第11話 呼ばれ始めた名前
「探しているのは、あなたたちで合っていますか」
ギルドに現れたのは、商隊の護衛を束ねる年配の男だった。依頼票を出す前に、まっすぐシャーロットたちの方へ歩いてきた。
「森の近くで、暴走した獣の群れに巻き込まれて、護衛の二人がはぐれました。討伐隊も出ていますが、獣の群れを追うので手一杯です。はぐれた二人まで捜す余裕がないと言われました」
男は、深く頭を下げた。
「噂を聞いて、あなたたちに直接頼みたくて来ました」
これまでの依頼は、ギルドの掲示板を経由するか、口づてに頼まれることがほとんどだった。名指しでこちらを探して来られたのは、初めてだった。
*
森の外れは、獣の群れが暴れた跡で荒れていた。踏み荒らされた下草の中から、リントが二人分の足跡を見分けるまで、そう時間はかからなかった。
「別々の方向に逃げてる」
リントが二つの痕跡を見比べる。
「近い。ここから先は踏み跡もはっきりしてる。二手で位置だけ確認する。見つけても、状態が分からないうちは動かすな」
「俺とシャーロットが北。フィンとガレオンは南。見つけたら合図して、すぐ合流だ」
短いやり取りだけで、四人はすぐに動き出した。もう、誰も役割を確認しない。
一人は木の上に逃れて無事だった。南へ向かったフィンたちが先に発見し、合図を送る。
もう一人は北側で転倒し、足を痛めて動けなくなっていた。シャーロットが状態を確認しているところへ、ほどなくガレオンとフィンも合流した。
「今日は、早く見つかったな」
ガレオンが、軽く息をついて言う。
「経験が、積み重なってるんだと思います」
シャーロットがそう答えると、リントが小さく鼻を鳴らした。
「らしくない褒め方だな」
「事実です」
*
護衛の二人を無事に商隊へ届け、ギルドへ報告に戻ると、受付の職員が、少し照れたような顔でこちらを見た。
「今日も、助かりました。……あの、こう言っていいのか分かりませんが」
職員は、少し言葉を選ぶようにしてから続けた。
「最近、皆さんのことを『救難団』って呼ぶ人が増えてまして。私も、つい」
四人に向けて、その名前がはっきりと口にされたのは、これが初めてだった。誰が言い出したのかも分からない。それでも、街のどこかで、少しずつその呼び名が形になっていたらしい。
フィンが、思わず噴き出した。
「救難団。……悪くないっすね」
「勝手に決められたな」
リントが呆れたように言う。だが、その声に、不快そうな響きはなかった。
ガレオンは、何も言わずに小さく頷いただけだった。
シャーロットは、その言葉を、一度胸の中で繰り返してみた。
自分たちで名乗ったわけではない。それでも、誰かが必要として、誰かが呼び始めた名前。
「悪くない名前だと、思います」
そう言うと、四人の間に、小さな笑いが広がった。




