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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第三章 因縁の国
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022 ~決して会ってはならぬ男との遭遇~

 猪の祟り神 ゴンズは粉雪となり、月夜に風と共に消えた。

 だが、そこに残った男にアルトの眉間のしわが寄る。

 そして、その男に導かれアルト達が向かった場所とは……。

 アルトは最近ではすっかり減ったはずだった眉間にしわが寄ってしまった。

 何故なら猪の祟り神、ゴンズの止めを刺したのは、剣の国で最も会ってはならない男、

皇帝、テイ ビンユエだったからである。

 月夜に映る剣の国の若き皇帝は黒い瞳に短髪の黒髪、年齢は二五歳で肌はベージュ色、

その顔には冷酷さがそのまま出ており、身長と体格はジャップと同じと言った処だった。

 そんな剣の国の若き皇帝は恐らく剣の国の軍服を着用しているが単独行動をしており、

その腰には長い刀が一刀刺さっていた。

(まずい事になったね……何とかこの男にだけは先輩の正体を知られない様にしなきゃ!)

 険しい顔のアルトは月夜に写る剣の国の若き皇帝の姿を見ていた。

 そして、剣の国の若き皇帝と目が合ってしまい、話し掛けられた。

「名は忘れたが、貴様は確か龍宮家の者だな……。何故、宝珠の国の者といる?」

 鋭い眼光で睨みつける剣の国の若き皇帝。

「僕なんぞを覚えていただいていたとは光栄です。

 僕は宝珠の国のアカデミーに通っておりまして、この騒動に巻き込まれたまでです」

 決してラニーニャとの事は悟られてはならない。

 表情崩さず話をはぐらかすアルト。

「そう言えばお前は龍宮家の部屋住みだったな」

 す蔑む目になる剣の国の若き皇帝。

 その目をアルトに向けた剣の国の若き皇帝だったがフンと呆れた様に鼻で溜息をつく。

 それからアルトの存在を自身から消し、

宝珠の国の皇女と宝珠の国の軍人であるジャップから詳しく話を聞き始めた。

(彼は感じが良いとは言えないね……。だが、このままだと彼は先輩からも話を聞くのだろう……。

 さてさて、気付かないでくれと願うしか方法はないのが現状化……)

 アルトは薄々思っていた事にゴンズの襲来で確信へ近づいていた。

 アルトの考えが正しければ、ラニーニャを決して剣の国の若き皇帝に会わせてはならない。

 だが、どうもそれは無理な様だった。

 そして、アルトに為す術がなくなったかと思えたが、

「話はもうよい。我が国の厄介事で迷惑を掛けた。これよりニーズヘッグより迎えが来る。

 我が責の下、貴様らを無事に宝珠の国へと帰還させると約束しよう」

と、剣の国の若き皇帝はアルトの願いが叶う様な事を言い出したのだ。

(どういう気紛れかはわからないけど……。

 とりあえず先輩が彼と話さなくても良くなったのは不幸中の幸いってとこだ!

 だけど、まだ油断は出来ないね……)

 ほっとしたアルトは今後の行く末をある決意の下、見守る事にした。

 その時だった。

 バシッ!!

 アルトの左肩に走った衝撃。

 痛い上に足が数歩前に出てしまった。

 アルトはその痛みの方に視線を移す。

「いやぁ! アルトは、つえーな! びっくりしたぜ!」

 その衝撃を齎したのはジャップだった。

 いつの間にかアルトの左側に立っており笑顔を向けてきた。

「痛いよ、ジャップ……やめてくれないか?」

 視線を剣の国の若き皇帝に戻したアルトは素気なく返す。

「アルト……どうしたんだ?」

「すまない。少し考え事をしていたんだ……」

 心配するジャップにアルトは話をはぐらかす事しか出来なかった。

 そう、ラニーニャの正体について誰にも話す訳にはいかないのだから……。

「ふーん……まっ、別に怪我とかじゃなければいいんだがな……」

 ジャップの声は何かを言いたそうだった。

「じゃあ、俺はケレスに朗報を伝えてくるわ!」

 が、陽気な声でそう言い残したジャップはケレスの所へ向かった。

 それからニーズヘッグからの迎えが来る約一時間の間、

アルトは剣の国の若き皇帝を見張っていたが、特に彼は何か行動を起こす事はなかった。

 ちなみにニーズヘッグとは剣の国の現帝都である。

 そんなニーズヘッグからの迎えの飛行機が到着し、アルト達は乗り込んだ。

 その飛行機には紫髪の少女と金髪の少年は乗らず、

二人共ヨルに乗り帰っていった。

 だが、その飛行機の中では意外な展開となる。

 それは最後に飛行機に乗ったアルトの直前に乗ったラニーニャが、

ケレス達家族とは離れた処に座った事である。

 それなのにケレス達はそれについて何も言わなかったのだ。

(どうして先輩はケレス達の所に行かないんだ?

 まさか、宝珠の国の皇女に遠慮をしているのか?

 だとしても、誰も何も言わないなんて見ている側としては良い気分にはなれないね!!)

