第20話 できることから
翌日、シャーロットはギルドの応接室で、受付統括を任されている女性職員と向き合っていた。
「人を増やす、という相談ですね」
「はい。まだ具体的な当てがあるわけではありませんが……何が必要になるのか、知っておきたくて」
職員は、少し考えるように顎に手を当てた。
「まず、装備と訓練にかかる費用。それから、新しい人が一人前になるまでは、教育に人手を割く必要があります。その間は、今まで通り四人全員で依頼に出るわけにもいかなくなるでしょう」
「それは、覚悟しています」
「資金面で言えば……」
職員は、少し言葉を選ぶようにしてから続けた。
「冒険者ギルドには、殉職した冒険者の遺族を支える『救済基金』という制度があります。ただ、これはあくまで、亡くなった方の家族のためのものです。皆さんのような活動資金には使えません」
「そう、ですか」
初めて聞く名前だった。シャーロットは、その言葉を、静かに胸に留めた。
*
拠点に戻り、聞いた話をそのまま伝えると、リントが腕を組んだ。
「結局、金は自分たちで稼ぐしかないってことか」
「今のところは、そうなります」
「なら、地道にやるしかないっすね」
フィンが、あっさりと言った。
「依頼料の一部を、少しずつ積み立てていくとか。すぐには増やせなくても、いつか誰かを雇えるだけの余裕は作れるかもしれません」
「時間はかかるな」
ガレオンが、静かに言う。
「でも、今すぐ人数を揃えるより、そっちの方が確実だと思う」
シャーロットは、四人の顔を順に見た。
「急いで人を増やして、質を落とすわけにはいきません。時間がかかっても、私たちの仕事のやり方を、ちゃんと引き継げる形にしたいんです」
「賛成っす」
「異論はない」
リントも、小さく頷いた。
*
その日から、依頼料の一部を、小さな箱に積み立てることになった。決して大きな額ではない。それでも、四人の間には、確かな方向性が生まれていた。
シャーロットは、その夜、箱の中身を数えながら、ふと「救済基金」という言葉を思い出していた。
亡くなった人の家族を支えるための制度。
生きて帰るための仕組みとは、目的が違う。
シャーロットは箱の蓋を閉じ、それ以上は考えなかった。




