↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダフルリング! エイルとエミルのふしぎな冒険 王女の試練と凶星の魔女  作者: 稲葉トキオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/70

第44話 いざ、最後の試練へ

 凶星の魔女の住む異空間――


 手駒として使っていたギルド"エレメタル"の幹部四人、ドレッドとフーガは死に、スーリムとカリンガは帰ってきません。おまけに後者の二人にかけた呪いが発動していないことを、魔女は感じていました。


 《逆星の隷呪(れいじゅ)》――それが四人にかけた、呪いの名前。


 人間と合意のうえ、半契約状態となり、双方のチカラが強化されるという効果があります。ただし、呪いをかけた人間の生命力が弱まったり、術者が課したルールをやぶったりした場合、代償として命を散らせるという、おそろしい死の呪い。


 さらに、呪いの発動によって砕け散った人間の生命エネルギー(マナ)は、本人が蓄積したぶんもふくめて、すべて魔女に還元される仕組みになっており、四人全員が呪いで死ぬことによって、魔女はアストライト王国に復讐するためのチカラを得る……はずだったのですが。


『……大幅に予定がくるわされてしまった。あのいまいましい、スターリング姉妹のせいで……!』


 凶星の魔女は頬杖をつきながら、美しい眉間にしわを寄せてつぶやきました。


 ただでさえ手がつけられないのに、どういうわけかこの数日ますます強さを増していく"巨獣狩りの剣星"エイルと、そんな姉の手綱をただひとりにぎり、浄化のチカラを使うことができる妹エミル……この姉妹の存在は魔女の想像を大きく超えており、ことごとく目算をくるわされているのです。もはや、完全に破綻しているといっても過言ではないほどに。


『もうしわけありません。せめてエミルだけでも、息の根を止めておくべきでした』


 玉座につながる階段の下では、アルティナのパートナーだった"魔女の目"――雪の妖精スノーベルが小さな体でひざまづいていました。


 エレメタルの四人がすべて敗北した以上、魔女がコマとして使える存在は暴走魔法生物(ワンダー)をのぞけば、もう彼女だけなのです。


 しかも魔法生物を暴走させるための術は、いまの魔女にとっては大きくエネルギーをすり減らすことになってしまいます。


 王都に放ったものたちも、姉妹によってあっというまにしずめられてしまったので、チカラの源である負の感情エネルギーを集めることもできず、ただ残り少ないエネルギーをさらに削るだけ結果に終わってしまったのでした。


 このまま暗躍を続けても、長続きしないのは目に見えていました。おそらく王国側に落ちたと思われるスーリムやカリンガを通じて、この異空間に攻めこまれるのも時間の問題でしょう。


 彼女に残された、打てる手は……


『……スノーベルよ。これがお前にくだす、最後の命令だ』


 凶星の魔女は、おもむろに玉座から重い腰を上げました。


『おおせのままに、魔女さま』


 スノーベルはひざまづいたまま、うやうやしく一礼するのでした。


 凶星の魔女とお姫さまご一行の最後の戦いのときが、近づいています。



 ☆ ☆ ☆



 アストラ山――


 王都を見下ろすように、真北にそびえるまっしろな大霊山。


 目には見えませんが、まわりは強力な結界が張られており、選ばれた者以外の立ち入りが許されない大聖域です。


 王都で魔法生物(ワンダー)たちの暴走をおさめ、警察にカリンガを引き渡し、その他もろもろの準備をすませたお姫さまご一行は、雲海に埋もれててっぺんの見えないそれを見上げていました。


「ここが……最後の試練の地……」


 アルティナは息をのみました。


 試練と魔女のことで、精神的にはそれどころではないですけれど、その雄大さを間近で見ると、感慨深さを感じずにはいられませんでした。


「いつも見てる景色だけどさ、私も実際に登るのははじめてだよ。わくわくするなあ!」


 自由奔放なエイルはあいもかわらず平常運転。やまぶき色のまんまるな瞳をキラキラさせています。


「そうだね。楽しむくらいの余裕があるほうが、ものごとはうまくいくんだもんね」


『シロンもたのしみー!』


 エミルとシロンも、前向きでやる気じゅうぶんといったところ。


 そんな姉妹をちらりと見ながら、アルティナはやわらかなほほえみを浮かべます。


 最初は姉妹のそんなノリが、うとましくてうっとうしいと思っていましたけれど、いまはすっかり慣れたもの。むしろ、自分まで楽しい気持ちになってきます。そう、まるでアカデミーで仲間たちとすごしていたときのように……


