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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第三章 因縁の国
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016 ~出会いと驚き~

 紫髪の少女の好意とラニーニャの気持を大事にしたアルトは色々と指示した。

 だが、アルトの内心ではそれだけではクリオネは助からない事がわかっていた。

 そんなアルトの前に白き猪の霊獣が姿を見せる。

 そして、その白き猪の霊獣を観察していたアルトの前で信じられない事が起きる……。

(栄養だけではクリオネ君は回復しないのだが……)

 ラニーニャにああは言ったものの、アルトは内心ではそう思っていた。

 だが、アルトは表情変える事なく色々と支持したのである。

 すると、それをラニーニャがその通りに行いクリオネに柿と牛乳を与えた。

「クリオネ、おいしかった?」

「ワン」

 それらを与え終えたラニーニャにクリオネは一度だけ鳴き、その声は少しだが元気そうだった。

(まあ、これが限界だね。

 早くこの国から帰還してマナを与えなきゃ、クリオネ君は危ないな……)

 そう、クリオネは祟り神を追い払う為、自身の生命エネルギーであるマナを使い果たしていたのだ。

 そのマナの枯渇状態は唯、栄養のある食べ物を接種すれば治るものではない。

 その状態はクリオネなら例えば仕えている守り神からのマナの供与による補給でなければ

治らないのである。

(でも、宝珠の国の皇女は自分の霊獣なのにどうして世話をしてあげないんだ?)

 アルトは宝珠の国の皇女を怪訝な目で見た。

 何故なら宝珠の国の皇女は自身の霊獣の事であるにもかかわらず見ているだけだったのだ。

 そんなアルトの前でメタがまたラニーニャのリュックをゴソゴソとあさり出した。

「もしかして、リンゴをあげてって言ってるのかも!」

 そのメタの態度でラニーニャが自身のリュックから赤き女王を取り出すと、

クリオネが体を起こして赤き女王をほしがる様に、ヒューンと鼻で鳴いた。

(まだ食べれるのかい? ちょっと、食べ過ぎだとは思うけど……。

 まあ、ここまで走って来たから大丈夫だろう)

 そのクリオネをアルトが観察していると、

いつの間にかラニーニャの腰付近に小さく新雪の様に真っ白なウリ坊がいたのだ。

 その真っ白なウリ坊はラニーニャが持っている赤き女王を盗ろうとしていた。

 それを紫髪の少女は止めたがラニーニャは赤き女王を半分に切り分けて片方をクリオネに、

もう片方をその真っ白いウリ坊に与えたのである。

(先輩、それをあげてしまったら……)

 複雑な気持ちになったアルトの口は少し開く。

「このコ、未来ウェイライちゃんの霊獣? かわいいね」

 だが、そんなアルトの気持は露知らず、ラニーニャは無邪気に笑っていた。

「はい。私の霊獣、ヨルちゃんって言うの」

 そして、顔を上げて笑った紫髪の少女はヨルを紹介した。

(ふーん……彼女は、ヨル君というのか。恐らく、彼女はフヴェリゲルミル族。

 この地であんなに美しい姿でいられるとは、驚きだ!)

 アルトはしげしげとヨルを見つめた。

 フヴェルゲルミル族とは、剣の国にいる白い体毛と牙を持った猪の姿をした霊獣の事である。

 そのフヴェルゲルミル族の体毛と牙は雪のマナの美しさに比例して美しさを増す。

 なのでマナが不足しているこの地でヨルが真っ白い新設の様な美しい体毛を維持しているのは

奇跡的な事なのである。

 そんなヨルをアルトは、じっくりと観察していた。

「おっと! クリオネ。元気になったんだね!」

 すると、ラニーニャの嬉しそうな声が聞えたのである。

(えっ!? どうなっているんだ? クリオネ君は、もう回復したとでも言うのか!?

 信じられない……もしかして、これも、アマテラス様の御加護のおかげなのか!?)

 目の前の後継に動揺したアルトの口は、ぽかんと開いた。

 そう、マナが不足し、マナの補給以外で回復するはずのないクリオネが

不思議な事にラニーニャに元気良くじゃれていたのだ。

「クリオネ!! そんな事しちゃ、駄目!!」

 瞬きを忘れる程驚いているアルトの耳に今度は宝珠の国の皇女の怒号が聞えた。

 その宝珠の国の皇女はクリオネをヨルから引き離し、紫髪の少女を睨みつけた。

(全く……ああうるさいんじゃ、考える事も出来ない!!

