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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第三章 因縁の国
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019 ~無力と贖罪~

 宝珠の国の皇女がラニーニャの心を傷つけていくのを黙って見る事しか出来ないアルトの前に

金髪の少年が現れる。

 だが、その少年とラニーニャ達はどうやら知り合いの様だった。

 そして、その少年にある事が気になったアルトの前でその少年はラニーニャを連れ出してしまう……。

未来ウェイライ、帰った。何か食わせろ」

 そう言いながら金髪の少年が部屋に入って来た。

「あっ、お前は!?」

 その少年にケレスは叫ぶ。

「な、何で!? あんたがここにいるんだ!!」

 だが、ケレスの叫びを無視した金髪の少年はラニーニャを見て叫んだ。

 その金髪の少年は無鉄砲という事が前面に出ている童顔で、色白のベージュ色の肌に瞳は黒色。

 丸顔の中にある眼は少し釣り上がっていた。

 さらに身長はケレスより少々低く年齢は若干若いといった処だ。

 だが、その体付きは不思議なぐらい引き締まっていたのである。

(ケレス達は何やら彼ともあったみたいだね……。それに、まさか彼は……)

 アルトにこの金髪の少年についてある仮定が浮かぶ。

 そんな少年の様子をアルトが窺っていると、

「こっちに来い!!」

と、怒鳴ったその少年がラニーニャの腕を掴んで何処かに連れて行ってしまったのだ。

「あっ、フェイトちゃん。待ってよ!!」

 それに紫髪の少女と、たぬてぃが続く。

 それからラニーニャ達が出て行った部屋でアルトは一人、食事を進めた。

 そして、

御馳走様でした」

と、言って、アルトは宝珠の国の皇女の姿が見えない部屋の隅へと避難したのである。

 何故なら、これ以上宝珠の国の皇女の傍にいたら何を言ってしまうかわからなかったからだ。

 それからアルトはケレス達とも目を合わさず唯、自身に沸き上がる怒りを鎮めていた。

 暫くするとケレス達も食事を終えた。

 すると、紫髪の少女の母から今日アルト達が休む部屋に案内され、そこで男三人で休む事となった。

「あなた達は早くここを立ち去った方がいい。ここにいたら良くない事ばかり起きるわ……」

 そこで着替え等を渡した紫髪の少女の母はそう言い残し、静かに部屋を出た。

「良くない事って何だ?」

 その紫髪の少女の母の態度にケレスは首を傾げる。

「さあな。まあ、とりあえず今日は休んで明日みんなで帰る事を考えようぜ」

 そんなケレスを見ずに欠伸をしながらジャップは素気無く答えた。

「そうだな。なあ、兄貴。姉ちゃん大丈夫かな?」

「姉貴は大丈夫だ!! いいから早く寝ろ!!」

 だが、ケレスは空気を読めなかった。

 なので怒鳴ったジャップは毛布を頭まで掛け、横になってしまう。

(さすがのジャップも宝珠の国の皇女にお怒りの様だね。

 まあ、当然だが……。

 しかし、先輩とあの金髪の少年とはどんな関係があるんだ?

 あまり雰囲気は良いとは言えないけど、先輩が変な輩と関りがあるとは思えないし……)

 そして、ケレスを見ずに横になったアルトが色々と考えているとアルト以外眠った様だった。

「……グウゥゴゴゴ」

 どちらのかわからないが鼾が聞えてくる。

「……があぁあぐうんん」

 さらにもう一人の鼾も響いてきた。

 この様に二人の鼾はまるで歌っているかの様に共鳴していったのだ。

(全く……兄弟そろって何所でも鼾をかいて、ぐっすり眠れるなんて羨ましいね!)

 そんな鼾の交響曲を聞かされているアルトは苛立っていた。

 ガシガシガシ!

