第10話 軋む音
ギルドの受付で報告を済ませていると、入り口が慌ただしくなった。
「治療院に知らせろ! 誰か、早く!」
額から血を流し、片脚をまともにつけない男が、仲間に肩を貸されながら運び込まれてくる。着ている装備には、見覚えがあった。銀剣クランの紋章だ。
「また銀剣か。先週も怪我人運び込んでただろ」
近くにいた別のパーティーが、小声で話しているのが聞こえた。
「最近多いよな。白魔導師を減らしたって話、本当だったのかね」
シャーロットは、それ以上聞き耳を立てなかった。だが、聞こえてしまった言葉は、簡単には消えない。
*
治療院の職員に運ばれていく途中、負傷した男が、ふとシャーロットたちの方に目を留めた。
「……あんたたちが、噂の」
「噂?」
「森で人を探して連れ帰る連中がいるって。最近、うちのクランでもよく話に出る」
男は、自嘲するように笑った。
「羨ましいよ。ちゃんと帰す仕事、してるんだろ。うちは最近、怪我して戻ってくる奴ばっかりだ」
「……そうですか」
「別に、あんたに言うことじゃないんだけどな」
男は、それ以上は語らず、治療院の職員に連れられて奥へ消えていった。
*
その夜、街外れに借りた元治療院の一室で、シャーロットは昼間の男の言葉を思い返していた。
銀剣クランの中でも、自分たちの仕事が話題になっている。
嬉しいとは思わなかった。ただ、あの場所の綻びが、もう外から聞く噂だけではなくなっている。
「……近いうちに、来るかもしれないな」
リントが、ぽつりと言った。
何が、とは誰も聞かなかった。




