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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第三章 因縁の国
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026 ~届かぬ思いを前に~

 ラニーニャを守ると決めていたアルトは何一つ出来なかった。

 そんなアルトの前に宝珠の国の迎えが到達する。

 すると、そこには二人の男の姿があり……。

 結局、剣の国での最後の朝食会は中止になった。

 そしてそのまま宝珠の国の迎えの飛行機が到着し、アルト達は帰国の途に就く事となった。

 その宝珠の国の迎えの飛行機には二人の男の姿があった。

 一人は宝珠の国の皇子 ヒロ・ムスペルである。

 彼は歳は二五歳、褐色の肌に黒色の短髪で服の上からでも引き締まった体格が目立ち、

身長はジャップと同じぐらいだった。

 そしてその顔は目鼻立ちがくっきりとし、厳格な性格をそのまま顔にした様だった。

 もう一人は宝珠の国の皇子の隣にいる男……。

「君は何をしてるんだ!!」

 その男はいきなりアルト達から少し離れて歩いていたラニーニャを怒鳴りつけた。

(彼は確か宝珠の国の参謀の、ニック・ミュラー……。

 どうして彼までここに来ているんだ?)

 アルトは宝珠の国の参謀の勢いに驚いた。

 宝珠の国の参謀は色白で眼鏡を掛けた端正な顔立ちの男性で、

身長はアルトより大分高く、歳は二十代後半といった処だった。

「そうじゃない!! 立ってるのもやっとのくせに、どうして誰かを頼らないのかい!!」

 宝珠の国の参謀は握り締めた拳をふるわせた。

「言ったじゃないか……。僕を、頼ってくれって……そんなに僕は、頼りないのかい?」

 が、その拳を緩め穏やかな顔でラニーニャに優しく語り掛けた。

 まさか、彼は……。

 その宝珠の国の参謀の表情と言葉からアルトはある事を察する。

「ニックさん……。あなたは、やっぱり……」

 穏やかに笑ったラニーニャはその場に倒れそうになった。

 そのラニーニャが倒れる前に宝珠の国の参謀は抱える。

 ラニーニャの息は荒くなっていた。

 容体が悪い事が一目でわかる。

 そして、そのまま宝珠の国の参謀がラニーニャを飛行機内に連れて行き、アルトは追い掛けた。

 だが、アルトが行けた場所は医務室の前までだった。

 そう、開かないドアの前でその向こうにいるラニーニャの無事を祈る事しか出来なかったのである。

 何も出来なかったアルトは今までにない無力感に襲われ、目の前が真っ暗になった。

 それからどれだけの時間が経ったのかは定かではないが

その医務室から宝珠の国の参謀が出て来たのが見えた。

「ニックさん!? 姉ちゃんは?」

 宝珠の参謀に詰め寄るケレス。

 その顔には不安や心配といったものが溢れだしていた。

「はっきり言って、良くないね」

 宝珠の国の参謀の顔は気難しく、その顔でラニーニャの容態が悪い事はわかった。

「良くないって、どうあるんですか?」

「彼女は熱が四〇度近くあって肺炎を起こしている可能性がある。それに、衰弱が酷い。

 まあ、数日間無理をしたから仕方がないけれど、脱水や凍傷までしてる。

 まさかとは思うけどニーズヘッグの寒空の下にずっといた訳じゃあるまいし……。

 どうしてここまで酷くなってるんだ?」

 ケレスの問いに宝珠の国の参謀はラニーニャの容態を冷静に全て答えた。

 それに対してアルト達は何も言えなかった。

 言える訳がなかった。

「まあ、彼女も大人だから変な事はしてないだろうけれど、とりあえず今は絶対安静だ。

 帰ったら入院させなきゃいけないね。僕は今から病院に連絡をするよ」

 説明し終えた宝珠の国の参謀は医務室に戻ろうとした。

 それが目に入ったアルトの足は前に出る。

「あの……僕に先輩を看病させてくれませんか?」

「君は医者じゃない。

 それに君達といたから彼女はここまで何も言わずに無理をしていたんじゃないのかい?

