表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

四章 花は折りたし梢は高し

「ねぇ、聞きたい…事があるかもしれない。」

電車の中、少し不安になりながらピエロに聞く。

『良いですヨ、どうかしましたカ?』

「ピエロの本名っ…て…もしかしてソティス?」

ピエロはソレを聞き少し沈黙し…その後答えた。


『ハイ。アナタが此処に辿り着くとは思ってモみませンでしタ。シスターに渡された懐中時計でも触った時にソレを?』

「見てたの?」

『死んでる間はずっと情報を収集する為とアナタを守る為傍にイマシタから。』


「…私、貴方がいない間貴方について色々知った。貴方はヒトで、魔素で出来てて、ソティスって事…。」

『ソレを知って、どう思いまシタか?』

「分からない…けど、贈るべき言葉は知ってる。ありがとう。」

『どういたしまして。』


「ねぇ、ソティスは母さんと旅してたの!?母さんを何度も救ってくれたの?母さんは私が9歳の時消えた!貴方は居場所を知ってるの?」

『…いずれ分かります。アナタが何者かも。』

そう言ってゆっくり私の頭を撫でた。感触はないけど、そう思える温もりがあった。

「…ピエロがいい?それともソティス?」

『そうデスネ…私にとってソティスの名は、捨てたも同然。何時もの様に、ピエロで。』

そう言った彼の顔は何処か切なさを感じた。


「分かった。…ところで、次は何処行くの?」

花の住む都(マルス・ドメスティカ)デス!この街は面白くてですね、ある花から採れるとある物質が名産で、この物質によって街が成り立っていマス。』

ピエロは私の頬を撫でながら、静かに言う。

「その花って?」

『大変興味深い花でシて、…オット!着いてしまったようデスネ。説明は後!先ずは観光を楽しみマショ♪』

「おぉ…綺麗な街。」

そう言う私の頬を撫でながら、ピエロは口を開く。

『エエ、此処は美しく活気のある街です。しかし、忘れないデ下さい。人間は、信用シナイ方がイイ。彼等は簡単に嘘を付く。』

 私はそっと、ピエロの肩を撫でた。ピエロは無反応だった。彼も又、このおかしな世界の被害者なのだろうか。



「わぁぁ…」

今までの酷い地域と正反対で、この街は人間達が皆幸せで満ちており笑い声が飛び交っている。

「ピエロ!みてみて、見てよ之!こんなの元の世界にもなかった…。綺麗。」

そう言いながら指差したのは、花の模様がある栞や髪飾りが売られる雑貨屋。

•「お?お嬢ちゃん。見る目あるねェ、コレはこの街の名産品!此処でしか見られないよ。買ってくかい?」

店長らしきおじさんがそう話しかけてきた。

『コレは…ダチュラの花カナ?』

•「物知りだねぇ!不思議な格好の兄ちゃん。君たち、旅人さんかい?この店以外にも面白いもんはいっぱいあるから、是非色々見てってくれ」

「ありがとうございます。」



 店を後にし、様々な店を見る。アクセサリーも服も本も、どれも美しく見るものに興味を持たせる。しかも、ピエロが言うにとても安価らしい。何か一つ強請ってみようかと思いながら旅を楽しむ。


 街では多くの家族が手を繋ぎながら歩き、道でやっている曲芸を観ている。その顔には喜びが満ちており、この世界のおかしさなぞ微塵も知らない様で。此処で暮らしたいなとも思った。きっと毎日美術館にいる様な気持ちなんだろうな。



只、少しの違和感があった。

子供が、少ない?

しかも、よく見てみれば1家族に4人以上いない。子供は皆一人、兄弟姉妹が全くいなかった。

「この街、少し気味が悪い…。」

ピエロの服を掴もうとしたが、気づけば彼はいない。逸れてしまった?急いできょろきょろと辺りを見渡すが、分かりやすい高身長は全くいる気配がない。戸惑っている内に、突然腕が引っ張られたのだろう。身体がバランスを崩す。

•「少々歳は行ってるが充分だろ。」

•「これでまだ俺達は安泰だ。」

•「悪く思うなよ。」

そんな悪役がよく言いそうな言葉を最後に私は意識を失った。恐らく、睡眠薬の類か……?