 その交響曲に部屋のドアの方から訪問者を知らせる何かで引っかく音が紛れてくる。

「何だい?」

 起き上がったアルトがドアを開けると、そこにヨルがいた。

「君は確か……ヨル君? こんな夜更けにどうしたんだい?」

 そのヨルにアルトがそう聞くとヨルは何かの意思を伝える様にその場で、くるくる回る。

「僕に何か用があるんだね?」

「ヒャーゴ!」

 それから、しゃがんでアルトが優しく見つめるとヨルはアルトを見つめ何処かへ案内を始めた。

「わかった……」

 そしてアルトがヨルに付いて行くとヨルは紫髪の少女の家を出て行き、

外にある畜舎の前でまた鳴いた

「ここに入ればいいのかい?」

 アルトはその畜舎に入ったが言葉を失ってしまった。

 何故なら、そこにはヨルが大きくなった時より少しだけ大きな姿の老いたフヴェルゲルミルが

辛うじて息をした状態で横たわっていたからである。

「どうしたんだい!?」

 思わずそう叫んだアルトはその老いたフヴェルゲルミルに駆け寄る。

「こ、これは、滅びの呪い!? しかも、ここまで拡がっているのか……」

 そして、呟いたアルトの眉間にはしわが寄ってしまった。

 そう、そのフヴェルゲルミルの体にはくっきりと滅びの呪いの痣が現れていたのである。

 さらにその体は所々膿んでいた。

(これじゃあ彼は、一日も持たない……)

 アルトは彼の変えられない未来を想像し言葉を失った。

「ヒャーゴ……?」

 悲し気に鳴いたヨルはアルトを見上げる。

 そのヨルとアルトは視線を合わせた。

「ヨル君……彼は、君の家族なんだね?」

「ヒャーゴ!」

「他にも、こんな状態の家族はいるのかい?」

「ヒャーゴ……」

 ヨルと話していく内にアルトの声はふるえ出す。

 そして、ヨルの声は徐々に悲しくなっていった。

(そうか……。

 ヨル君は奇跡的に滅びの呪いを享けてはいないが、

他のフヴェルゲルミル達は滅びの呪いを享けてしまったんだね……。

 でも、滅びの呪いを僕ではどうする事も出来ない……。

 だが、何か出来る事はあるはずだ!!)

 そう、滅びの呪いを享けた全てのものはアルトが使う治癒術では治す事は出来ない。

 それを治す事が出来るのは、ダーナの祈りの力の一つ、浄化の力だけなのだから……。

 それをわかっているアルトがある事を決心するとアルトの眉間のしわは無くなった。

「僕に君の家族を診せてもらえるかい?」

 それからアルトがヨルに視線を移すと、

「ヒャーーゴ!」

と、鳴いたヨルはアルトを他のフヴェルゲルミル達の処へ案内してくれた。

 だが、他のフヴェルゲルミルも老いたフヴェルゲルミルと同じく、滅びの呪いを享けており、

彼等が辿る悲しき運命にアルトが出来る事は全く無かったのである。

(くそっ!! 僕じゃ何も出来ない!! 結局、何所でも僕は無力なのか!?)