 眉間にしわが寄ったが、アルトはそれを直す。

「先輩、隣に座っても宜しいでしょうか?」

 と、窓際に座っているラニーニャの顔を穏やかな顔で覗き込んだ。

「ええ、どうぞ」

 にこっと微笑むラニーニャ。

 その膝にいる たぬてぃもアルトを見上げて目を細める。

 どうぞの意思を示してくれた。

「では、失礼しますね」

 そして、アルトがラニーニャの隣に座ると飛行機はニーズヘッグへ向け出航した。

 ニーズヘッグに到着するまでの時間、ケレス達は朱雀を含め、とても楽しそうだった。

 だが、ラニーニャはその様子を見ずにただ窓の外を眺めていたのである。

(やはり、先輩の様子が変だ……。こういう時、僕はどうするべきなのか……)

 アルトは悩んだがラニーニャ都話す事にした。

「先輩、無事で良かった。どこも怪我をしてませんか?」

 出来るだけ微笑んだアルトは優しく話し掛ける。

「うん、怪我はしてないよ。アルトも怪我してない?」

 窓の外からアルトに視線を移したラニーニャ。

 先程同様に微笑んだ。

「はい。僕も怪我はしてません」

「さすが、アルト。魔物達と戦ったのに、無傷だなんて、凄いね」

「そ、そんな事、ないです……。全部、浦島が助けてくれたって言うか……」

 ラニーニャに褒められてしまった!?

 アルトの目がまた泳ぎ出す。

「そんな事、あるよ。だって、浦島さんが言ってたもの」

 そんなアルトの前でラニーニャは不思議な事を言った。

(先輩、やはり、あなたは……)

 その言葉である事をさらに確信したアルトはラニーニャを見つめた。

「ご、ごめんね! ちょっと、疲れてて、変な事、言っちゃった!」

 すると、そのラニーニャの目が今度は泳ぎ出す。

 あちらこちらと忙しそうだった。

「すみません。先輩が疲れているのに話してしまって。

 ニーズヘッグに着いたら僕が起こしますから。先輩は、ゆっくり休んでください」

「アルト……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね?」

 アルトが穏やかに見つめるとラニーニャの顔は穏やかなものに戻った。

 それからラニーニャは瞳を閉じてすぐに眠りに就いた様だった。

 すやすやと静かな寝息が聞こえて来る。

 、アルトはそのラニーニャをそっと見守った。

 そんなアルト達を乗せた飛行機は着々とニーズヘッグへ近づいて行く。

 そして、アルト達はニーズヘッグへと降り立った。

 そのニーズヘッグは朝焼けをしており、その紫の空の出迎えにアルトは不気味さを感じた。

(さて、遂に来てしまったね……。このまま剣の国が僕達を無事に帰してくれれば良いけど……)

 剣の国の若き皇帝を見張っているアルト。

「お帰りなさいませ。氷月様」

 と、剣の国の民族衣装を着た女性から出迎えられた。

 その女性は黒髪を二つのおだんごにまとめ、服は着物と似ている様なものだが違い、

黒い瞳は少し釣り上がっており、色白のベージュ肌で細身の体、身長はラニーニャより低かった。

 そして、その顔は微笑んでいたが、その裏に何か強固な芯があるのが見受けられた。

(ふーん……彼女は剣の国の若き皇帝にかなり近い者みたいだね。

 彼女にも目を光らせておかないといけないな!)

 アルトはその剣の国の民族衣装を着た女性をそういう目で見つめた。

 カラン、コロン、カララン……。

 何処からか響き渡る美しき鐘の音。

 それはその音を耳にした全てのものを虜にする音だった。

 その鐘の音が余韻を残しつつ鳴り響く。

(これは……彼の有名な、グリンカムビの鐘の音!? ここまで美しい音色を奏でるとは……。

 だけど、グリンカムビの鐘はヘルヘイムにあったはず……。

 どうしてこんなにもはっきりと聞こえるんだ!?)

 そう、この美しき鐘の音を奏でるグリンカムビの鐘。

 この鐘は剣の国に美しき朝を齎す鐘でヘルヘイムにあるとして有名だった。

 だが、ヘルヘイムは滅んでいる。

 それにもかかわらずグリンカムビの鐘の音は今確かに響き渡っているのだ。

 アルトはそんなグリンカムビの鐘の音色について色々と考えていた。

ホン、部屋はどこだ?」

 すると、剣の国の若き皇帝が意識のないラニーニャを抱きかかえていた。

「せ、先輩!? どうしたんですか!?」

 思わず声を上げたアルト。

 剣の国の若き皇帝の傍に駆け寄ったが剣の国の若き皇帝はアルトを無視し、

剣の国の民族衣装を着た女性にラニーニャを休ませる部屋へと案内させた。

 その部屋に着くまで剣の国の若き皇帝はずっとラニーニャを抱き抱えていた。

 そして、ラニーニャを休ませるまでアルト達は誰一人ラニーニャに声すら掛ける事も出来なかった。

「誰も、あの女を見てねえんだな」

 さらに剣の国の若き皇帝にアルトは蔑んだ目で見られる。

 何も反論出来なかった。

 そのアルトの前を通り過ぎ剣の国の若き皇帝はそのまま部屋を出て行った。

(何をしていたんだ僕は!! これじゃあ、先輩を守るどころか真逆の事じゃないか!!)

 拳を握り締めるアルト。

 後悔から止まらない悔しさが溢れ出してくる。

 それからアルトは用意された部屋で待機する事となった。

 その部屋は剣の国での古き伝統食が強い造りとなっており、

そこで落ち着けない時間を過ごす事を強いられたのである。

(全く……何て、悪趣味な部屋なんだい?

 そんな事より先輩だ!! 守るって決めていたのに僕は何をしているんだ!!

 だから、僕は……。

 いや、今は次こそは先輩をしっかりと守る事だけに集中するんだ!!)

 気持ちを切りかえているアルト。

 そのアルトの下にある訪問者が近付いていた。

 次回【因縁の国 ~新たな決意を胸に~】

※無断転載禁止でございます♪


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