトの声にバルはアルトを見上げ、『いいもの?』と言う様に鳴いた。
「紹介するよ。僕は、龍宮 アルト。それから、彼はパートナーの浦島。
君に今から僕達で、ちょっとした芸をお見せするね」
アルトはポケットから小さな浦島を取り出した。
アルトの掌に乗れるぐらいの小ささだ。
浦島、いくよ!
アルトはそう思い、手を通じて浦島にマナをおくった。
すると、浦島の体が淡く青色に光り出した。
その浦島が口を開けるとその口から浦島と同じ光の小さな泡がいくつか出てバルの傍に集まる。
泡の大きさは直径がアルトの掌の半分ぐらいと言ったところか。
「キャ??」
「さわってごらん。バル君」
その泡を見たバルが『これ、何?』という様に不思議そうに鳴いた。
そして、アルトが優しくバルに笑い掛けるとバルは恐る恐るだが、その泡を触った。
ばしゃんっ!
勢いよく弾けたその泡。
ぱしゃぱしゃ!
その水しぶきがバルに降り注がれた。
「キャーア! キャー!」
気持ち良さそうなバルは楽しそうな声で鳴く。
バシャッン! バシャンッ! バシャバシャンッ!と、バルは集まっていた泡を全て割っていった。
「キャー!!」
それからバルはアルトの傍に駆け寄り、泡を強請ったのでアルト達がまた泡を出現させると、
バルはその泡を全て壊して遊んだ。
よかった。しゃぼんでバル君がこんなにも喜んでくれるとは!
しゃぼんとは水のマナで作るしゃぼん玉の事である。
これは浦島の一族 寿族が操る遊びの技の一つで、そこにアルトの力 水の盾の力を共鳴させ、
自由自在に動かせるしゃぼんを作り、今回バルの遊び道具としたのだ。
そんなバルの喜ぶ姿でアルトの顔が綻んでいるのを見た浦島が二足で立ち上がり、
そのまま両前足を下して合図してきた。
わかってる。次はあれをやろう!
その浦島を見たアルトは頷く。
「バル君。今度はこんなのはどうかな?」
そしてアルトが浦島の頭を撫でると、浦島は今度は大きなしゃぼんを出した。
今度のしゃぼんの直径はアルトの腕ぐらいある。
「キャア?」
「バル君、さわってごらん?」
『今度は何?』という様に鳴いたバルにアルトは促した。
そして、バルはそのしゃぼんを触ったが今度は割れなかった。
「キャー!?」
『何で!?』という様にバルは鳴き、そのしゃぼんを何度か、ポンポンと叩く。
「多少な事では割れないから。乗ってごらん?」
アルトはバルを抱き抱えてしゃぼんに乗せた。
「しっかり捕まっててね」
それからアルトが しゃぼんに意思を投影させるとバルを乗せたしゃぼんはどんどん宙に浮かび、
アルトの身長ぐらいまで浮かび上がった。
「キャー! キャー!」
そのしゃぼんの上でバルは楽しそうに、ポヨンと飛び跳ねながらはしゃいだ。
「バル君。どうだい、そこからの景色は?」
見上げたアルト。
「きゃーー!!」
と、『行くよ!!』と言う様に鳴いたバルはアルトに飛び掛かって来た。
ガシッ!
ナイスキャッチ!と言わんばかりにバルを受け止めたアルト。
「おっと! 腕白なのはいいけど、気を付けないと!」
そう言いながら撫でるとバルはアルトに擦り寄ってきた。
バルとの触れ合いは、アルトの心を穏やかにさせた。
大抵の精霊、霊獣、動物といった生き物と心を通わせる事が出来るアルトだったが、
今までで一番心が和んだのである。
それは、とても幸せな時間だった。
「相変わらずアルトは霊獣の扱いが上手いな。てか、バルは雄なのか?」
が、ケレスのデリカシー皆無の言葉。
バルがぽかんとなった。
そう、空気をぶち壊したのだ。
全く……ケレス! 君ってやつは!!
アルトの眉がどんどん中心に寄っていく。
「どう見ても、彼は男の子だろう?」
「キャー!!」
その反動で言葉が押し出されたアルトの左肩に移動していたバルが仁王立ちしてケレスを見た。
「ほら、バル君がそんな事もわからないのか?って言ってる」
バルに微笑みかけるアルト。
バルの意思をケレスに伝え優しくバルの頭を撫でた。
すると、ケレスは『何でアルトにはわかるんだ!?』と言った顔をした。
そしてこの時アルトは気付いていなかったがアルト達の様子を密かに窺っていた者がいた。
次回【心をざわめかす言葉 ~辿り着いてしまった真実を口にする時~】
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