第24話 二つに分かれて
その日、拠点にほぼ同時に、二件の依頼が舞い込んだ。
「ヴェルダ大森林、崖から落ちた冒険者が一人。骨折の疑いあり、意識はある」
「オルクス地下迷宮、毒霧の階層に迷い込んだパーティーが三人。最後に確認された区画は分かってる。三人とも、すでに毒の症状が出始めてるらしい」
リントが、二枚の依頼票を交互に見比べる。
「どっちも、時間との勝負だ」
拠点に、重い沈黙が落ちた。
「分かれるしかない、っすよね」
フィンが、静かに言った。
位置確認のために一時的に分かれたことは、以前にもあった。だが、救難そのものを二人ずつで担うのは、初めてだった。
「毒霧は、私とガレオンで」
シャーロットは、少し考えてから告げた。
「森は、リントとフィン、お願いします」
「毒への対処なら、シャーロットさんがいた方がいい」
リントが、頷きながら言う。
「その分、森ではシャーロットさんの処置なしになる。骨折の程度によっては、簡易固定で済ませるしかない」
「気をつけて動きます」
*
森での救助は、順調に進んだ。リントがすぐに痕跡を見つけ、フィンが慎重に負傷者を確認する。
「たぶん折れてるっすね。ここは動かさない方がいい」
フィンが、覚えたての固定処置で応急手当てを施す。シャーロットのように循環まで整えることはできない。それでも、最低限、搬送できる状態にはできた。
*
一方、地下迷宮では、シャーロットとガレオンが、毒霧の中を進んでいた。
「三人とも、意識はあるが、朦朧としてる」
シャーロットが状態を確認しながら言う。本来ならリントが探すはずの安全な経路も、今日は手探りで進むしかなかった。
「一番症状が重いのは、こいつだ。俺が運ぶ」
ガレオンが一人を担ぎ、シャーロットが残る二人の毒の進行を抑えながら歩かせる。フィンの速さがない分、脱出には、いつもよりずっと時間がかかった。
「くそ、こういう時に、足りないな」
ガレオンが、悔しそうに呟いた。
*
夜遅く、四人はようやく拠点で顔を合わせた。全員、疲労困憊していた。それでも、森の一人も、地下迷宮の三人も、命を落とすことなく生還を果たしていた。
「……何とか、なったな」
リントが、椅子に崩れるように座り込んだ。
「何とか、です」
シャーロットが、静かに訂正した。
「今日は、運が良かっただけです。もし森の骨折がもっと重かったら。もし毒霧がもっと濃かったら」
誰も、それに反論しなかった。
「二手に分かれると、それぞれの現場で、できないことが増えます」
シャーロットは、四人の顔を順番に見た。
「これ以上、この状態を続けることはできません」
「じゃあ、どうする」
ガレオンの問いに、シャーロットは、はっきりと答えた。
「本気で、人を増やします。もう、いつかではなく」
その言葉に、誰も、異論を挟まなかった。