 彼女に今、必要なのは休養だ。

 君達といたらまた無理をする。治るものも治らなくなってしまう」

 アルトの申し入れに気難しい顔のままの宝珠の国の参謀は首を横に振る。

 その行為は水と油が決して混ざらない様にラニーニャとの何かの壁を感じさせられるものだった。

 俯くアルト。

 何も言えない。

 悔しい。

 けど、何も言い返せなかった。

「君達も疲れているだろうから、休む事だね」

 そう言い残し医務室に入ろうとした宝珠の国の参謀。

「君は、主人の所にいてあげるといいよ。安心すると思うから」

 が、耳が下を向いている たぬてぃに優しく声を掛ける。

 そして、たぬてぃを抱きかかえて医務室に入っていった

 アルトは宝珠の国に帰るまでの間ふさぎ込んで誰とも話さずに過ごした。

 その間アルトは何も考えなかった。

 瞳を閉じ、ただただ自分が何一つ出来なかったという事実の沼にはまり続け

その沼の中でもがき続けた。

ー●

 アルトを乗せた飛行機は約一日をかけ宝珠の国付近まで帰り着いた。

 そこでアルト達は宝珠の国の皇子から呼び出された。

 宝珠の国の皇子の要件は到着地はイザヴェルではなくミラの空港、

そこで歓迎の祝典が行われるといいう報告だった。

 ちなみにイザヴェルとは宝珠の国の王都の名で、ミラとは宝珠の国の交通の街の名である。

 宝珠の国の皇子の話の詳細はアルトがぼんやりして聞いていなかったのでわからなかったが

ある程度話が終わった後、宝珠の国の参謀が澄ました顔で歩いて来た。

 その宝珠の国の参謀に宝珠の国の皇子は目を転がす。

「ニック。あいつはどうなんだ?」

「今は大分落ち着いたよ。ぐっすり眠ってる」

 宝珠の国の皇子と視線を合わせた宝珠の国の参謀は一つ息を吐いて答えた。

 その言葉にアルトは胸を撫で下ろす。

 それは宝珠の国の皇子も同じで穏やかな顔になり、アルト達に目を転がしてきた。

「そうか……あいつはニックに任せておくとして、お前達よく無事でいた。

 それにミューを助け、祟り神を排除した。感謝する。何か褒美を取らせよう」

「殿下!? その様な事は言わないでください!!

 俺達は当たり前の事をしたまでなんです!!」

 ジャップは焦っていたが宝珠の国の皇子に丸く言い包められていた。

 そんな事もあったが飛行機はミラの空港に着陸した。

 すると、夕暮れにもかかわらずアルト達は大歓声に包まれた。

 そう、ミラの空港は宝珠の国の国民で溢れかえっていたのだ。

 そして、その国民達のお目当ては勿論、宝珠の国の皇女だった。

 彼女に向け地響きの様な大歓声が飛んでくる。

 だが、アルト達がその大歓声を潜り抜けていると

血相を変えた宝珠の国の参謀が追い掛けて来たのだ。

「ニックさん!? どうしたんですか?」

 振り返ったケレス。

「ラニーニャちゃんがいないんだ!!」

 クールな顔が崩れる程息を切らす宝珠の国の参謀。

「どういう事ですか!? 姉ちゃんがいないって!!」

 青褪めたケレスは宝珠の国の参謀に詰め寄った。

「わからない。でも、たぬてぃ君もいなくなってて……。

 探したけど飛行機の中には二人共、何処にもいないんだ!!」

 こう話していた宝珠の国の参謀は表情を歪めたがアルトは考えるより前に医務室へと向かっていた。

「先輩、先輩!!」

 アルトの頭の中は、ラニーニャの事だけだった。

 そんなアルトの頭には嫌な予感が過ぎる。

 そう、もう二度とラニーニャ都会えなくなるという予感……。

 それを抱えたアルトが医務室に着くとベットを使っていた形跡はあったが

ラニーニャと、たぬてぃの姿は何処にもなかったのである。

 アルトはすぐに医務室を退室し、飛行機の中を探し始めた。

 だが、何所を探してもラニーニャもたぬてぃも何所にもいなかった。

「先輩!! 返事をしてください!!」

 アルトはラニーニャへの思いをのせ喉が裂ける程、叫んだ。

 それでもラニーニャからの返事はなく、アルトはその場に崩れる様に座り込んでしまった。

 すると、アルトのポケットにいる浦島が両前足を使い、何かを訴えてきたのである。

「浦島……君は先輩の居場所がわかったのかい!?」

 浦島は何度も頷き、アルトが進むべき道を示した。

 アルトがそれに従いミラの街の端まで来るとそこにラニーニャと たぬてぃ、ケレスがいた。

 だが、もう一人見知らぬ男もいたのである。

 次回【木漏れ日の中に突如現れた花畑】

※無断転載禁止でございます♪


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