 立ち尽くしたアルトは唇を噛みしめる。

「ヒャーゴ!」

 だが、ヨルは他のフヴェルゲルミルの傍に寄り添い、励ます様に鳴いたのだ。

「君は、強いんだね……。僕も見習わなきゃいけないな!」

 そのヨルの姿を見たアルトはこの畜舎で横たわっているフヴェルゲルミル達に近づき、

自身が出来る事を始めた。

 まず、彼等は怪我をしているものが多く、アルトはその彼等に治癒術を施した。

 それからアルトはフヴェルゲルミル達の汚れを取ろうと考え、

一旦紫髪の少女の家に戻り、布と水を借りて彼等を拭いた。

 その作業を他の畜舎でも数回行った。

 そんなアルトが紫髪の少女の家にまた戻ると、

何故か毛布に包まったケレスがいたのである。

「君、何してるのさ? そんな格好で……」

 そのケレスにアルトは思わず声を掛けてしまった。

「アルト!? お前こそ何をしてんだ?」

 ケレスの目は丸くなる。

 そのケレスとアルトは話す事にした。

「僕が先に質問してるんだけど……。

 まあ、いいさ。僕はヨル君に頼まれて彼女の家族の様子を診せてもらっていたんだ」

「ヨルの家族? どうかしたのか? と言うか、ヨルと、アルトは話せるのか?」

「話せないけど僕は彼女達の気持は、わかる。

 君もヨル君の家族を見てみるかい? 僕が話すより、早いから」

 アルトと話している間、ケレスは毛布に包まったままだった。

 そのせいで呆れたアルトの声に溜息が混じる。

 そんなアルトは答えを示すべくヨルの家族の所へケレスを案内した。

「この霊獣達がヨルの家族なのか!? だけど、何か弱ってないか?」

 そして、答を示されたケレスはアルトの少し後ろで立ちつくす。

 するり……。

 そのケレスの体から毛布が落ちた音が聞えた。

「ああ、そうだね。彼らはヨル君の家族で、手の施しようがない程弱っている」

「何かの病気なのか?」

「病気と言えばそうなのかもしれないが、これは滅びの呪いだ」

 アルトは溜息を漏らしながらもケレスの問いに答えていった。

「滅びの呪いだって!? じゃあ、こいつらは、もう……」

 ケレスは息を飲む。

 どうやらケレスも滅びの呪いの末路を知っているみたいだ。

「アルト、お前でも呪いを何とか出来ないのか?」

「無理だね。

 僕が出来る事と言えば彼等の傷を治して少しでも負の気持を減らしてあげる事ぐらいだ。

 そうする事で彼らを魔物や祟り神にする可能性を減らす事が出来るかもしれないからね」

 ケレスが無茶な申し入れをしてきた。

 そんなケレスを見ずに話したアルトは横たわっているフヴェルゲルミルに治癒術を施し始めた。

「なあ、アルト。一三年前の事もあるけど、災いはアマテラス様によって全て消えたんじゃないのか?

 それなのにこの国はどうしてまだこんなに土地も生き物も寂れていて、呪いがあるんだ?」

 またケレスの声がアルトの背後から聞こえる。

「アマテラス様は太陽の化身だ。

 一二年前のアマテラス様の加護は君達の国や僕達の国を照らしたけど、

剣の国は照らさなかったんだ。

 だから、この国は災いや呪いを享けたままみたいだね」

 振り返らずにアルトは治癒術をかけ続けた。

「はい、終わったよ。少しは痛みがとれたかい?」

 それから治癒術をかけ終わったフヴェルゲルミルにアルトが聞くと、

「ひゃー……」

と、返事をする様にそのフヴェルゲルミルはか細い声を出した。

(こんな国、か……。

 君達の様に何も悪い事をしていないものにまで対し、

どうしてアマテラス様は加護や恩恵を授けなかったんだろうね……)

 アルトは胸が苦しくなる。

「君は、祟り神とか、魔物になっちゃ駄目だからね」

 そして、自身が言葉にした事に対しての贖罪の意を込め、そのフヴェルゲルミルを優しく撫でた。

「アルト。祟り神や魔物は普通の霊獣からなるのか?」

「霊獣だけじゃないよ。どんな生き物からもそうなってしまう可能性はある。

 災いが滅びの呪いを生む限り、それは避けれないんだ。

 そして、弱く、清らかなものから呪いは侵し始める。このコ達みたいにね」

 アルトの背後からまたケレスの声が聞こえ、今度は振り返ったアルトはケレスを見つめた。

「そろそろ部屋に戻ろう」

 それからケレスを誘ったアルトは畜舎を出て行った。

 だが、この様にアルトがケレスを連れ出したのには、ちゃんと理由があった。

 次回【因縁の国 ~本音 仮定から確信へ~】 

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