第31話 嚙み合わない四人
「今日は、四人まとめて動いてもらう」
リントが、そう告げると、ノル、ミュリエル、バロン、ケインの四人は、それぞれの顔を見合わせた。
拠点近くの荒れ地に、負傷者役の人形が三体、離れた位置に配置されている。想定は、複数遭難者の同時捜索だった。
「合図で開始する。俺たちは口を出さない。見てるだけだ」
ガレオンが、腕を組んだまま言う。フィンとシャーロットは、少し離れた岩の上に座っていた。
「始め」
*
ノルが先頭を切って走り出す。だが、途中で人形の一体を見落とし、通り過ぎてしまった。
「あ――」
「戻れ! 一体分、置いてきてる!」
バロンが叫ぶ。ノルが慌てて引き返す間、ケインが一人で先に人形を担ぎ上げようとして、重さに体勢を崩した。
「一人じゃ無理だ、待て!」
ミュリエルが駆け寄り、支えようとする。だが手が滑り、三人まとめて地面に転がった。
「痛――」
「大丈夫ですか」
「大丈夫、です……」
岩の上で、フィンが小さく噴き出した。シャーロットは、何も言わずにその光景を見つめていた。
*
一通り訓練が終わると、四人は、砂だらけの姿で地面に座り込んでいた。
「全然、駄目でした」
ノルが、うなだれて言う。
「見落としたのは、俺の責任です」
「俺も、勝手に叫んだだけで、指示になってなかった」
バロンが、頭をかいた。
「ちゃんと、二人がかりで運ぶって決めてなかったのが、まずかったと思う」
ケインが、砂を払いながら言う。ミュリエルは、少し俯いたまま、何も言わなかった。
リントが、四人の前に立った。
「悪くない」
「え?」
ノルが、驚いた顔で顔を上げる。
「何が駄目だったか、全員分かってる。なら次は直せる」
ガレオンが、腕組みを解いた。
「連携は、まだ穴だらけだ。だが、穴があると分かってるなら、埋め方はいくらでもある」
*
「全員、動けるところは動けてました」
シャーロットが、静かに言葉を継いだ。
「ただ――ミュリエルさん」
「はい」
「人形を支える時、必要な声かけがありませんでしたね」
ミュリエルは、はっとした顔で、シャーロットを見た。
「支える時、『そっちを持って』と、一言あれば、あの転倒は防げたかもしれません」
「……そう、ですね」
ミュリエルは、拳を握りしめた。
「次は、ちゃんと、声を出します」
「期待しています」
*
その日の夕方、四人の見習いは、疲れきった様子で拠点を後にした。
「思ったより、手強いな」
リントが、ぽつりと呟く。
「ああ」
ガレオンが、短く同意した。
シャーロットは、砂の上に入り乱れた足跡をしばらく見てから、人形を一体抱え上げた。
「片付けましょうか」
「そこは俺らもやる」