「そう……ですね。私ももう、覚悟を決めました。かならず、試練を達成しましょう!」


『おわったら、パーティーだよ!』


 シロンはずいっとアルティナの顔をのぞきこんで、提案しました。


「ええ、それはもう、ほほが落ちるほどのお料理をたくさん、ごちそうしますよ」


「『やったー!』」


 くいしんぼうのエイルとシロンは、さらにがぜんやる気になったようです。


 同じくエミルも、わずかに顔をニヤけさせながら、こっそりこぶしをにぎりしめました。


『そのときは、スノーベルもいっしょにね!』


 シロンがにっこり笑顔で言うと、アルティナは……


「……ええ!」


 同じく、にっこり笑顔で返すのでした。


 スノーベルは、たしかに魔女のスパイとしての正体を明かし、アルティナたちを裏切りました。


 けれど、これまでいっしょにやってきたことすべてが、ウソだったなんてとても信じられないのです。


 10年近い時間……ふたりで苦楽をともにし、どんな強敵とも戦ってきました。王族の三つの試練だって、乗り越えてきました。だからきっと、自分とスノーベルの間には、たしかな絆があった……いえ、いまもあるんだと信じているのです。


 エミルやソラビトも、その気持ちを後押ししてくれました。だから迷いません。ぜったいに、スノーベルと仲直りするんだと。この笑顔には、そんな覚悟が秘められているのです。


「さあ……行きますよ!」


「「『オーライ!』」」


 そして一行は、霊山の中に一歩、足を踏み入れようとしました。


「わっ……」


 すると、アルティナの右手の甲が光りはじめます。


 これまでの試練で体に刻まれた、大地、大海、大空の紋章が、いっせいに浮かび上がったのです。


 ――三つの証を刻みし者よ。みごと最後の試練への道を踏破し、我がもとへとやってくるがいい。


 そんな声が、三人とシロンの頭の中に、直接響いてきました。


「いまのは……?」


 エミルは両耳をおさえて、あたりを見回しました。


 この感覚には、おぼえがあります。4年前、故郷の村近くの森で聖獣に語りかけられたときと同じものです。そのときは、エミルにしか聞こえなかったものでしたが……


「今回は私にも聞こえたよ。すっごく強い魔法生物(ワンダー)の声だ」


 エイルはめずらしくキリッとした真剣なまなざしで、目の前にまっすぐ伸びる山道をにらみます。


「ええ……あれがきっと伝説に聞く……【星獣アストラ】の呼び声!」


 アルティナが一歩前に進んで言いました。


『やっぱり、さいごのしれんって……あのこえのぬしと、たたかうってことなのかな……』


 シロンはエミルの背中に隠れるようにして、おじけづいたように震えていました。


 さすがはちっちゃくてもドラゴン。声だけで相手の力量がはっきりわかったようです。まともに戦えば、とても自分たちではかなわないということを。


「それはわかりません。ですが、私たちの力を合わせれば、きっと乗り越えられると信じています」


 アルティナは自信満々に、きっぱりと言い切りました。三つの試練を終えたことで、王族としての風格がいっそう高まったように感じられます。


 エイルは、おびえるシロンの頭の上にぽんと手を乗せて言いました。


「だいじょうぶだよ。私がいるもん」


 いつでも自信たっぷりなお姉ちゃんの言葉に、シロンの気持ちもやわらいでいきました。


「そうだよシロン。わたしたちは、無敵の三姉妹なんだから!」


 エミルも妹分をはげまします。


 大好きなお姉ちゃんふたりにはげまされたシロンは、すっかり元気をとりもどし、パタパタと宙を舞って……


『よーし! どんなヤツでも、どんとこーい!』


 気合一発、がおーとひと吠え。姉妹もくすくす笑います。


 いい感じにまとまったお姫さまご一行は、いよいよアストラ山の道を歩きはじめるのでした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

このおはなしがおもしろい、つづきが気になると思っていただけたら、

ブックマーク登録や下↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。