 瞼を広げると、下は手術台らしき物、眼の前には先端が尖った機械、縛り付けられた手足。ヵヒュッと喉がなる。目の前に広がる現実を受け入れられない。


機械が段々近づいてくる。その先にあるのは私の右目

「ァ、ア…あ、あ」

感覚はない。感覚はない。感覚はない。右目に何かいる。コレはなに。

〈被験体No.23。寄生完了〉

モニターにそんな文字が映った。寄生って何、此処は何処。ピエロ、そうだピエロ。ピエロは何処、助けて、なんで今いないの?今まで対価なしで助けてもらっていたツケが来たの?どうして、どうして。

 無条件で助けてもらえる。いつでも駆けつけてくれる。私は死なない。そんな環境に甘んじてた私への罰か。いつの間に拘束具は外れており、暫くしてから私は部屋から出た。右目は見えない。

❁「ねね、可愛い子ちゃん!新しく入ってきたの?」

そんな声が聞こえた。突然の事で反応出来ず、反射的に声の方を見る。

❁「こんにちは可愛い子ちゃん♪我ちゃんはフリージア!見た所15くらい?じゃあ誘拐とかかな!皆こっちに居るよ!」

特徴的な喋り方…、いやソレよりも彼女の片目にある不自然な物に目が行く。花…いや、正しくは蕾だ。右目を中心に根を生やしているのだろうか。大きい桃色の蕾が、右目に生えている。


 私はそのまま彼女に連れて行かれ、庭の様な所に出た。芝生と、公園にあるような遊具。少し古くなっているらしく所々錆びている。13人くらいの4〜19くらいの子供達がいて、私を見るとすぐに駆けつけてわいわいし始めた。

✴「フリージア、ソイツ誰?」

私と同じくらいの歳で、同じような空色の蕾を生やした短髪の人間が問う。

❁「分かんない、誘拐された子っぽいよ〜」

✴「ああ…成る程。ユウカイか。」

❁「可愛い子ちゃん、お名前は?この子はミモザ!」

友達らしく、フリージアは腕に手を回した。ミモザと呼ばれた子はソレに真っ赤になりながら手をどけている。

✴「あ、おい!いうなって…」

❁「あ」

✴「おい!…まァいいけど。で?ナマエは?」

「あ…ミュオ。」

❁「ミュオちゃん!これからよろしくね!」

何処かテンシを感じて、手を伸ばした。

✴「…ハァあ?なにしてんの!?」

❁「あれれ…だいじょーぶだよ。大丈夫。疲れちゃっただけだもんね、大丈夫。」

「あ…ごめんなさい。ごめんな、さい。」

すぐに、離れる。


 初対面で、優しくされたからって、信じちゃいけない。信じちゃいけないのに優しくされたからって簡単に信じてしまう私が嫌いだ。優しさに甘える自分が嫌い。

✴「いきなりフリージアをだっこするなんて…イミわかんねーなコイツ。」

❁「此処はね、施設なの。子供を育てる施設。ミュオちゃんの目に入れられたのはお花。」

淡々とそう言われ、又も動揺する。花…この街がこんなに栄えているのも、花からだと。

❁「私達は此処で花と共に暮らしてるの。あ!先生が来た!」

彼女が指差した方向を見ると、如何にも保育士とかの言葉が似合いそうな、エプロンを着た40くらいの男性。

《…No.23だな。》

❁「もう先生!ミュオちゃんって呼んであげなよ。どうせ我ちゃん達の会話聞いてたんでしょ?」

《…ああ。しかし番号は番号。》

❁「相変わらず硬いんだから…ねね、ミュオちゃん!この施設、紹介してあげる!」

✴「オレもいく!」

「ありがとう、ございます。」


❁「此処はちっちゃい子達の為のお部屋!花の種を埋められた後かな?先生がお世話してる。私達もたまに面倒見たりしてるよ!」

✴「みんなおとなしい子たちだ。かわいい。」


❁「此処は図書室!難しい言葉ばかりだからあんまり皆読もうとしないけどね。」

✴「マトモによめるのフリージアくらいだもんな。」


 その後も、2人の紹介で医務室、音楽室…と色々な部屋を見て回った。只、多くは空いていたりそもそも入れなかったりと、この施設の怖さを助長していた。



❁「最後!此処が食堂で、皆でご飯食べるんだよ〜」

ご飯というワードを聞いてだろうか、不意にお腹が鳴る。

❁「あ、先生!この子にご飯!」

✴「ついでにおれにもチョーダイ。」

《…分かった。》

❁「じゃあいこっか!皆!ご飯の時間にしよ!」

彼女がそう言うと、他の子供達が楽しそうに此方へ来た。

《私は2人分を想定していたんだがな…》

❁「細かい事はいーじゃん!」

《…》


突然、ミモザが話しかけてきた。

✴「ミュオ。ちょっとこっちこい。」

「え…?は、はい。」

私は部屋の端に連れてこられて、ミモザに思いっきり睨まれた。

✴「カンチガイすんなよ!フリージアはみんなにやさしーんだ。フリージアにちょっとやさしくされたからってす、スキになんなよ!あと、いきなりだっこしやがって…そーいうのはツキアッテ?からだろ!」

