第27話 見習いの一歩
見習いになって十日ほど経った頃、ノルは初めて、実際の救難に同行することになった。
「今日のは、比較的落ち着いた案件だ。無所属の駆け出しが一人、ヴェルダ大森林で足を痛めて動けなくなってる。同行してた仲間が知らせに戻ってきた。場所もだいたい分かってる」
リントが、淡々と説明する。
「お前は俺の後ろにつけ。勝手に前へ出るな」
「はい」
ノルは、緊張した面持ちで頷いた。
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森に入ると、ノルは、これまで教わってきたことを思い出しながら、地面に目を凝らした。
「ここ……足跡が、少し乱れてます。急いでたか、疲れてたか」
リントが、ちらとその場所を見た。
「悪くない。だが、それだけじゃ判断が早い。土の柔らかさも見ろ。ここは昨日の雨で緩んでる。今日の足跡かどうかも確かめないとな」
「……すみません」
「謝る必要はない。今、気づいたなら十分だ」
*
しばらく進むと、木の根元にうずくまる若い冒険者を見つけた。足首を捻挫し、動けなくなっていたという。
シャーロットが処置を進める間、ノルは、少し離れた場所で、周囲を警戒するガレオンの様子を見ていた。
「戦うんですか」
「必要ならな。今日は、多分要らない」
ガレオンは、短く答えた。
「見てて分かるようになる。今は、覚えとけ」
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帰り道、フィンが背負う負傷者を気遣いながら、ノルは、リントに小声で尋ねた。
「俺、今日、役に立てましたか」
リントは、しばらく黙っていた。
「痕跡の読み方は、悪くない。ただ、まだ周りが見えてない」
「周り、ですか」
「今日、シャーロットが処置してる間、お前はガレオンを見てた。それは悪くない。だが、フィンの負担や、俺の足取りにも、気を配れるようになれ」
ノルは、その言葉を、噛みしめるように頷いた。
*
拠点に戻り、ノルが帰った後、リントがぽつりと呟いた。
「筋は、悪くない」
「そう思います?」
シャーロットが尋ねると、リントは、小さく頷いた。
「半年、ずっと考えてたって話も、噓じゃなさそうだ。地形の見方が、素人にしちゃ丁寧すぎる」
「時間は、かかりそうですね」
「ああ。だが、急いで仕込む必要もないだろ」
シャーロットは、静かに頷いた。
まだ、正式な団員ではない。




