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ベール姫の暗躍物語  作者: 疾 弥生


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第1話




「お嬢様、王弟殿下が帰ってくるそうですよ」

ベルンハルト公爵家の侍女が1人、ベルナが告げる。

「そうらしいわね。怪我がないならいいけれど」

お嬢様、と呼ばれた彼女は、刺繍をしながら答える。


窓辺に座り、窓から入ってくる心地よい風と光を感じながら刺繍を続ける彼女。

結んでいない長い髪は、風を受けてたまに揺れる。


目鼻立ちはくっきりとしており、女らしい可愛さではなく、どちらかというと男性寄りな印象を受ける。髪が短く、服装も男物を着れば、男と見間違うだろう。

凛とした雰囲気を醸し出しており、彼女はよく女性からモテていた。


「でも、怖い方なのでしょう?冷酷無比と噂されておりますし」

ベルナは言う。

「噂は、ね」

彼女は答える。そして、刺繍の手を一旦止めて、彼女はベルナを見た。


「私だってあまりよく思われてないじゃない」

彼女は答える。中性的な顔立ちのせいで女性からはモテるが、男性からはモテない。

「そうですが」

ベルナは少し苦い顔で言う。そして、「でも」と口を開く。


「お嬢様はお綺麗です。刺繍の腕は玄人ですし、薬草も詳しく、剣術や馬術もこなし、領地経営だって難なくやってのけます。お嬢様を嫁がせても良いと思えるほどの殿方は今のところいませんよ」

ベルナは息荒く言い募る。


「公爵家の者が私の良さを知っていたら、それでいいの。私は私で好きにやっているし。商売もやらせてもらえて楽しいし」

彼女はにこりと微笑んで答える。

「それに、嫁ぎたいとは思わないわ」

公爵令嬢らしからぬ言葉が出た。


貴族令嬢たるもの、利のある婚姻を結び、家を発展させていく。そんなもの、暗黙の了解だというのに。


「だって、ほら」

公爵令嬢である彼女は、ゆっくりと立ち上がる。

「私って、背がちょっぴり高いじゃない?」

彼女は苦笑いで少し肩をすくめて、そう言った。


確かに、一般的な女性の身長よりは頭半分以上抜き出ている。

故に、隣に並びたがらない男性の方が多い。


「今のところ、私が知る高身長な殿方は、皆が冷酷無比と噂する王弟殿下くらいよ」

彼女はそう答え、椅子に座り直す。

刺繍は再開せず、頬杖をつき、窓の外をぼんやりと見つめる。


その噂の王弟とは、ひと月ほど前くらいに会ったことがある。しかも、ひと月ほどひとつ屋根の下で過ごしたことも。


そんな記憶を蘇らせながら、彼女は何処か嬉しそうな顔をしていた。





遅くなってすいません!( ; ; )

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