「いや、いやいやいや…私は別に、そんな恋慕とか抱いてないし…それにだっこ…って抱きしめた?事?は本当に申し訳ないと思ってる!でも断じてそんな下心があったわけじゃないから!」

✴「レンボ?ダンジテ?シタゴコロ…?ウゥウ、おまえ!ムズカシイことばつかえるからってチョーシのんなよ!」

「えぇ…」

✴「ばーか!ばーかばーか!おれのほうがどうせトシウエだし!トシがちかいほうがリョーオモイになりやすいんだ!フリージアが言ってた!あと、あとオレのナマエつけたのだってフリージアなんだ!」

可愛らしい抵抗…フリージアの事がどうやら好きらしい。思わず微笑むと、彼女は更に赤い顔を赤くし、地団駄を踏んだ。


 そしてもう一度口を開いた所で、カーン!という金属同士がぶつかり合う音がした。音のする方向を見れば、先生がお玉とフライパンを持っていた。

《出来たぞ。》

❁「はーい!皆〜おいでー!」

 出て来たのは、硬い小さなパンと大量の野菜とペーストになった豆。ジプソフィラに比べれば質素なほうだが、アレは恐らくイレギュラーだしぜいたくは求めないほうが良いか。

❁「じゃあ皆!頂きます」

「「イタダキマス!」」

何とも微笑ましい光景。誘拐された、という事実に目をつむりさえすれば。

《No.1。後で来い、そろそろ収穫だ。》

❁「…はーい。」

先生が、フリージアに言った。収穫…良くない気しかしない。フリージアも察しているのだろう。

・「フリージア!シューカク?いいなあ、あたしもはやくそうなりたい!」

❁「うん。ミモザ、後はよろしくね。」

✴「4ねんたったら、オレもいくから。またあそべよ!」

❁「…ずっと、友達だからね。皆!今は取り敢えず、食べよ!」

「「はーい!」」

私達は、共にご飯を食べ共にご馳走様を言った。



 食事の後、フリージアに話しかける。

「フリージアさん、収穫って…」

フリージアは周りを見渡し、私の腕を引っ張って誰もいない部屋に行った。

❁「…賢いね、キミ。収穫は、お花の収穫。我ちゃん達が20歳になった時、お花は咲くの。咲いたら、花は実を作る。その実を街の人達は使うの。」

「…。」

ある程度察しはついていた。

「収穫されたら、貴方はどうなるの…?」

❁「聞いちゃう〜それ?我ちゃんは思考能力が消えて…植物状態になる。皮肉だよね、最終的には私も植物同然になるの。もちその後は廃棄。」

…今更だがこの世界の常識が恐ろしい。欲深く倫理観を損ね、利益の為に犠牲を厭わない。私も此処に生まれていれば、こうなってしまったのだろうか。

❁「まだ猶予はあるの。明日、明日の10:15。私の生まれた日時、花は開花する。ソレまで、すぐいなくなっちゃうけど…一緒にいて。思い出、作ろうね。」

「あ…うん。」

正直、受け入れられない物が多すぎていっぱいっぱいだ。怖い、悲しい、何故とかそんな気持ちがぐるぐる思考を支配している。

❁「優しいね。」

「もう既に、友人を亡くしているから。」

この世界で関わった者達は、ほとんど死んでしまった。この前の新聞で、カサブランカの戦争が終わった事が記されていた。戦場には驚く事に何も残されておらず静寂だけ。戦争が終わったと言うことは、テンシが皆死んだという事。お別れも言えなかった。ピエロの時もそうだし、アシンバだってそうだった。

