↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダフルリング! エイルとエミルのふしぎな冒険 王女の試練と凶星の魔女  作者: 稲葉トキオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/70

第26話 大海のごとき広き心

『見事だ! 王女とその従者たちよ!』


 さわやかな声と水しぶきの音とともに、天井の空洞から、リーダー格のマグロのウオビトと仲間たちがシュタタっと降りてきました。


 案の定、アルティナはびくっとしました。エミルもおどろきのあまり、従者じゃないんだけどな、というツッコミを忘れてしまうほど。やっぱり彼らの見た目のインパクトには、なかなか慣れないのです。


「あ……宝物というのは、これですよね……? どうぞ、お納めください……」


 アルティナはおそるおそる、彼らに宝物たる、ウオビトのたまごを差し出すのでした。


『おお! ありがとうっ!』


 マグロ頭のウオビトはさわやかにたまごを受け取りました。


 そのとき、彼の体がまるでスライムのように、ぐにゃぐにゃと変形をはじめました。うしろにいる仲間たちも、同じように。


「ええっ⁉︎」


 これにはアルティナとエミルはもちろん、さすがのエイルもギョッとしました。


 すると……なんということでしょう。


 ムキムキの体にサカナがまるごと一匹突き刺さった、ギャグ全開の見た目だったウオビトの姿が……整った目鼻立ちの、さわやかな美形男子たちに大変身したではありませんか。


 体もボディビルダーから、逆三角形のスイマー体型にシェイプアップしています。頭のてっぺんと両手足からは、魚人のトレードマークであるヒレも生えていました。


「……!」


 お姫さまご一行は、びっくりを通り越しておくちあんぐり。言葉を失うほかありませんでした。


『これか俺たちの真の姿だ。隠していてすまなかった!』


 口調とさわやかキャラは変わらないのか、とエミルは心の中でツッコミます。


「あ、あの……つかぬことをうかがいますが、なぜ、あのようなふざけ……ユーモラスな姿に?」


 アルティナは慎重に言葉を選びながら、抱かずにはいられない疑問を口にしました。


『それはもちろん、試練のためだ』


「試練……ですか?」


 アルティナも、エミルも首をかしげます。


 わざわざあんなギャグみたいな姿に化けることと、試練に因果関係なんてとても感じられないからです。


『俺たちの試練は、"大海の試練"。大海のごとき広い心を持つかどうかを試すものだ。あらゆる理不尽な存在、状況と相対しても、受け入れる器量があるかどうかをな』


「あ……」


 アルティナとエミルは、合点がいったようにハッとしました。


 やけに気持ち悪さを強調したワンダーやトラップ、きわめつけは巨大ウツボの体内探検です。たしかに、ものごとを広く受け入れられる心がなければ、到底クリアはできないものだったでしょう。


 ……試すならほかにいくらでもやりようがあった、と思わなくもありませんけれど。


 そしてウオビトのリーダーは、巨大なイクラのようなたまごをかかげながら続けます。


『俺たちのたまごは、決まって王族の試練の時に産まれる。だから、それを王族に探させることこそが試練だと、俺たちは受け取ったのさ。これこそが、アステールのおぼしめしだとね』


 アステール……王宮の中心に安置されている、莫大な生命力を宿す隕石。それはアストライト王国の大地に豊かな恵みをもたらし、このウオビトの湖も例外ではなく恩恵を受けているはずです。


