015 ~無知なる者への教えと出会い~
アルトは遂に因縁の国である剣の国へと来てしまった。
そう、剣の国と水鏡の国にはある因縁がある。
だが、その事を全く知らないケレスは剣の国を助ける方法を模索する……。
「あ、あの、先輩……」
「ここは、何処なの?」
ラニーニャに気になった事があったアルトは声を掛け様とした。
だが、赤き女王を食べ終えた宝珠の国の皇女からその声をかき消されてしまったのである。
(ああっ!! タイミングが悪い!!)
アルトがむしゃくしゃしていると、
「だって、ここがアルタルフなら雪や氷は何処にあるんだよ?」
と、ケレスの声が聞こえた。
ケレスが言うアルタルフとは、剣の国の南部 アウストラリス地区にある地名の事である。
そしてケレスの言う通り、雪や氷の国である剣の国にもかかわらずこの地にそれ等は全くないのだ。
「一三年前のヘルヘイムの大いなる災いがここまで及んでいるんだろう。
だから、雪や氷がなくここも滅びを迎えようとしているみたいだね」
そのケレスの疑問にアルトは自身を落ち着かせる為にもそう説明した。
大いなる災いとは古より突如その地のマナが無くなり多種多様の災いが起こる現象の事である。
何故それが起きるのかは未だに判明されていないが、
一度それが起きるとその地はいくつかのある対処をしない限り滅びを迎える。
そして、前帝都ヘルヘイムの大いなる災いは先代皇帝 天狼により滅されたが、
一三年前に僅か数日で滅びを迎えてしまったのだ。
そんなヘルヘイムがあった剣の国は鎖国制度を設けている為、
実際どのぐらいの被害者が出たか定かではないがかなりの死人が出たとアルトは風の噂で聞いている。
「俺、この国の者じゃないけど何とかならないのか?」
説明し終え少し落ち着きを取り戻したアルトに無知なケレスから問いが飛んで来る。
「ならない事はないけど……」
「アルト!! 何か知っているんなら方法を教えてくれ!!」
それに答えたくなかったアルトは言葉を濁した。
だが、ケレスはそんなアルトを必死に見つめてきたのだ。
(ああっ、もう!! 何も知らないからこんな国を助けたいとか考えるんだよな!!
この国は自業自得だというのに!!)
カチンッときたアルトの眉間にしわが寄る。
「知った所で、君がどうか出来る話じゃないんだけど?」
「アルト、頼む!!」
アルトは意地の悪い言い方になった。
それでも、ケレスからしつこく嘆願される。
(本当……無知な者は嫌いだ!!
それに、自分では何も出来ない癖に何でも出来るなんていつまで思ってるんだい!!)
アルトは遂に抑えていた何かが外れてしまった。
そして、大きな溜息が出る。
「……救いの神子様の力なら出来るかもね」
そんなアルトはケレスと目を合わさずにそれを教えてしまったのだ。
大いなる災いが滅んでもその地の全てを滅ぼす滅びの呪いがある限り、
今のアルタルフの様にどんどん他の地も滅びを迎える。
そして、その滅びの呪いを消し去る力はこの世でたった一つ、ダーナの浄化の力だけである。
だが、ここまで滅んだ地の浄化をするのは救いの神子である花梨以外では無理な話だったのだ。
この事をアルトは知っていたがある理由から剣の国を毛嫌いしている。
だから、この事を言いたくなかったのである。
「それって、花梨様なら出来るって事か?」
「そうだ! 花梨様の浄化の力なら、きっと出来る。
でも、君も知っての通り花梨様は昴から出られないんだ。
だから無理だろうね」
「そんな!! 無理の一言で解決するのかよ?」
アルトは絶対にケレスと視線を合わさない様にした。
それはこれ以上イライラしたくなかったからである。
だが、ケレスはアルトと視線を幾度となく合わそうとした。
それでも視線を合わそうとしないアルトの眉間にさらにしわが寄ったが
ケレスはアルトを苛立たせる事を続けたのである。
「仕方がないだろう!! だから、君がどうにか出来る話じゃないって言ったんだ!!
それに、君達がこんな国を助けなくともいいだろう!!」
そのケレスのしつこさにアルトは根負けしてしまった。
そして、ケレスと視線を合わせたアルトは言葉に乗せむしゃくしゃした気持ちもぶつけてしまった。
「ケレス! 私、花梨に頼んでみる!!