「後悔したくない。出来たら、貴方だって失いたくない。」

❁「…。」

暫く2人で、天井を眺めていた。

❁「せめて、もう一度外がみたかったな。水色してたって事しか、もう思い出せないの。ねね、教えてよ。空の色。」

「ミモザさんの、目の色みたいな…色だよ。」

❁「ああそっか…だから我ちゃん、あの子のお目目眺めるのが好きなんだ…。」

「貴方の目の色は、夕焼けみたいな色。紫とピンクが綺麗に入り混じって綺麗。」

❁「じゃあキミの目の色は、きっと夜の色。何でも飲み込めて、全てを包み隠してくれる…優しい色。」

「ありがとう。」❁「此方こそ。」

瞼が自然と重みを増し、視界が狭くなる。彼女も同じ様で、私と彼女はゆっくりと眠った。



 気付けば、隣に彼女はいなかった。

「ハッハッ…」

今、何時だろうか。急いで彼女を探す。食堂に来た時、ミモザが先生に殴りかかってるのが見えた。

✴「フリージアはどこだ!おれはぜんぶしってんだからな!」

《…本当に、見たいのか?今の彼女の姿を?》

「先生!ミモザさん!」

✴「ミュオ…オレはきのうおまえとフリージアのハナシを、きいた。」

「え…」

✴「いまは、10:45。フリージアはもうッ…」

「なん、で…彼女は私を、起こしてはくれなかったの。何で、見送らせてくれなかったの?」

✴「…フリージアはそういうヤツなんだ。」

そういうミモザの顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになり、俯いて服を必死に掴んでいた。そんな私達を見て、先生が口を開く。

《お前達、フリージアに会いたいか。》

✴「ッあたりまえだ!!」

「せめて、せめて彼女の顔を見て、お別れと感謝を言いたい。例え自己満でも。」

《付いてこい。結局はお前達もこうなる。真実を知った所でどうにもならないなら、未練がないほうが良い。》



 先生は、開かなかった扉の前に行き手を翳した。すると、扉が横にスライドして開く。中には棺が。

✴「ああ、まさか…まさか。」

棺に、美しい花と共に眠るフリージアの姿。血色が少し落ちただけで、今にも起きそうなのに、目は一向に開く気配がない。

「どうにも出来ないの!?」

《どうにか出来ているなら、棺なんて用意しない。》

淡々と言い放つ先生。どうにもならない、という現実が襲いかかり、切なさと不甲斐なさで涙が出てくる。

《おい、No.23…それは》

涙が、魔素が頬を伝って彼女の瞼に落ちる。もう一粒、満開の花に落ちた。その瞬間、花が悍ましく動いた。

《花が動く、と言うのは今までなかったはずだ…どうなっている!?》

「魔素が、花を苦しめている?」

✴「なら、フリージアはたすかるってことか!」

「分からない…でも、今起こっているのは明らかにイレギュラーな事…」

✴「イレギュラー…は分かんないけど、なおるかもってことだな!」

手を合わせて、只ひたすらに祈る。祈る。しかし、花は苦しく素振りを見せるばかりで消える気配は一向にない。彼女の目も、閉じたまま。


 もうダメか、と諦めかけたその時、手が。手が、ピクリと動いた。やがて頭が起きて、その美しい目を開く。

❁「私、動いてる。生きてる…」

フリージアは、信じられないと言った様子で自分の身体を見つめている。奇跡、そうとしか言い表せない。私は人間を一人、救えたんだ。


 私達は、再会に喜びあい感動を分け合った。しかし、ミモザだけは、そんなフリージアを睨み言い放つ。

✴「ウソ、つくなよ…おまえはフリージアなんかじゃない!おまえは、だれだ!」

«アラ、気付かれちゃった。ワタシはワタシ、この子と人生を共にし、これから死ぬ予定の花。»


 空気が、凍りついた。花は尚も口を開く。


«そして始めまして…いや、また会いましたね?お母さん。»

ミモザが、とんでもない目で私を見ているのが分かる。責めるような、憎悪を向けた視線。テンシの時もそうだ。寄生花は、魔素から出来たのか?それだとしても母と言うのはおかしい。まさか、


«あら、忘れてるのかしら?お母さん、貴方が私を作ったのよ?»