 王族の試練の時に、王宮のアステールが呼応して、タイミングよくウオビトの湖に新たなたまごが産まれる……突飛には思えますが、まったくなくはない話でした。


『ともかく。これにて試練は終わりだ。俺たちの証を、その身に刻んでくれ!』


 元マグロ頭のウオビトが人差し指をつきつけると、アルティナの右手の甲が光りだします。


 確認すると、青い水のしずくの形の紋章が浮かび上がってきました。紋章はすぐに消えてしまいますが、たしかに彼女の中に刻みこまれました。


 そしてウオビトたちは、いっせいにひざまずきます。この流れも、イシビトたちのときと同じです。


『俺たちは、今より君の盟友となった。呼べば必ず君の、この国の助けになることを誓おう』


「あ、ありがとうございます……」


 アルティナはとまどいぎみにお礼を言いました。ウオビトたちの変化のギャップに、まだついていけていないのです。大海のごとき広き心は、大きく波打っていました。


『じゃあ、俺たちはこれにて。また水中散歩がしたければ、いつでも遊びに来てくれ! さらばだ!』


 ウオビトたちはビシッとさわやかな別れのあいさつを残して、いっせいに湖に飛び込み、その姿を消しました。


 お姫さまご一行は、ぽかーんとした顔のまま、彼らを見送ったのでした。


「……変身する前のほうが、おいしそうだったのに」


 エイルお姉ちゃんは、ふきげんそうにほっぺをふくらませました。あいかわらずの平常運転(くいしんぼう)です。


『う~! ザンネン! こうなったら、ホンモノのおサカナたべてかえろうよ! またちかくのまちとかで!』


 シロンも不満そうな顔で、翼をぱたぱたさせながら提案しますが……


「いいえ。町や村にはもう立ち寄りません。またゆうべのようになってしまってはいけませんから」


 アルティナの言う通り、昨夜は魔女の刺客フーガによって、立ち寄った村にまるごとあやつりの術をかけられたのです。


 魔女がアルティナの命をなりふりかまわず狙っている以上、多くの人がいる場所に近寄るのはさけるべきだと、エミルも同意していました。


 それにアルティナは、いっこくも早く試練を終えなければならない、と考えているので、このまま次の試練に直行するのがベストなのです。


「じゃあ、野宿だね」


 それでも、もちろん休息は必要です。エイルがぽつりとつぶやくと、


『えー! やーよっ! 野宿なんて!』


 アルティナの指輪から、雪の妖精スノーベルが出てきて、ぷりぷり文句をつけました。


「しかたないですよ、ベル。もう国民を巻き込まないためにも、宿をとるわけにはいかないんです」


 アルティナは相棒をなだめます。どうやら野宿をはさみながら、このまま次の試練の場所まで直行という方向で決まりのようです。


「でも……その前に、いまここでちょっとだけ休みませんか? わたし、正直もうくたくたです」


 エミルは草むらのうえにへたりこんで、休憩をすすめました。


 大海の試練で心も体も疲れ果てていて、おまけにトラウマに耐えてウツボの体内にまで飛びこんだのです。エミルは正直、しばらくはなにもする気が起きませんでした。


「それに、ほら」


 続けて、広大な湖を指差します。


 聖域の湖は海のように広く広くひろがっており、沈みかける太陽に照らされていました。その光景のなんと美しいことでしょう。


「この景色を、目に焼きつけておきたいですし」


 エミルが目を細めて言うと、エイルとシロンも、アルティナとスノーベルもつられてほほえみ、その提案を受け入れるのでした。


 一行は聖域内でしばしの休息をとったあと、次なる試練の地を目指します……



 ☆ ☆ ☆



 いっぽうそのころ、凶星の魔女のアジトの異空間にて。


 急きょ呼び出しを受けたスーリムが、玉座の前でひざまづいていました。


「あのー、どうかなさったんですか? こっちはまだ、準備の最中なんですけどぉ?」


「……計画の変更を、大幅に余儀なくされた。あの姉妹め、ことごとくこちらの予想を超えてくれる……」


 玉座の上の魔女は、いまいましげにひじかけに赤い爪を突き立てました。


「アルティナ姫め……前(・)回(・)の(・)一(・)件(・)で自暴自棄になるかと思いきや、ここまで迅速かつ冷静な対応を取るとは……これもまた、あの姉妹の影響のようだ……」


「それも、"目"からの情報ですかぁ?」


「そういうことだ。そして今しがた、新たな報告を受けた。スーリム、お前にはこれから言う地点へ向かってもらう」


「それって、まさか……」


 スーリムは緊張ぎみの苦笑いを浮かべました。


「そうだ。奴らと戦え」


 魔女の次なる刺客が、お姫さまご一行にせまろうとしていました……

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

このおはなしがおもしろい、つづきが気になると思っていただけたら、

ブックマーク登録や下↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。