第17話 変わらない選択
銀剣クランの一件から、数日が過ぎていた。
市場でシャーロットが薬草を買い足していると、店主が世間話のように声をかけてきた。
「聞いたかい、銀剣クランの話。今度のことで、クランの中がだいぶ揉めてるらしいよ」
「揉めてる?」
「白魔導師を減らしてから怪我人も増えたし、今回とうとう救難団にまで頼ることになっただろ。若手の間じゃ、前の体制に戻すべきじゃないかって声がかなり出てるらしいよ」
シャーロットは、それ以上聞かなかった。だが、店主は続けた。
「二人亡くなったこともあって、今までみたいには収まらないみたいだね。でも、クランマスターは、今回の事故だけを理由に人員配置を戻すつもりはないらしいよ。遠征事故と白魔導師を減らしたことを直接結びつける根拠はない、とか」
*
その夜、拠点で四人にその話を伝えると、リントが呆れたように鼻を鳴らした。
「まだ数字が足りないってか」
「あいつの立場なら、今回一件だけで全部ひっくり返すわけにもいかんだろうな」
ガレオンが、静かに言う。
フィンが、少し考えるような顔をした。
「じゃあ、このままだと、また似たようなことが起きるかもしれないってことっすよね」
誰も、それを否定しなかった。
シャーロットは、窓の外を見た。あの日、六人を連れて帰った。二人には、間に合わなかった。それでも、あの場所では、まだ同じ判断が続いている。
自分にできることは、いつか誰かが困った時に、迎えに行くことだけだ。それ以上のことは、自分の仕事の範囲を超えている。
分かってはいたが、胸の奥に、小さな重さが残った。
*
翌朝、拠点にはすでに新しい依頼票が届いていた。
「今度はどこです?」
フィンが尋ねると、リントが依頼票を読み上げた。
「隣町の外れ、レンフィード村近くの渓谷。行方不明者が三人。現地でも二日捜したが見つからず、捜索を続けられる人間がいないらしい。……ここ、フェルンハイムから丸二日はかかる」
これまでで、最も遠い依頼だった。
「遠方まで、噂が届いてるってことか」
ガレオンが、感心したように言う。
「受けるんですか?」
フィンの問いに、シャーロットは少し考えた。二日かけて向かい、捜索し、また二日かけて帰る。その間、フェルンハイム周辺の依頼には対応できなくなる。
「現在、フェルンハイム周辺で待っている依頼は?」
「今のところはない」
リントが答える。
シャーロットは、しばらく考えた。
「……受けます。ただし、ギルドには私たちが数日戻れないことを伝えてください。緊急の依頼が来ても、今回は対応できません」
「分かった」
「でも、今後は考えないといけません」
「何をです?」
「私たちが、四人しかいないという事実を」
四人は、しばらく黙っていた。
「まあ、今はまだ、何とかなってるけどな」
リントが、荷物をまとめながら言う。
「そうですね。今は、まだ」
シャーロットは、静かにそう答えると、旅支度を始めた。