だから、そんな顔しないで。花梨なら、きっと助けてくれる!
私達が災いを祓って花梨に安心して世界をまた救ってもらおう!」
すると、宝珠の国の皇女がまた呆れる事を言い出したのだ。
(何も知らないからそんな事を平気で言うんだ……。
この国が今まで何をしてきたのか知らないのか?
まあ、いいさ……花梨様はこんな国を救ったりはしない。いずれわかるだろうね)
そんな宝珠の国の皇女達を冷ややかな目でアルトが見ていると、
ララが急に顔を上げて宝珠の国の皇女に何かを伝え様としたのである。
「もしかして、クリオネが近くにいるの?」
だが、宝珠の国の皇女でなくララの気持はラニーニャに伝わった。
「キューン」
「ララ、お願い! 私達をクリオネの所に連れて行って!」
それがわかったララが高い声で鳴いてラニーニャに擦り寄ると、
ラニーニャはララと視線を合せる。
それからララは、付いて来いという様に尻尾を速く横に振り、何処かに案内を始めた。
そんなララの先導である平屋まで行くと、
宝珠の国の皇女が勝手にある家の中へ入ってしまった。
(全く……これで宝珠の国は大丈夫なのか?)
アルトは心配しながらも宝珠の国の皇女に付いて行く。
すると、ある綺麗な部屋にクリオネはおり、宝珠の国の皇女はクリオネとの再会に喜んでいた。
だが、
(これは……かなり彼女は弱っている!?
恐らく、あの猪の祟り神を追い払うのにマナを使い過ぎたんだろう。
さてさて……彼女のマナをどうやって回復させようか。
この国にマナに溢れているものがあればいいんだけど……)
と、色々と考えながらアルトはクリオネを見ていたのである。
すると、誰かがこの部屋に入って来た。
その人物にアルトが目を転がすとそれは紫髪をショートボブにした色白の痩せた少女だった。
そして、その少女の瞳は髪と同じ色で、その顔は天真爛漫をそのまま表した様だった。
そんな紫髪の少女は両手に物を抱えて入って来たが、
「あ、あなた!? 何でここにいるの!!」
と、宝珠の国の皇女はその紫髪の少女を見るや否や、怒鳴りつけたのだ。
すると、その紫髪の少女は持っていた物を落として逃げ様としたが、
ラニーニャがそれを停め、色々と話を聞き出す事に成功した。
その中で紫髪の少女の名は、白 未来。
そして、この家はその紫髪の少女の祖父の家だという事がわかった。
そんな紫髪の少女からラニーニャが話を聞き出している間、
何故か宝珠の国の皇女はずっとその紫髪の少女を睨んでいた。
(何やら宝珠の国の皇女と、あの少女は何かあったみたいだね。
それにしても、あんな風に怒鳴ったら聞ける事も聞けなくなってしまうのに……。
全く、宝珠の国の皇女はもっと考えて行動してほしいものだね!)
アルトは冷ややかな目で宝珠の国の皇女を見物していた。
「そのコ、お腹、空いてるんじゃないかと思った。だから、果物と、牛乳を持って来たんだ」
すると、紫髪の少女は下を向いたまま果物と牛乳を持って来た理由を話す。
「そう、わかった。じゃあ、これ、クリオネにあげるね!
アルト。この果物と牛乳をクリオネにあげてもいいかな?」
そして、拾った果物を見つめていたラニーニャはアルトに視線を向けた。
そのラニーニャから見せられた果物をアルトは見つめる。
その果物はどうやら柿の様だったが、見栄えは決して良いとは言えなかった。
「大丈夫とは思いますが……まず、僕が食べても宜しいでしょうか?」
その柿を見てそう言ったアルトは一つ息を吐く。
「未来ちゃん、どうかな?」
「いいよ」
すると、ラニーニャから優しく見つめられた紫髪の少女は俯いたまま呟く様に答えた。
それからアルトがその柿の毒見をすると、その柿はあまり甘くはないが食べれたので、
「まあ、大丈夫でしょう。この果物にはクリオネ君にとって大切な栄養がありますから」
と、言ったアルトだったが、内心では違う事を考えていた。
次回【因縁の国 ~出会いと驚き~】