吐き気がする。母は、何度代償を払って転移したのか。


『違う、よく見なよ。』

ピエロが、ふらつく私を支えて睨みを利かせながら花に言う。遅いなぁと思いつつ、ありがとうと感謝を述べる。

«あら、そういえばあなた若いわね。目も違う…»

✴「おい!なぁそんなコトより、フリージアはどうなったんだ!おまえ、フリージアをもどせよ!おまえがかわりにシネ!」

ミモザは、花を毟る勢いで花の服を掴む。

«無理よ。ワタシを殺せばこの子も死ぬ。この子はワタシがいる限り意思を持たず生き続け、ワタシが枯れた時この子も又生命を終える。»

✴「う、ァ ァ゛ア゛あああああっ」

ミモザは、叫びながら何処かへ行ってしまった。やるせない気持ちと現実を知って中途半端に大人になってしまった心を抱いて。

«少し、疲れてしまった。ねェ、少し一人にして頂戴。»

「あ、…はい。」


ピエロと私も又、外へ出た。外の空気がやけに冷たくて乾いている。

「ピエロ、これからどうするの?…ピエロ?」

ピエロは、気づくと隣にいなかった。





ーーーーーー

 ピエロは、ゆっくりと彼女…花の眠る棺に向かっていた。ソレを感じ取ったのか、ピエロが何もせずとも彼女はゆっくりと起き上がった。そして、偽りの口で物を言う。

«ねえ、私には分かっているわよ。»

『…ナニを?』

«あの子、ヒトでしょう?»

『…何を当然の事を。彼女もヒト!僕もヒトさ』

«…全く、イヤな事してくれるわ。始めは意味が分からなかったけど、漸く理解できた。»

『…殺すよ。ソレ以上言ったら』

«どっちみち殺すクセに。»

『…』

«アナタの罪は、ヒトの意味を偽り教えた事。»


«ヒトっていうのは、異世界人の総称じゃない。一人の、女の名前。アナタ(ソティス)が愛した只一人の、女。»


『…驚いたな。キミはまさかヒトとミュオが同一人物だと?彼女は当時19だ!今はもう、34かそこらだろ?』

«儀式で代償の対象になるのは、別に感覚や身体だけじゃない。現に、ヒトが魔法陣で呼び出された時街の人間一人が5歳まで戻った。この時出て来た魔素から寄生花は出来た。代償は40歳分の年齢。2分割して20歳ずつ若返った。

そして彼女の今を見るに、もう1回。もう1回若返ったんでしょ?»

『…』

ピエロが、花を凝視する。

«何も言わないのね。沈黙は肯定?嗚呼そうだ、私彼女の目、大好きだったから持ってるの。»

『なんだと?』

«いやぁね、そんな顔しないで。自分で作ったの。長らく開花まで期間があったから、魔素を少しずつ少しずつ変えていって。これ、あげる。ママへの恩返し。望まれてはないだろうけれどね。

あの子…ヒトにあげてよ。»

『…似てないネ。』

«其処はお世辞でも綺麗というところよ?»

『…用はソレだけか?』

«エエ。此処の寄生花全てを消すんでしょう?ヒトの為に。ソレなら、お願いがある。アタシ、どうせ死ぬなら食べられて死にたい。ねェ長年の付き合いでしょう。»

『中途半端にフリージアに化けたのはその為か。奴も自分も死ぬと分かってイルクセに…コレだから意思を持った魔素は苦手なンだ。』



 満開の花を目に宿した女は、ゆっくりとミモザの下へ向かう。相変わらず憎む様な目を花に向けている。その視線すら受け止め、愛す様に花は口を開く。

«殺して。ねェ、アナタが食べて。こんなにも綺麗に咲いたの。私はそろそろただの花になる。これはイレギュラーな状態。さぁ、終止符を打って。彼女を、私をどうか無駄にせず、食べて。»

…ミモザは何も言わず、何も言えずに彼女に、花に、手を伸ばす。まるで口付けでもするかのように近づき、ゆっくりと口を開けた。




ーーーーーー

『…せめて、幸せに殺してあげヨウカ。』

もう既に工場のシステムは破壊した。栄養のない人間は直ぐに干からびて死ぬだろう。しかし、その死に方は余りに酷い、か…。なら、工場を爆破してしまおう。ソレなら、残った魔素以外は全て無に帰せる。今ある魔素はおよそ人体一つ分。余裕だな。2人…花一つと人間一人を見届け、部屋から静かに去ろうとした。居てはいけない目撃者(大切なヒト)を見つけるまでは。

「ァ…」


見られた、見られた見られた!!よりによって一番見られたくないヒトに!


 彼女の口が、ゆっくりと開く。ソレは、記憶の中の彼女と重なって頭に響く。

ピエロ(ソティス)!!」



 

 …気付いたときには、彼女は倒れていて…手には既にドロドロになった魔素…。


僕は、彼女を、手にかけた…?

代償を捧げて5歳になった子供はフリージアだったりする。


始めて種植えられたのがフリージア。フリージアより年上の子の実が現在利用されてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