第14話 選択肢のひとつとして
「――というわけで、お困りの際は、通常の討伐依頼とは別に『救難団』という選択肢もございます」
ギルドの受付で、シャーロットはふと、聞き覚えのある言葉が耳に入り、足を止めた。
カウンターの向こうで、まだ若い受付職員が、不安げな顔をした冒険者に何かを説明している。
「仲間が戻らない、というようなご相談でしたら、専門に捜索・救助を行っている方々がいます。討伐目的ではないので、余計な戦闘を避けて動いてくださいます」
「そんな人たちが、いるんですか」
「はい。最近、実績も増えてきていて」
シャーロットは、少し離れた場所で、その様子を見ていた。数ヶ月前は、掲示板の隅に貼られた一枚の紙が全てだった。今は、ギルドの側から、選択肢として案内される存在になっている。
*
その日の依頼は、比較的落ち着いたものだった。無所属の駆け出しが一人、軽い怪我で動けなくなっていただけで、リントが痕跡を追い、フィンが搬送し、半日ほどで終わった。
拠点に戻る道すがら、フィンが伸びをしながら言った。
「なんか、最近楽っすね。前は毎回、これ死ぬんじゃないかってくらい必死でしたけど」
「経験だろ」
リントが素っ気なく返す。
「それだけじゃないと思うっすけどね」
シャーロットは、二人のやり取りを聞きながら、道の先に見えてきた元治療院へ目をやった。
拠点の一室に入ると、フィンとリントはそれぞれの荷物を下ろした。この部屋を借りたばかりの頃は、机も椅子も足りず、床に座って話し合うこともあった。今は、依頼票を整理するための棚まで置いてある。
「変わりましたね、色々と」
シャーロットがぽつりと言うと、ガレオンが短く頷いた。
「まだ、始まったばかりだけどな」
*
その夜、ギルドから共有された依頼記録を整理していたシャーロットの手が、ふと止まった。
一枚の記録、その所属欄に見覚えのある紋章があった。
銀剣クラン。
クラン名義の依頼ではない。銀剣に所属する冒険者が個人で出した、ごく一般的な捜索依頼だった。すでに別の冒険者が受注している。
シャーロットは、しばらくその紙を見つめていた。
いつか、正式にあのクランから依頼が来るかもしれない。以前、フィンにそう聞かれた時、迷わず「受けます」と答えた。その気持ちは、今も変わらない。
それでも、いざその瞬間が近づいているのだと感じると、胸の奥に、小さな緊張が走った。
「どうした?」
リントが、怪訝そうな顔でこちらを覗き込む。
「いえ」
シャーロットは、記録を棚にしまいながら、静かに答えた。
「そろそろ、来るかもしれないと思っただけです」
リントは、それ以上何も聞かなかった。ただ、窓の外に目をやり、小さく息を吐いた。