 しかし、余程の事があったのだろうけれど、あそこまでの態度をしなくとも良いだろうに……)

 苛立ったアルトの口は、ギュッと閉まり、眉間にしわが寄る。

「まあまあ、ミュー。落ち着けって! クリオネは見つかったんだし。

 それよりどうやって宝珠の国に帰るか?」

「そうだね。海は氷が熔けている可能性が高いから海は使えないだろうね」

 ジャップは普段と変わらなかった。

 そのジャップのおかげでアルトは自身を落ち着かせる事が出来、見解を述べる事も出来た。

「なあ、未来ウェイライ。この辺に街はあるか?」

「ない」

 だが、ジャップは紫髪の少女に即答される。

(当然だろう。ここが何所かわかってないのかな?)

 なので眉間にしわを作ったアルトは冷ややかな目でジャップを見つめた。

「そっか。どうしたもんかな……」

 そして、苦笑いしたジャップは後ろ頭を掻いた。

「街は、遠くにならある。

 でも、街に行くにはフェンリル山を越えてそれから歩いて二日はかかる」

 そのジャップに紫髪の少女は俯いたまま教えた。

「マジか!? そんなにかかるのか!! はあ、あと何回野営しなきゃいけないんだ……」

「この国で野営なんて無理だ!! 昼でも、夜でも魔物が出る。

 それにお前達の様な服ではフェンリル山で凍死するぞ!!」

 大きな溜息の後ケレスが肩を落とすと、顔を上げた紫髪の少女は当たり前の事を教える。

 フェンリル山とは剣の国で一番高く聳え立つ雪山の事である。

 だが、フェンリル山は一三年前のヘルヘイムで起きた大いなる災いによる影響が及び、

今では雪がほとんどなくなってしまっている。

「そんな!? どうしたらいいんだ?」

 また絶叫したケレスは両手で頭を抱えた。

未来ウェイライちゃん。私達、宝珠の国に帰りたいの。何か方法知らないかな?」

「ある」

 すると、優しい声のラニーニャに聞かれた紫髪の少女は頷く。

未来ウェイライちゃん、その方法を教えてほしいんだけど……」

「いいよ、お姉さん。付いてきて」

 それからラニーニャに頼まれた紫髪の少女は席を立った。

(さすが、先輩だ。宝珠の国の皇女は見習わないといけないね!

 だが、あの少女は何所に僕達を案内する気なのだろう……。

 それに、例え一時的に僕達が助かったとしても、ここは剣の国って事には変わらない。

 面倒な事になりそうだね……)

 アルトに一抹の不安が過ったが紫髪の少女は部屋を出て行った。

 そして、その紫髪の少女にラニーニャが付いて行こうとした時だった。

「お姉ちゃん!? あんなコの言う事、信じていいの?」

 こんな宝珠の国の皇女の怒鳴り声が響いたのである。

「大丈夫だと思うけど?」

 その声でラニーニャの足は止まり、キョトンとした顔を宝珠の国の皇女に向けた。

「何でそんな事を言えるの? あのコはクリオネが警戒してたんだよ?

 また変な事をしたり、嘘をついてるかもしれない!!」

 すると、宝珠の国の皇女の顔は険悪なものとなった。

(やはり、宝珠の国の皇女とあの少女の間には何かあったみたいだね)

 アルトは確信する。

「今はクリオネは警戒してないよ。仲良くしたそうだったし。

 それに、あのコは嘘をついてないと思う。信じていいと思うよ」

「お姉ちゃんは何も知らないからそんな事を言えるんだ!!

 クリオネだって、私の方が気持ちがわかるし。私、あんなコなんて信じないから!!」

 それからラニーニャは宝珠の王女の意見を否定した。

 すると、そのラニーニャを宝珠の国の皇女はさらに険悪な顔で睨みつける。

 その宝珠の国の皇女にアルトは心の中で何かが燻っているのがわかった。

(宝珠の国の皇女は言い過ぎじゃないか? あんな風に言ったら、先輩が気の毒だ!!

 それに、クリオネ君は先輩の言う通り、ヨル君を警戒等していないのに……。

 全く、少しは状況を理解するべきだね!!)

 アルトの心の中で何かが沸々と煮えたぎってくる。

(まあ、僕が言い過ぎだなんて言える立場ではないけど……)

 だが、心の奥にある何かもやもやした気持ちからそれは冷やされていった。

 そんなアルトが紫髪の少女の祖父の家を出ると、そこにはアルトを驚かす事が待っていた。

 次回【因縁の国 ~考察と信頼~】

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