第25話 始まりの合図
「本気で人を増やすと言っても、どこから始めればいいんでしょうか」
翌朝、拠点に集まった四人の間で、フィンが率直に疑問を口にした。
「ギルドに、公募でも出すか」
リントの提案に、シャーロットは、少し考えてから首を振った。
「腕が立つ人なら、それで見つかるかもしれません。でも、私たちに必要なのは、技術だけじゃないと思います」
「戦えるのに戦わない判断ができる。無理な状況で撤退できる。誰かのために、自分の専門外を任せられる」
ガレオンが、静かに続けた。
「そういうのは、公募の紙一枚じゃ分からないな」
「はい」
シャーロットは、頷いた。
「だから、急いで四人を揃える必要はないと思っています。まずは一人ずつでもいい。私たちのやり方を、本当に理解してくれる人から」
「言うのは簡単だけど、そんな人、都合よく見つかるっすかね」
フィンが、苦笑交じりに言う。
誰も、すぐには答えを出せなかった。
*
その日の午後、拠点にギルドの使いが訪れた。
「先ほど、受付にこんな相談がありまして」
職員が差し出したのは、依頼票ではなく、一枚のメモだった。
「以前、皆さんに助けていただいた方から、話があるそうです。依頼ではなく――ご自身の今後について、相談したいと」
シャーロットは、そのメモに目を通した。差出人の名前に、覚えがあった。あの増水したヴェルダ大森林で連れ帰った、二人の若者のうちの一人だった。
「今後について、というのは」
「詳しくは、お会いした時に、とのことでした」
シャーロットは、リントたちと顔を見合わせた。
「行ってみましょう」
*
夕暮れの街を歩きながら、フィンが、少し弾んだ声で言った。
「もしかして、今朝話してたこと、もう始まってるんすかね」
「まだ、分かりません」
シャーロットは、そう答えながら、夕焼けに染まる道の先へと目を向けた。
追われた場所からも、助けられた場所からも、人が集まろうとしている。四人だけで始まった仕事は、もう、四人だけのものではなくなろうとしていた。




