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第8話 灯りの届く場所まで

「オルクス地下迷宮、第十二層で崩落。パーティーが取り残されてる」


ギルドの受付から依頼を受け取ったリントの声が、いつもより硬かった。


「生存確認は?」


「壁の隙間から声が届いたそうだ。ただし――空気の通りが悪い」


その一言で、全員の表情が変わった。


*


地下迷宮の第十二層は、崩れた岩と土埃で視界が悪かった。天井の一部が崩落し、通路の先を完全に塞いでいる。


「ここから先、この瓦礫の向こうに三人いるらしい」


リントが瓦礫の隙間に耳を当て、しばらく動きを止めた。


「……声がする。生きてる」


「掘るか」


ガレオンが瓦礫に手をかけようとするのを、リントが止めた。


「待て。ここの岩、崩れ方が不自然だ。下手に動かすと、二次崩落を起こす」


「どうする」


「別のルートがある。少し遠回りだが、上の層から迂回できる」


シャーロットは、瓦礫の向こうに向かって声をかけた。


「聞こえますか。今、別の道から向かいます。動かず、待っていてください」


くぐもった声が、微かに返ってきた。「はい」という、弱々しい返事だった。


*


迂回路は、狭く入り組んでいた。フィンの速さが活きる場所ではない。代わりに、彼は風の魔力で瓦礫の隙間から新鮮な空気を送り込みながら、慎重に進んだ。


「風を、通してるだけっす。無理に進むと崩れる」


三十分近くかけて、ようやく反対側の空間にたどり着いた。


三人のパーティーが、身を寄せ合うようにして座り込んでいた。一人は腕を岩に挟まれて動けず、もう一人は土埃を吸い込んだのか、咳が止まらない。もう一人は、放心したように壁にもたれていた。


「もう、駄目かと……」


腕を挟まれた男が、掠れた声で言う。


「来ました。まず、呼吸を楽にします」


シャーロットは咳の止まらない冒険者に手を添え、気道の炎症を抑えながら、荒れた呼吸を整えていく。それから腕を挟まれた男の元へ移り、慎重に状態を確認した。


「骨は折れていません。ただ、長時間圧迫されています。解除する前に、少し待ってください」


シャーロットは男の腕から肩へ魔力を通した。滞っていた血流が一気に戻らないよう、循環を慎重に整えていく。


「……今です。ガレオン、岩を少しだけ持ち上げてください」


「分かった」


ガレオンが岩に手をかけ、ゆっくりと荷重を抜いていく。圧迫が緩んだところで、シャーロットが男の腕を慎重に引き抜いた。


「今、痛みを抑えます。動かせる状態にします」


シャーロットが処置を終える頃には、放心していた三人目の冒険者も、ようやく我に返ったように瞬きを繰り返していた。


「帰れる、のか……」


「帰ります。全員で」


*


迂回路を戻る道のりは、来た時よりも長く感じられた。それでも、四人と三人は、一歩ずつ、灯りの届く場所を目指して進んでいった。


地上に出た時、三人のうちの一人が、崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。


「ありがとう、ございました……」


シャーロットは、短く頷いた。


「無事で、良かったです」


隣で、リントが小さく息を吐いていた。


「今日のは、骨が折れるかと思った」


「掘る仕事の骨か、俺たちの骨か、どっちだ」


ガレオンが問うと、リントは初めて、かすかに口の端を上げた。


「……両方だな」

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