第19話 留守の間に
フェルンハイムへ戻ったのは、出発から五日目のことだった。
拠点に着くなり、リントがギルドへ状況の確認に向かった。しばらくして戻ってきた彼の表情は、硬かった。
「……三日前、森で遭難者が出た。俺たちが留守にしてる間に」
シャーロットは、息を止めた。
「それで?」
「別の冒険者たちが捜索に入ったらしい。だが、見つけるのに丸一日以上かかった」
リントは、淡々と続けた。
「発見時には毒がかなり回ってた。命は助かったが……利き腕には、後遺症が残る可能性が高いそうだ」
拠点に、重い沈黙が落ちた。
*
「俺たちのせいじゃない」
ガレオンが、静かに、しかしはっきりと言った。
「その通りだ。俺たちは遠くにいた。仕方のないことだ」
リントも頷く。
誰もシャーロットを責めなかった。それでも、シャーロットの中には、鈍い痛みが残っていた。
もし、あの時、四人がフェルンハイムにいたら。もし、もう一つの班があったなら。
その「もし」は、確かめようのない仮定だ。それでも、頭から離れなかった。
「フィン」
シャーロットが呼びかけると、フィンが少し驚いた顔で振り返った。
「はい?」
「今日の依頼を確認する前に、少し話したいことがあります」
*
その夜、四人は拠点の狭い一室に集まった。
「これまで、私たちは、四人だから成り立ってきました」
シャーロットは、ゆっくりと言葉を選びながら続けた。
「息が合っている。それぞれの技術も、噛み合っている。だから、うまくいっていました」
「けど、それだけじゃ足りなくなってきてる、って話だろ」
リントが、先回りするように言う。
「はい」
シャーロットは、頷いた。
「同時に依頼が来た時。遠方へ出た時。……そして、今回みたいに、両方が同時に起きた時」
「私たちがどれだけ頑張っても、届かない場所が出てくる」
フィンが、珍しく神妙な顔で口を挟んだ。
「今日、それを実感しました」
「じゃあ、どうする」
ガレオンの問いに、シャーロットは、少しの間、答えなかった。
すぐに答えの出せる問題ではない。人を増やすと言っても、誰でもいいわけではない。育てるには時間がかかる。資金だって、今の依頼料だけで賄えるかどうかも分からない。
それでも。
「考えます。この四人だけで抱え続けるのではなく、この仕事を、続けられる形にする方法を」
窓の外は、すでに夜も更けていた。




