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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第三章 因縁の国
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017 ~考察と信頼~

 紫髪の少女に付いて行くとそこには姿を変えたヨルがいた。

 そのヨルに乗ってアルト達は紫髪の少女の家に向かう事となったが、

そこでも宝珠の国の皇女の身勝手さが発動する……。

 色々とあったがアルト達は紫髪の少女の祖父の家を出た。

 すると、そこにはアルト達全員が乗っても大丈夫な大きさに変化したヨルがいたのである。

(へえ……あの少女も霊獣を扱えるんだね。

 それにしてもヨル君は凄いよ。こんなに大きくなっても美しさを保っているなんて!)

 そのヨル達を見たアルトは感心した。

「うわあ! 温かくて、ふわふわしてるんだね!」

 そして、楽しそうなラニーニャと たぬてぃはヨルの上に既に乗っていた。

「先輩!? いつの間に……」

 そのラニーニャに少し呆れたがアルトはヨルの傍に行った。

「ははっ。姉ちゃん、意外と積極的だな。さて、俺達も乗るか?」

「私、乗らない」

 だが、そのアルトを他所にケレスから誘われた宝珠の国の皇女は不貞腐れた言い方をし、

ヨルに乗る事を拒絶したのである。

(何を言っているんだ!? 宝珠の国の皇女はここが何処だかわかっているのか?)

 アルトの口は開いたまま塞がらなかった。

 そして、ケレスは宝珠の国の皇女から無茶ぶりをされ続けて困っていた。

(さて、どうするか……。朱雀達は、疲れている。

 それに、恐らくこれから向かう場所は、フェンリル山だ。

 そこに行くとなれば彼等だけでも進むのが大変なのだが……)

 アルトはケレスに同情しつつ、これからの事を考えていた。

「よっと、オルト、頼むぞ! ケレスも、ララに乗るんだ!」

 すると、オルトに乗ったジャップがアルトを見つめてきたのである。

(なるほど、そういう事か……)

 そのジャップの意思を汲み取ったアルトは表情を緩める。

 そんなアルトの意思が通じたジャップの表情も緩んだ。

「アルト、姉貴を頼んだ!」

「君に言われなくても、わかってるさ」

 アルトはジャップから視線を外しヨルによじ登る。

「ヨル君、頼んだよ」

 それからアルトがヨルを優しく撫でるとヨルはこの一帯に轟く鳴き声を上げて進み始めた。

(さすが、フヴェリゲルミル族だ。この地を意図も簡単に進めるなんて。

 しかし、朱雀達は大丈夫だろうか?

 全く、何を拗ねているのかはわからないけれど、

宝珠の国の皇女は朱雀達の事を考えてほしいものだね!)

 眉間に大分しわが寄ってしまったアルトがヨルの上で色々と考えていると、

「アルト、ごめんね……」

と、いきなりラニーニャから静かに声を掛けられた。

「どうして先輩が謝るんですか!?」

 アルトの目は丸くなる。

「だって、アルトは私が来たから一緒に来たんでしょ?

 迷惑を掛けちゃったっていうか、その……」

「そんな事を気にしていたのですか? 僕は迷惑だなんて思っていませんよ?

 それに、先輩がどうこう言わなくとも、ジャップから無理にでも連れて来られたでしょうし」

 ラニーニャは相変わらずだった。

 だから、アルトから、ふっと笑みが零れる。

「アルト……。アルトは、本当に優しいんだね。ありがとう」

「せ、先輩!? そ、そんな事は、な、ないですよ……」

 きょとんとした顔になったラニーニャは穏やかな顔になり、アルトを見つめてきた。

 すると、アルトの目は泳ぎ、指は勝手に遊び出してしまったが、

「あーーっ! お姉さんと、青色お兄さん、顔が、真っ赤だ!!」

と、嬉しそうに叫んだ紫髪の少女が、キャッキャッと笑い出したのだ。

 その紫髪の少女の叫びで、アルトの顔は赤く染まる。

 さらに、その手も目の動きも止まってしまった。

「な、何を言っているんだい!?」

「わあ! 青色お兄さんたら、照れてる!!」

「いい加減にしないか!! 大人を揶揄うな!!」

「ごめんなさーい!」

 アルトは怒ったが紫髪の少女には効果がなかった。

 それどころか、さらに揶揄ってくる。

 なのでアルトは背筋を伸ばして注意してみたが紫髪の少女から適当に謝られてしまった。

 そんな紫髪の少女は飽きもせずにまだ、キャッキャッと笑い続けていた。

「もう、未来ウェイライちゃん! そんなに揶揄わないで!!

