第12話 増える声
「救難団」という呼び名が定着してから、依頼の数は目に見えて増えていた。
その日、ギルドに着くと、受付にはすでに二件の依頼が待っていた。
「一件は、ヴェルダ大森林の奥で消息を絶った採取パーティー。もう一件は、オルクス地下迷宮で足止めされてる駆け出しが一人」
リントが二枚の依頼票を見比べながら、眉を寄せる。
「同じ日に、両方か」
これまでは、一件ずつ片付けてきた。だが今日は、事情が違う。
「地下迷宮の方は?」
シャーロットが尋ねると、受付の職員が付け加えた。
「負傷者を抱えて帰還中だった別のパーティーから伝言が届いています。安全区画に退避できていて、水と食料もまだ残っているそうです。ただ、魔力を使い切っていて、一人では帰還できないと」
「森の方は?」
「連絡が完全に途絶えています。数日前から」
シャーロットは、短く考えた。
「森を優先します。地下迷宮の方には、伝言を」
*
ギルドの職員に、「安全区画から動かず待つよう、向かう冒険者がいれば伝えてほしい」と頼み、四人は森へ向かった。
森の捜索は、これまでで一番長くかかった。手がかりが少なく、リントが何度も同じ場所を行き来する場面もあった。
「焦るな。急いで見落とせば、探す時間が余計に延びる」
ガレオンの言葉に、誰も反論しなかった。
日が傾きかけた頃、ようやく崖下で動けなくなっている三人を発見した。落石に巻き込まれ、身を寄せ合って救助を待っていたという。一人は脚を痛めて立てず、残る二人も打撲だらけだったが、自力歩行はできた。
「もう、駄目かと……」
「大丈夫です。ここからは、私たちの仕事です」
シャーロットが脚を痛めた一人の状態を整え、フィンが背負う。残る二人は、シャーロットが様子を見ながら、ガレオンに護られて歩いた。リントが選んだ帰路を進み、三人を町の治療院へ引き渡す。休む間もなくオルクス地下迷宮へ向かい、もう一人の依頼者の元へ駆けつけた頃には、すでに夜になっていた。
「さっき通ったパーティーから、待っていれば迎えが来るって聞きました」
安全区画で待っていた駆け出しは、そう言うと、少しだけ声を震わせた。
「来てくれるって分かってても、正直、夜まで一人で待つのは怖かったです」
「――待たせて、すみませんでした」
シャーロットは、それだけ答えた。駆け出しは、無事に帰還を果たすことができた。
*
その夜、拠点の一室で、四人はぐったりと座り込んでいた。
「一日で二件は、さすがにきつかったな」
フィンが、珍しく疲れた声で言う。
「これから、もっと増えるかもしれません」
シャーロットが静かに言うと、リントが小さく舌打ちした。
「名前がついたせいで、面倒が増えたな」
「贅沢な悩みだと思いますけど」
フィンが笑いながら言い返す。ガレオンは、何も言わずに水を飲んでいた。
シャーロットは、二枚の依頼票を思い出していた。優先順位をつける、という行為に、初めて向き合った一日だった。すべてを平等に、すぐに助けたい。それでも、できることには限りがある。
いつか、ではないのかもしれない。
今日すでに、一人を待たせた。
「今日は、休みましょう」
シャーロットがそう言うと、三人はそれぞれの仕方で頷いた。




