表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベール姫の暗躍物語  作者: 疾 弥生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/22

第8話




「おい、あれはベルンハルト公爵令嬢では」

男装のフランツェスカを遠くから見た王宮の者達が言う。


剣術も馬術も嗜むから、昔から男装の麗人として知っている者は知っている。そして、中性的な顔立ち故に女性から莫大な人気を持つことも有名。


「あの公爵令嬢が男装すると、女達が俺たちなんて目もくれないから嫌なんだよな」

恨みがましく呟く。

「分かる。第一、女なのだから同性を誑かせてどうする」

「その通りだな」

そんな会話をしている所に、王弟アレクサンダーが通りかかった。


彼らは慌てて端に寄る。


「お前達」

アレクサンダーは通りすぎる前に立ち止まる。

「嫉妬する前に自分を磨け」

彼はそう言い捨ててから去って行った。


「!王弟殿下って、話すのか」

彼らは思わず顔を見合わせる。

「確かに」

彼らはアレクサンダーを目で追う。


庭を突っ切り、フランツェスカが歩いて行った方に向かうのが見えた。


「………仕事するか」

彼らは肩をすくめ、慌てて仕事に戻るのだった。







フランツェスカに追い付いたアレクサンダーは、声をかける。


「おはようございます」

フランツェスカは笑顔で挨拶する。

「ああ」

アレクサンダーは頷く。


「先程のようなことは放っておいて構いませんよ」

彼女は言う。

「舐められるぞ」

アレクサンダーは怖い目で彼女を見る。どうやら遠くにいたのに聞こえていたようだ。


「いいんですよ」

フランツェスカはからりと笑って答える。

「何故だ」

アレクサンダーは思わず彼女の肘あたりを掴む。

フランツェスカは立ち止まり、耳を貸してくれ、と言う。


アレクサンダーが少し顔を近付けると、フランツェスカは彼に耳打ちする。


「だって、あんな奴らいつでも殺せるでしょう?」

それだけ言うと、フランツェスカは「行きましょう」と歩みを再開する。


「くっ。くくくくく」

アレクサンダーは腹を抱え、口を手で押さえながら笑い始める。

その様子を見て、ウォルバートは不審な顔をする。

「殿下、フランツェスカ嬢は何と」

彼は尋ねる。

「いや、何でもない」

アレクサンダーはまだ面白いのか、笑いが止まらない。


「殿下、行きましょう」

フランツェスカは彼に声をかける。

「ああ」

アレクサンダーはまた彼女の隣に並びながら歩き始める。


「面白かったですか?」

フランツェスカは問いかける。

「ああ。実に」

アレクサンダーはまだ肩が揺れている。

「それより、殿下はお体の方は完全に回復されたのですか」

「ああ」

「後遺症もないですか」

「それを言うなら、君の方だろう」

「大丈夫です。まあ傷跡は残りそうですが。余計に嫁き遅れるかもしれませんね」

フランツェスカは自虐して答える。


「………」

アレクサンダーは言葉に詰まった。

傷跡が残らなければいいな、などと気休めなことは言えない。

嫁げないなら自分のところに来ればいい、なんて言葉も言えるはずもない。


いい返しが思いつかなかった。


「私に気遣いはいりませんよ。殿下はそんな人ではないことを知っていますから」

フランツェスカはそう言って、「ここまでありがとうございました」と頭を下げる。

アレクサンダーは自分を貶したりするタイプではないと分かっている。


アドルフィーネ妃の王女達がいる部屋の前で立ち止まる。


「……昼食はどうするんだ」

アレクサンダーは話題を変えた。

「そうですね。気分転換に庭で取れたら、と思っていますが」

「ならば、騎士団の練習場の近くの庭はどうだ」

その誘いにフランツェスカは目を瞬いた。


「良いのですか」

「ああ。1人で護衛するより、目が多い方がいい」

「では、お言葉に甘えて」

フランツェスカはにこりと微笑み、部屋の扉を叩く。


許可が出て、彼女はアレクサンダーに頭を下げてから入室して行った。







「アナリーゼ様、アロイシス様。只今、フランツェスカ•ベルンハルト、まかしこしました」

フランツェスカは跪拝する。

「フランカ!!」

2人の王女は嬉しそうに彼女に駆け寄った。


「王女殿下、いきなり走っては、はしたないですよ」

勉強の先生がそう注意する。

すると、王女達は慌てて行動を止め、上品に礼を行う。


「本日もありがとうございました」

王女達は拙いながらも優雅を心掛けて頭を下げる。

まだ3歳と2歳だというのに、よく教育が行き届いている。


フランツェスカは笑顔で、王女達を抱きしめる。


「お勉強お疲れ様でございました。一旦休憩に致しましょうか」

彼女は2人をよいしょ、と抱き抱える。女児でまだ幼く軽いとは言うものの、2人を抱え上げるのはなかなかの力持ちである。


「ご飯は何にしましょうか。殿下の好きなものにしましょうか」

フランツェスカはにこにこと尋ねる。

「本当!?パンは木苺のジャムで食べたいわ!」

アナリーゼが嬉しそうに答える。

「わ、私は冷たいスープがいいわ!」

アロイシスも嬉しそうに言う。

「承知しました」

フランツェスカは微笑み、彼女達の侍女に目配せする。


すると、1人の侍女がその場を離れる。よく理解している侍女である。


「今日は騎士団の練習場の近くで食べましょうか」

フランツェスカは提案する。

「本当に!いいの!?」

2人の王女は嬉しそうな声を上げる。

「お外で食べることもあまりないでしょう?」

「うんっ。でもいいの?護衛がどうのとか言われたりしない?」

アナリーゼは心配げな顔をする。


「私がいますし、アレクサンダー殿下ももしかしたら来てくれるかもしれません」

「あ、あの方が」

アナリーゼは妹と顔を見合わせ、不安げな顔をする。


「あまりアレクサンダー殿下とお話ししたりすることがなかったのでしょう?」

フランツェスカは問いかける。

「うん」

王女達は頷く。

「でもあの人はとても優しい人なんですよ。そして、とても賢いお方ですし、とてもお強いんです。ですから、彼がいれば百人力です」

フランツェスカの説明に、王女達は目を瞬く。


「ほ、本当に?優しいの?」

「優しいですよ。殿下達は叱られたことがございますか」

フランツェスカは尋ねる。

「いいえ。無いわ」

「そうでしょう?あの人は無闇に怒鳴ったりしませんよ」

「でも、目が怖い」

「容姿で人を判断するのですか?お母上はそんなことを教えてらっしゃるのですか」

フランツェスカは2人を見つめる。


「い、いえ!お母様は差別はしません!」

「そうでしょう?アレクサンダー殿下は敬意を持って接すれば必ず敬意で返してくれますよ」

「……本当?」

「はい。もし、理不尽なことで叱られたりしたら、私がやり返しますから大丈夫です」

フランツェスカはにこりと笑って言う。


「やり返すって、そんなの出来るの?」

「出来ますよ。何せ、私ですから」

フランツェスカが自信満々にそう答えると、王女達も何となく納得してしまった。


「よし。では行きましょう!」

フランツェスカは楽しそうに2人を抱えたまま、部屋を出るのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