 アルトは私なんかには不釣り合いなくらい、凄い人なんだよ?」

 その笑い声にラニーニャの顔は赤くなっており、顔を顰めた。

「そうか? お姉さんと、青色お兄さんは、とても似合ってるぞ?」

 だが、紫髪の少女は口を窄めて瞬きする。

 しかも、アルト達がさらに赤面する事を平然と言い放ったのだ。

(全く!! 彼女は何を考えているんだ!?

 それに、先輩だって僕より自分の方が凄い癖に!!)

 なのでアルトはやきもきしてしまった。

「おーい、未来ウェイライ。悪いが、俺達もヨルに乗せてくれないか?」

 そんな中、ジャップから声を掛けられた。

(そろそろフェンリル山か……。この辺が妥当だろうね。

 さすが、ジャップ。こういう事には気付くんだから!)

 頬の火照りが冷めていっているアルトは一つ頷く。

「いいよ、お兄さん」

 そして、紫髪の少女はヨルの足を止めさせた。

「ケレス、ミュー。お前達、ヨルに乗り換えるぞ!」

 それからそう言ったジャップはオルトから降りたが、

ララの背で宝珠の国の皇女はまだヨルに乗る事を拒んでいたのだ。

(全く……いつまで駄駄を捏ねているんだい?

 これ以上、朱雀達に負担を掛けさせても良いと言うのか?)

 呆れたアルトの眉間にしわが寄る。

「ミュー、兄貴の言う通りだ!! ララ達にこれ以上負担をかけさせられない!!

 みんなで宝珠の国に帰る為にはそうするのが一番だ!!」

 だが、ケレスの説得で宝珠の国の皇女は嫌々ながらもヨルに乗り換えた。

「いくぞ、少し急ぐから、しっかり捕まっていろ!」

 そして、紫髪の少女がヨルに急ぐ様に命令するとヨルはスピードを上げ走り出し、

それに朱雀達は遅れずに付いて来ていた。

(ああやって見るとケレスも大変だね。僕にあんな我儘な妹がいなくて本当に良かったよ!)

 朱雀達への心配がなくなったアルトの眉間のしわは無くなった。

 そのアルトの耳にこんな会話が聞こえて来る。

「本当だ! ララとは違う温かさだ!?」

「ヨルちゃんの体毛は寒さを弾き返すんだ!」

「寒さを弾き返す?」

 そう、相変わらず無知なケレスと、そうでない紫髪の少女との会話。

 その会話中、ケレスはパチクリと瞬きした。

 その仕草で恐らくケレスはあまり理解していないとアルトは思った。

「ヨル君は、フヴェリゲルミル族だ。

 彼女の一族は極寒の寒さを生きぬく為、体毛がそれに適応し、

温かいだけでなく寒さを受け入れない様に進化している。

 だから、彼女達の毛は剣の国では大変重宝されている」

 ケレスに視線を移したアルトは説明する。

「ほう、さすが博識のアルト! と言うか、ヨルはメスなのか!?」

 すると、ケレスは感心したがヨルがメスだった事にかなり驚いていたのである。

(彼は本当に失礼だね……。もう少しデリカシーを持たないと、いずれ失敗するだろうね)

 アルトの口から溜息が漏れる。

「そうだ! ヨルちゃんは女のコだ。だから、特に毛は ふわふわしてる!」

「ははっ! それはわからなかった。何にせよ、温かいな。ミュー?」

 そして、紫髪の少女からヨルを自慢されたケレスは案の定、

宝珠の国の皇女に話を振ってしまったのだ。

「クリオネだって女のコだよ!!

 しかも、炎のマナのおかげでそんなコよりずっと、温かいんだから!!」

 その結果、宝珠の国の皇女はクリオネを抱きしめ剥れてしまった。

(ほら、思った通りになってしまったじゃないか……。

 今は宝珠の国の皇女はあの少女を毛嫌いしていたというのに……)

 瞳を閉じたアルトはまた溜息を漏らす。

 だが、そんな事があっても紫髪の少女の好意によりこれから紫髪の少女の家に向かう事となった。

 そして、アルト達を乗せたヨルはフェンリル山をどんどん登って行き、ある所で足を止めた。

「着いたぞ、あれが私の家!」

 すると、紫髪の少女はある家を指差しながら嬉しそうに案内を始めた。

 そんな紫髪の少女に案内された家は家というより牧場に見えたが、

そこには何の動物もおらず、使われていた形跡はほとんど見られなかった。

(ここが、あの少女の家か……。しかし、何故彼女はこんな所に残っているんだ?)

 アルトは色々と考察していた。

「帰った!」

 すると、そう言いながら家に入った紫髪の少女はある人物から出迎えられる。

 次回【因縁の国 ~観察と安らぎ そして、苛立ち~】 

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