↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/52

第24話 二つに分かれて

その日、拠点にほぼ同時に、二件の依頼が舞い込んだ。


「ヴェルダ大森林、崖から落ちた冒険者が一人。骨折の疑いあり、意識はある」


「オルクス地下迷宮、毒霧の階層に迷い込んだパーティーが三人。最後に確認された区画は分かってる。三人とも、すでに毒の症状が出始めてるらしい」


リントが、二枚の依頼票を交互に見比べる。


「どっちも、時間との勝負だ」


拠点に、重い沈黙が落ちた。


「分かれるしかない、っすよね」


フィンが、静かに言った。


位置確認のために一時的に分かれたことは、以前にもあった。だが、救難そのものを二人ずつで担うのは、初めてだった。


「毒霧は、私とガレオンで」


シャーロットは、少し考えてから告げた。


「森は、リントとフィン、お願いします」


「毒への対処なら、シャーロットさんがいた方がいい」


リントが、頷きながら言う。


「その分、森ではシャーロットさんの処置なしになる。骨折の程度によっては、簡易固定で済ませるしかない」


「気をつけて動きます」


*


森での救助は、順調に進んだ。リントがすぐに痕跡を見つけ、フィンが慎重に負傷者を確認する。


「たぶん折れてるっすね。ここは動かさない方がいい」


フィンが、覚えたての固定処置で応急手当てを施す。シャーロットのように循環まで整えることはできない。それでも、最低限、搬送できる状態にはできた。


*


一方、地下迷宮では、シャーロットとガレオンが、毒霧の中を進んでいた。


「三人とも、意識はあるが、朦朧としてる」


シャーロットが状態を確認しながら言う。本来ならリントが探すはずの安全な経路も、今日は手探りで進むしかなかった。


「一番症状が重いのは、こいつだ。俺が運ぶ」


ガレオンが一人を担ぎ、シャーロットが残る二人の毒の進行を抑えながら歩かせる。フィンの速さがない分、脱出には、いつもよりずっと時間がかかった。


「くそ、こういう時に、足りないな」


ガレオンが、悔しそうに呟いた。


*


夜遅く、四人はようやく拠点で顔を合わせた。全員、疲労困憊していた。それでも、森の一人も、地下迷宮の三人も、命を落とすことなく生還を果たしていた。


「……何とか、なったな」


リントが、椅子に崩れるように座り込んだ。


「何とか、です」


シャーロットが、静かに訂正した。


「今日は、運が良かっただけです。もし森の骨折がもっと重かったら。もし毒霧がもっと濃かったら」


誰も、それに反論しなかった。


「二手に分かれると、それぞれの現場で、できないことが増えます」


シャーロットは、四人の顔を順番に見た。


「これ以上、この状態を続けることはできません」


「じゃあ、どうする」


ガレオンの問いに、シャーロットは、はっきりと答えた。


「本気で、人を増やします。もう、いつかではなく」


その言葉に、誰も、異論を挟まなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。